第3回 生産性シンポジウムを開催しました
2018年12月4日
公益財団法人 日本生産性本部は2018年12月4日、サンケイプラザにて第3回生産性シンポジウムを開催し、提言「労働力喪失時代における持続可能な社会経済システム『スマートエコノミー』の実現をめざして」を発表しました。
日本は生産年齢人口(15~64歳人口)の急速な減少に直面しており、今後30年間で現在の東京、神奈川、埼玉、千葉の生産年齢人口2,300 万人に匹敵する規模の労働力を喪失することが予想されています。このような状況下、希少な人材資源を活かすための抜本的な構造改革が早急に必要であるとの危機感から、日本生産性本部・サービス産業生産性協議会(SPRING)に設置した生産性向上戦略PT(座長 村上輝康 産業戦略研究所代表)では1年間にわたって議論を重ね、日本を持続可能な国にするためには『スマートエコノミー』の構築が必要であるとの提言をとりまとめました。
『スマートエコノミー』とは、
- ①業界再編や企業統合など企業の新陳代謝を促し、イノベーションや人材への投資ができる企業を増やす「供給構造改革」
- ②特にGDPの約7割以上を占めるサービス産業において、研究開発投資の拡大などによるイノベーションを促進する「産業構造改革」
- ③その成果を労働者に適正に分配することなどによって消費を活性化させる「消費構造改革」
の3つの構造改革を実現することによって好循環がもたらされる社会経済システムを指します。提言はこの『スマートエコノミー』を実現するためには、「過度な企業保護政策の見直し」や「サービスイノベーションを促進するための政府の司令塔の設置」などの取り組みが必要だとしています。さらに、これまでの規模追求型の「成長経営」から脱却し、多様なイノベーションによって生産性を持続的に向上させる「生産性経営」に転換することを求めています。
シンポジウムで提言を発表した生産性向上戦略PT座長の村上輝康氏は「日本経済と企業は危機的状況にある。健全な危機感をきちんと共有し、マインドセットを根本的に切り替える必要がある」と述べ、この提言を踏まえて議論を進めていくことの重要性を強調しました。
PTメンバーらによるパネルディスカッション第一部では、デービッド・アトキンソン氏(株式会社小西美術工藝社代表取締役社長)が「減っていく需要を構造的にどう変えるのかが最大の課題。(それには)給料をあげるしかない」として最低賃金の継続的な引上げを求め、針谷 了氏(株式会社湯元舘代表取締役会長)が「(最低賃金の)引き上げについてこられない生産性の低い企業が退出するということになる」と述べるなど、『スマートエコノミー』実現のために必要な施策について議論が繰り広げられました。
また藤重貞慶氏(ライオン株式会社相談役)は「経営者の意志として労働者に対する分配を高めていくような、そういう経営に移っていかないと日本という国はもたなくなる」と強い危機感を表しました。
パネルディスカッション第二部では、企業による労働生産性などの生産性指標の公表について活発な意見交換が行われました。
日本生産性本部は今後、全国でSPRING主催のシンポジウムを展開し、全国の企業・団体や各地の生産性本部とも課題認識を共有し、提言の普及・浸透を図ります。また、経済産業省の主担当部局をはじめ総務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、文部科学省、内閣官房に本提言を届け、意見交換を行ってまいります。
登壇者
提言 「労働力喪失時代の『スマートエコノミー』をめざして」
- ※パネルディカッション1および2 モデレーター