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2022年度第7回生産性シンポジウムを開催しました

2023年3月23日

公益財団法人日本生産性本部は、2023年3月23日、オンラインにて、2022年度第7回生産性シンポジウム「サービスイノベーションで新しい市場と社会を創る~第4回日本サービス大賞 内閣総理大臣賞受賞サービス 『airCloset』の挑戦~」を開催しました。2015年に内閣総理大臣表彰として創設された日本サービス大賞は、革新的な優れたサービスを発掘、表彰し、日本全体に周知・展開することにより、規模や業種を問わず、サービス産業のみならず日本全体の生産性向上につなげていくことを狙いとしています。昨年公表した第4回日本サービス大賞では、コロナ禍での募集にもかかわらず、全国から749件にも及ぶ応募があり、その中から最優秀賞の内閣総理大臣賞をはじめ、経済産業、総務、農林水産、国土交通、地方創生の各大臣賞、JETRO理事長賞、優秀賞および審査員特別賞の計30件のサービスが選ばれました(受賞サービス一覧)。
本シンポジウムでは、スタートアップ企業として初めて内閣総理大臣賞を受賞した、株式会社エアークローゼットの天沼聰 代表取締役社長 兼 CEOをお招きし、「誰もがワクワクする、新しい『当たり前』をつくろう」という理念を掲げ、新しい価値とサービス創出のチャレンジを続けてきた取り組みについて紹介いただくとともに、村上輝康 日本サービス大賞委員会委員長より、同社のサービスの特徴と今回の表彰概要について解説いただきました。


1.第4回日本サービス大賞について

村上 輝康 日本サービス大賞委員会委員長

はじめに、村上輝康 日本サービス大賞委員会委員長より、今回の受賞企業30社の傾向やサービスの特性について、解説がありました。受賞企業の傾向について、第3回までは従業員数1000人以上の組織が全体の4割でしたが、第4回は3割となりました。一方、99人以下の組織は、第3回は全体の4割でしたが、第4回は5割近くに増加しました。また、創業してから9年以下の企業は、第3回は全体の2割のところ、第4回は4割まで増加しました。
また、受賞企業30社のサービスの特性について、ソーシャル(S)デジタル化(D)グローバル化志向(G)の頭文字をとって“SDGs”が挙げられると指摘。

1つ目のソーシャル(S)は、地球環境問題や医療健康問題など、新型コロナ危機の先にある、スケールの大きな社会課題解決に真正面から挑戦するサービスに取り組んでいる企業で、30社中18社が該当したと紹介しました。
2つ目のデジタル化(D)は、何らかの形でデジタル技術を活用し、サービスを提供している企業で、30社中27社が該当し、そのうちの4割は、後述のエアークローゼットにおけるパーソナルスタイリストのように、ヒトがシステムと顧客との間に入って価値共創を強化する役割を果たしており、DXだけではなく価値共創を重視する「日本型デジタルプラットフォーム」を確立していたと指摘しました。
3つ目のグローバル化志向(G)は、輸出と海外直接投資を中心としたかつてのグローバル化手法そのものを根底から革新するサービスイノベーションを行っている企業で、30社中14社が該当したとのことです。


最後に、第4回「日本サービス大賞」で内閣総理大臣賞を受賞したエアークローゼットの評価ポイントをSDGs(ソーシャル・デジタル化・グローバル化志向)の3つの観点から紹介。ソーシャル(S)については、アパレル廃棄問題の解決に取り組み、2022年3月には洋服廃棄率ゼロを実現した点を評価しました。また、デジタル化(D)については、パーソナルスタイリングシステムなどを開発し、パーソナルスタイリストがシステムと顧客の間に入ることで、価値共創を深めた点を指摘。さらに、今後の成長戦略の第3軸として「アジア展開」を挙げている点でグローバル化志向(G)も満たしており、「“SDGs”を1社で満たしている点でまさに内閣総理大臣賞にふさわしいサービスイノベーションを展開している」としました。

2.内閣総理大臣賞受賞サービス紹介
「スタイリストが提案する月額制ファッションレンタルサービス『airCloset』」

天沼聰 代表取締役社長 兼CEO

続いて、内閣総理大臣賞を受賞したエアークローゼットの天沼聰 代表取締役社長 兼CEOより、同社のサービスや取り組みなどについて紹介がありました。

エアークローゼットは、「“ワクワク”が空気のように当たり前になる世界へ」をビジョンに、「発想とITで人々の日常に新しいワクワクを創造する」をミッションに掲げて2014年7月に創業。現在、300を超えるブランドの中からパーソナルスタイリストが選んだ洋服を、月額でレンタルできるサービスを提供しています。利用者の多くは、洋服探しをする時間がないと感じる、働いているもしくは子育て中の女性です。

天沼氏は、「24時間という時間は変わらないが、モノや情報がどんどん増え続ける中で大切になってくるのが、いかに限られた時間の中で、いいモノや情報に出会うか」であり、「これまでにない、『感動するお洋服との出会い体験』を、忙しい女性向けにつくろう」とサービスを開始しました。時間の縛りをなくすため、利用者はオンラインで自分のサイズ、好みなどを登録し、パーソナルスタイリストが選んだ洋服のセットを自宅で受け取り、返却の際はクリーニングをせずに返送します。また、洋服の返却期限は設けず、返却したら、次のコーディネートが届く仕組みとなっています。さらに、パーソナルスタイリストがつくことで、着こなしのバリエーションが広がり、気に入った洋服は購入も可能です。


ファッション業界において大量生産、大量消費、大量廃棄の姿勢の見直しが求められている中で、エアークローゼットでは、自社で取り扱う全ての洋服を焼却、埋め立て処分せずに、リユース、リセール、リサイクル対応を行っています。また、同社の社員の3分の1はエンジニアであり、自社でスタイリング提供システムや物流システムを開発し、いずれも特許を取得しています。さらに、年間100万件以上の顧客からのフィードバックは、AIでデータ分析し、サービスの品質向上に繋げています。


2022年7月、エアークローゼットは、モノのサブスクリプション企業として、初めてグロース市場へ上場しました。将来的にはメンズ、キッズ、シニア、マタニティ市場などへの参入や、自社開発の循環型物流プラットフォームの外部提供、さらにはアジア市場への進出も検討しているとのことです。

登壇者

株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO 天沼聰 氏

2002年 ロンドン大学卒業

2003年より、アビームコンサルティング株式会社にて、IT・戦略コンサルタントを約9年経験

2011年より、楽天株式会社にて、UI/UXに特化したWebグローバルマネージャーを約3年経験

2014年7月 株式会社エアークローゼットを設立

日本サービス大賞委員会 委員長/産業戦略研究所 代表 村上輝康 氏