第5回:幅広く創業を支援~日本政策金融公庫(2025年12月15日号)

日本政策金融公庫(日本公庫)では、様々な創業支援の取り組みを通じて、営業実績が乏しいなどの理由によって、資金調達が困難な場合が少なくない創業前及び創業後間もない企業に対して積極的に融資を行い、企業の持続可能な事業基盤の構築を支援している。
日本公庫では、全国各地に「創業サポートデスク」「創業支援センター」「ビジネスサポートプラザ」「スタートアップサポートプラザ」を設置し、幅広い創業・スタートアップ支援を行っている。
「創業サポートデスク」は全国152支店に設置され、専任の担当者が、創業計画書の立て方や融資申し込みの流れ、融資制度等について丁寧に対応している。
「創業支援センター」は全国14カ所に設置され、各地域の創業支援機関などと連携し、創業前後の様々なステージの顧客向けに各種セミナーを開催するなど、タイムリーな支援を行っている。
「ビジネスサポートプラザ」は、東京・名古屋・大阪の3カ所に設置され、じっくりと相談を希望する人を対象に、予約制の相談を実施している。
2024年に新設された「スタートアップサポートプラザ」は、東京・名古屋・大阪・福岡の4カ所に設置され、ベンチャーキャピタルや民間金融機関などの支援機関と連携しつつ、創業準備期や事業立ち上げ期のスタートアップに対する融資相談などにきめ細かく対応している。

日本生産性本部では、加藤篤士道・同本部主席経営コンサルタントが日本公庫の「創業支援能力向上研修」の講師を務めるほか、鶴見誠勇・同本部主任経営コンサルタントなどが日本公庫の「創業アドバイザー」の試験監督として、ケース作成を支援している。
加藤コンサルは、「創業支援能力向上研修」の中で、「フレームワークを利用した創業計画策定」についての講義(オンライン、4時間)を2020年度から担当している。ビジネスモデル図(商流図)の理解と評価、外部環境変化の理解、事業構造の理解、収支構造・財務構造、売上・販売活動の強化、リーダーとして求められる経営者の役割などを講義している。同研修には、地域の金融機関の職員を招き、これまで194の金融機関から302人の職員が参加した。
鶴見コンサルは、日本公庫の社内資格「創業アドバイザー」の筆記試験の作問と添削を支援した(2022年度)。また、二次試験の「ロールプレイング試験」の題材作成とロールプレイングの採点評価を2020年度から毎年行っている。同試験の題材は、2022年度はキッチンカー(ロコモコ丼)、2023年度はリメイクしたヴィンテージ古着の製造・販売、2024年度は古民家を改装したカフェ型飲食店、季節野菜の箱売りだった。

雇用創出と地域活性化がねらい~
大東寿夫・日本政策金融公庫国民生活事業本部創業支援部長の話

大東寿夫・日本政策金融公庫
国民生活事業本部創業支援部長

日本公庫の創業支援は、雇用の創出と地域の活性化をねらいとしている。人口減少、事業所数の減少は避けて通れないが、創業によって雇用が創出され、地域が元気になってもらうことが政策金融機関の務めではないかと思っている。
創業支援で地道に日本経済の下支えをして、地域の経済が維持向上できるように努めつつ、世界で戦えるようなスタートアップを積極的に支援していくことも大事だ。
我々は年間約2万7000先超の創業企業に対して支援を行っている。日本公庫の調査によると創業企業は平均3人を雇用しているので、全国で毎年約8万人雇用の創出が見込まれる。また、2023年に上場した企業のうち日本公庫との取引を経て株式公開した先は約4割、2024年で見ると6割を占めている。
スタートアップの専門知識も習得するため、職員には「創業アドバイザー」の社内資格を取得してもらうことで、適切な支援を提供する体制を構築している。優秀な職員が果敢にスタートアップの審査にも取り組んでいく体制の構築を目指している。日本公庫の融資の強みはコンサルティング機能があることだが、そこには日本生産性本部との連携が大いに生かされている。
日本公庫では、高校生のアントレプレナーシップを養う「高校生ビジネスプラン・グランプリ」を毎年開催しており、今回で13回目になる。今年の参加生徒数は約1万5000人で、全国規模のビジネスプランコンテストになっている。昨年度のグランプリ参加者の中には、半年も経たないうちに応募したビジネスプランで起業した高校生もいる。こうした若者の創業マインドの醸成が今後も必要だと考えている。
このほか、地方公共団体や商工会議所、商工会、税理士、金融機関などを巻き込んだ、起業創出、促進のためのエコシステムの構築にも今後は取り組みたい。
協力いただいている「創業アドバイザー」の二次試験の模擬相談はかなりレベルが高く、クオリティの高い社内資格になっている。不合格になった人も、フィードバックを受けることで、多くの知見を得られる。日本生産性本部のコンサル力に改めて敬意を表したい。加藤コンサルの講義も毎年バージョンアップしていて、同じものがなく、毎回、受講生が新たな気づきを得ている。

戦略の練り上げが重要~
加藤篤士道・日本生産性本部主席経営コンサルタントの話

加藤篤士道
日本生産性本部主席経営コンサルタント

「創業支援能力向上研修」の対象者は、創業計画に対してアドバイスをする人だが、創業計画をつくったことがない人が多いので、自分たちが創業するつもりになって一度創業計画をつくり、意外と難しいことを実感してもらうねらいがある。
事業経営で安定した成果を出すためには、戦略を修正して、精度を上げる(戦略を練り上げる。戦略を育てる)ことが重要だ。計画をつくっても実際は計画通りにはいかないので、どこがうまくいかなかったかをすぐに修正して次につなげることが必要になる。
お客様は積極的な集客の仕組みづくりによって初めて集まる。自己の取り組み努力なしに自然にお客様が集まることはない。「見込み客」を集めて「顧客」になってもらい、「固定客化」する仕組みをつくることが重要だ。
日本公庫には、イノベーティブなスタートアップだけではなく、美容師や居酒屋などのスモールビジネスを始めたい人もやってくる。経営をしたこともない人も結構いるが、経営するには少なくとも3Cや4Pのフレームワークは習得しておく必要がある。

見える化や柔軟な発想で~
鶴見誠勇・日本生産性本部主任経営コンサルタントの話

鶴見誠勇
日本生産性本部主任経営コンサルタント

創業アドバイザー試験のロールプレイング試験(模擬相談)では、私は創業する相談者役で関与しており、採点の支援も行っている。試験は中堅の職員が多く受けている。
ロールプレイング試験ではコミュニケーションの取り方なども見る。創業相談では、事業ごとに聞かなければならないポイントを押さえつつ、限られた時間内で傾聴していくことが重要だ。事業を理解し、支援することが創業アドバイザーには求められている。
私は若手職員の研修も実施しているが、創業アドバイザー試験の浸透もかなり進んでいて、将来的に創業アドバイザーの資格を取りたいという若手職員は多い。
創業する人でビジネスモデルを最初から明文化できる人は少ない。創業支援では、そうしたビジネスモデルの見える化や過去の慣例にとらわれない柔軟な発想が求められる。
日本公庫では農業経営アドバイザーを民間にも展開しているが、創業アドバイザーもそういった形で幅広く民間に展開できるといい。創業支援のノウハウを積み上げていくことで創業の市場がより活性化されると思う。


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