2026年 年頭会長所感
未来から学ぶ(Learn from the future)
~企業・国家の「価値」と個人の「存在」を問い直す一年に~
内外ともに歴史的な変革期にあり、不確実性が高まるなか、2026年を迎えた。
世界では国際秩序を揺るがす事態が相次ぎ、地政学リスクや気候変動、分断・対立・格差の深化に加え、生成AIをはじめとするデジタル技術の急速な進展により、従来のルールやシステムは変革を迫られている。
新たな秩序の黎明期ともいえる混沌とした時代にあっては、起こり得ることを想像して今すべきことを思考する「未来から学ぶ」姿勢で中長期の戦略を描き、持続可能な経済社会を次世代につないでいかなければならない。
国内経済に目を転じると、円安を追い風に多くの企業が業績を伸ばし、また2年連続で5%を超える水準の賃上げを実現するなど光明は見られるものの、実質賃金が物価上昇に追い付かない状況にある。また、日本の労働生産性は、OECD加盟38か国中、時間当たり28位、一人当たり29位と低迷が続いている。
少子高齢化や人手不足が進むなか、日本経済が力強さを取り戻すためには、生産性改革の担い手である労使双方が、「生産性運動三原則」のもと知恵を出し合い、付加価値増大を軸とする生産性向上と賃上げの好循環を確実なものにしなければならない。あわせて、政府には規制改革など民間が活力を発揮できる環境整備に注力することを求めたい。
現政権は「責任ある積極財政」を掲げ、物価対策や成長投資を柱とする大規模な財政出動を表明している。経済成長の実現に向けては、17の戦略分野と6つの国家戦略技術分野が示された。AI・先端ロボット、半導体・通信など、経済成長を明確に見据えた戦略であり、優先順位を付け、官民を挙げた「稼ぐ日本」の再現を期待したい。
一方、国債金利の上昇や円安の進行といった市場リスクも顕在化している。昨年末、日銀が政策金利の0.75%への引き上げを決定し、「金利のある世界」は新たな段階に入った。市場から揺るぎない信認を得るためには、財政健全化に向けた着実な道筋を示すこともまた不可欠な責務である。
われわれ日本生産性本部は、「第3次中期運動目標」(2024年度~2026年度)のもと、全国生産性機関や全国労働組合生産性会議(全労生)とも連携し、持続可能な経済社会を次世代に引き継ぐため、生産性改革の実践に取り組む。
本年3月、労使を含む各界が共有すべき生産性改革の指針として、生産性運動65周年以来となる第2回「生産性白書」を取りまとめ、提言する。人とAIとの共生・共創を見据えた「人口減少社会の生産性改革」を提起し、経営革新やイノベーションの実践に取り組む。
「令和国民会議(令和臨調)」においては、与野党超党派の国会議員や国民各界各層とともに、日本社会と民主主義の持続可能性に向けた合意形成基盤の立て直しに取り組む。
「日本アカデメイア」においては、官民学のネットワークの再構築と長期ビジョンの構想力強化に取り組むとともに、「ジュニア・アカデメイア」を通じ、次代を担う若者の政策提言能力を育む。
昨秋発足した「未来を選択する会議」においては、人口減少時代に次世代が希望を持てる「生き方」「くらし方」「働き方」について、主役となる若い世代と対話・交流し、地域も含めた国民的な世論喚起・合意形成活動を本格化させる。
「日本サービス大賞」の取り組みを通じ、革新的かつ優れたサービスをベストプラクティスとして全国に展開し、日本経済の7割を占めるサービス産業の底上げを図る。
私たちは今、歴史に刻まれる革命ともいえるAIの急速な進化により、人間の「存在」そのものや「働くとは何か」「生産性とは何か」といった根源的な問いに直面している。
従来の指標では測ることができない「価値」を含め、企業・国家の「価値」や個人の「存在」を問い直し、ウェルビーイングと人間尊重の社会の実現へと結実させるべく、新たな時代の生産性改革を実践・展開する一年としたい。
2026年1月7日
公益財団法人日本生産性本部
会長 小林 喜光