変革課題で成果を出すリーダーのマネジメント・スキル②(2020年7月5日号)
■変革課題を「定義」する
前回は、現場の変革課題の遂行・達成を担うリーダーに必要なマネジメント・スキルとして、「マネジメント・プロセス」を活用することの重要性をお伝えしました。
今回はそのマネジメント・プロセスの第一歩である「課題の定義」について説明します。
散歩のついでに富士山に登った人はいない
ちまたで「散歩のついでに富士山に登った人はいない」という言葉を聞くことがあります。
富士山の頂上を目指すのであれば、そのことを念頭に置いて準備を進め、登り始めるでしょう。
そうしないと、途中で挫折したり、違う山に登ってしまったり、ただの散歩に終わったりするかもしれません。
変革課題も同様であり、どこに向けて進むのかを明確に示さなければなりません。
しかしながら、これまで支援してきたお客様先では、目指す最終状態をしっかりと定義しないまま作業を開始しているケースが8割~9割です。
作業そのものに満足しきっており、「どこに向かって」作業しているかがわからないという状態です。
つまり富士山を目指していることを知らずに、ただ散歩をしているのです。
変革課題を確実に進めるための必要条件の一つ目は、課題をしっかり「定義」することです。
これは、①最終ゴールを目指す成果・価値で明確にし、②必要な作業をブレイクダウンし、③完遂に必要となるワークパッケージごとの必要資源を明確にすること、の三つから構成されます。
最終ゴールを目指す成果・価値で明確にする
課題を任されたリーダーが「課題の定義」として最初にやるべきことは、最終ゴールを、生み出される成果・価値で書き出し、明確にすることです。
大事なことは、作業(何をするか)を書き出すのではなく、課題が行われたら、何が得られているのか・どのような状態になっているのかという成果・価値(何が得られるのか)を具体的に示すことです。
最終ゴールが明確にされないと、課題遂行時の焦点が合わず、必ずと言ってよいほど失敗します。
しかし、この成果・価値を曖昧にしたまま、作業だけを始めていることが多いのです。
言わなくても、それくらいわかるだろうと考えるようでは、リーダーが時代に取り残されます。
以心伝心・阿吽の呼吸などが通じる時代は既に終わり、しっかりと言語化し、メンバーに伝達しなければ最終ゴールが通じません。
「うちは言わなくても大丈夫」というリーダーのチームを精査すると、驚くほどにメンバーによってイメージしているゴールが違っています。
冒頭のたとえで言えば、リーダーは富士山頂を目指しているにもかかわらずそれをしっかりと言わないために、七合目がゴールと思っている人もいれば、隣の愛鷹山頂がゴールだと思い歩いている人もいるのです。
ひどい場合は行き先がわからないためにいつまでも地上で散歩を続けていることもあります。
よって、最終ゴールの明確化を通じて、課題が生み出す成果・価値を直接的かつ具体的に表現し、資源ならびに携わる人たちの行動を集中させることが、不可欠です。
必要な作業をブレイクダウンする
次は、最終ゴールに向けて実施すべき作業を、構造的に抜け漏れなく抽出します。
まずは大括りに、次にそれらをさらに小さな作業単位に分解します。
管理可能な単位まで分解された作業を「ワークパッケージ」(仕事のひと塊、の意)と呼び、これに人や資源を割り当てていきます。
これによって作業の分担ができます。
また、いざ課題に取り組み始めたならば、「ワークパッケージ」の実行度合いの確認が、進捗管理となるのです。
完遂に必要となるワークパッケージごとの必要資源を明確にする
次にワークパッケージごとに必要資源を明確にします。
資源は大きく、人的資源(内部人材や外注等)、施設、機材・設備・装置、資材・備品、の四つに分類できます。
各作業での必要資源が判明すれば、おのずと全体で必要なコストも算出されます。
定義の時点でオーナーと握る
「課題の定義」が明確になりました。
この時点で課題のオーナー(組織であれば成果責任を持つ上司など)と最終イメージとすり合わせをします。
これができていないがために、後から成果が否定されたり、やり直し・手戻りによるコスト・時間・労力の無駄が出たりするケースが非常に多いのです。
今回は「課題の定義」を明確にすることを見てきました。
課題のゴールが明示され、その上で作業分担が提示されていれば、メンバーは自律的に作業を進めることができ、リーダーの進捗管理も楽になります。
しかも、開始以前に、上司などのオーナーとも理解を明確にすり合わせることができるのです。
次回は「課題の計画」について解説します。
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コンサルタント紹介

筒井 健太
・総合電機メーカーにて部門横断プロジェクトのチーム・マネジメントに14年間従事、管理職まで経験。
・その後、外資系コンサルティング会社にて、パフォーマンス向上のコンサルティングと人材育成支援を行なう。
・日本生産性本部「経営コンサルタント養成講座」を修了後、本部経営コンサルタントとしてパフォーマンス・コンサルティングを中心に活動中。
・国際基督教大学教養学部卒業、ニューヨーク州立大学バッファロー校経営学修士課程修了。
(1970年生)
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