第2回 脇役だが、思いは当事者たれ

■脇役だが、思いは当事者たれ

〝十人十色〟というが、企業も業種・業態が同じであっても同様に〝各社・各様〟である。また、息子や娘を入れたい企業から、例え好業績であろうと入れたくない企業もある。

〝企業もまた生きモノ〟なのである。人は、この世に生を受けて成長し、成人してその役割を果たし、後に寿命が尽きて必ず死ぬ。しかし、企業は創業して役割を果たし続ける限り成長し、様々な変遷を辿りながらも寿命は尽きない。そのことが人とは決定的な違いである。しかし、実際には倒産や廃業もあり、〝企業の寿命は30年〟などという本も出版されたりもした。環境の変化と競争の中で現実は厳しいものである。


「経営コンサルティング」とは、経営活動全般に関する総合診断や経営戦略立案、経営計画策定と展開、事業承継の推進などから、組織・人事システムの改革、生産革新、マーケティング戦略と展開、各種社員研修の実施などの専門分野にわたってのソリューションの提供などを行う事業活動のことである。

これまで経営コンサルタントはビジネスドクターに例えられてきたが、今日ではITやAIを中核にした技術や環境の変化に伴い、企業経営のイノベーターや普遍的価値普及のミッショナリー(伝道師)、事業のインキュベーター、ビジネスプロバイダーやM&Aのエージェントなど、その形態は多岐多様にわたる。その活動を担うコンサルタントの役割は広がり進化し、そのスピードは極めて速い。

実際に経営コンサルティングの現場での一事例を紹介しよう。

グローバルビジネスの進出にめどをつけたある機械部品メーカーで、「経営戦略におけるドメインの再定義と中期経営計画の策定」のプロジェクトで〝チャットによるAIの活用〟をトライしてみた。業界動向やSWOT分析、さらに成長戦略の方向性についての質問に対して、かなりの精度で瞬時に回答が出てくる。もちろん〝?マーク〟が付く回答も中にはあるが、われわれが検討した類の回答も出てくる。

この現実からも経営コンサルティングの姿や経営コンサルタントの役割の形は大きく変わってきつつある。

経営コンサルタントは、その役割を果たすにあたり色々なサイエンスティックな手法・技法やフレームワークを駆使する。しかし、企業経営や経営コンサルティングはサイエンスではない。どんなにAIが進化しようが企業は社会のサブシステムであり、顧客をはじめ社会環境や企業を構成する人と組織も生きモノであることからすれば当然のことである。

以上のことから、私なりに経営コンサルティングのあり方について経営コンサルタントという視点から捉えるなら、次のようにまとめることができる。



①経営コンサルタントは、それぞれ〝十人十色〟である。

かつてニクソンショックやオイルショックの折に人事労務担当であった私は、リストラを担当し当時の様々な思いから企業や人のために貢献する職業としてこの道を志した。その動機は私のコンサルティング活動にとって基本中の基本である。


②経営コンサルタントは、経営の当事者ではなく脇役である。

経営の当事者は担当企業の経営者であり社員である。しかし、脇役であるからと言って当事者の思いに劣ることがあってはならない。


③役割を果たし切る。


経営コンサルタントはコメンテーターや評論家ではない。100点満点はないがテーマの完結や期待成果を出さなければならない。役割を果たし続けるためには、アンテナを張りあらゆる経験や機会から学び、ノウハウの〝引き出しづくり〟を止めてはならない。



コンサルタント紹介

代表経営コンサルタント

元井 弘

関西学院大学法学部卒業後、大手物流会社に勤務する。
1976年日本生産性本部「経営コンサルタント養成講座」を終了。
その後経営コンサルタントとして40有余年各種事業体の経営コンサルティング、人材育成に当たり、現職に至る。
(1947年生)

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