第6回 コンサル不要が理想

■コンサル不要が理想

経営コンサルタントを志す

私が経営コンサルタントを志すきっかけは、前職において「自分は本当に顧客のためになっているのか?自組織の都合を顧客に押し付けているだけではないか?」と感じたことである。今となれば組織の都合があることは分かりきったことであるが、まだ若かった当時は「もっと全面的に顧客のためになると自分で確信できる仕事をやりたい」と考えた。

経営コンサルタントという仕事にも様々な場面はあるが、基本的には「顧客=クライアントとその組織」のためになることを最優先することができていると思う。現在は製造現場の改善を基本的な専門領域にしているが、企画提案においては自分が役に立てると確信できる領域を提案しているし、クライアントのニーズが自分の専門外にあるときは最適な人材や機関を紹介するようにしている。


クライアントの自立自走を目指す

経営状態によっては緊急度を優先しなければならないことは認めるが、具体的手段まで全て経営コンサルタント主導で現場にやらせる進め方では、経営コンサルタントが抜けた後に元に戻ってしまうというケースを多く見てきた。日本生産性本部の経営コンサルティングは自立自走の支援を目指しており、私もなるべく早く経営コンサルタントが不要になる状態がクライアントにとってもあるべき状態だと考えている。そのためには時間がかかる面もあるが、課題やその対策について十分に話し合い、考え方やノウハウも伝えながら、経営者や従業員が腑に落ちるように進めることが肝要と考えている。

経営者も従業員も腑に落ちる状態とするには第三者的公正な視点と、当事者意識の両面が必要と思う。経営者の立場、従業員の立場、金融機関の立場など、それぞれに想いはあり、全て正しいのだが、これからの組織を考えた時に何から手をつけるべきか、論理の裏付けと、人間関係を含めた組織の特性を判断し、最適の策を選択・提言することが求められていると思う。経営にとって何が最適かを考えるには極めて広範囲の知見が必要であるが、自分自身は「経営品質向上プログラム」から学んでいることが多い。


具体的にということ

経営コンサルタントの価値は個別企業に対してより良い会社になるための具体的提言と実行支援を行うことだと考える。理論の裏付けが重要であることは言うまでもないが、理論についてはどちらかと言えば学者の専門領域であり、経営コンサルタントは理論を理解しながらもそれを経営実践の現場にいかに適用するかに価値がある。どんなに正しい提言でも、クライアントにとって「それはうちには難しい」とか「現実的でない」と受け止められ、最終的に提言が受け入れられなければ、それは全く価値を提供できなかったことと考えざるを得ない。


経営コンサルタントは全人格が見られている

経営コンサルタントの発言は経営の方向性を導こうとするものであり、どうしても教示的な印象になることは避け難い。いわゆる「偉そうなことを言う」状態であり、そのような発言で企業をリードしようとするからには、日常からそれなりの態度・行動が求められる。組織内の管理者でも基本的には同様であるが、より厳しい目で「背中を見られている」ことは意識する必要がある。

私は製造現場の改善支援を専門領域としているが、例えば5Sを指導しているにも関わらず、経営コンサルタントが決められたルールを守っていないというようなことが見られたら、従業員の方はまずまともに話は聞いてくれないと覚悟すべきである。

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

矢島 浩明

上智大学経済学部経営学科卒業後、パイオニア株式会社にて勤務
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。
(1961年生)

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