第8回 「志」が経営の原点である

■絶対的な正解なし

私は30歳の時に日本生産性本部の門をくぐった。「日本の社会や経済の発展に貢献したい」「豊かな世の中を創るには素晴らしい企業社会を生み出すことが重要なのではないか」「本当に良い会社とはどのような会社なのだろうか。公益を大切にする財団法人だからこそ本物を追究し、未来志向で質の高い企業支援ができるのではないか」、そのような考えに期待を膨らませ第二の仕事人生のスタートを切った。

戦略やオペレーションへの意識が強かった私が、当財団で最初に教わったことは「経営とは志である」という言葉である。約半世紀のキャリアを持つベテラン経営コンサルタントからの言葉に強い衝撃を受けた。

人生と同じように絶対的な正解はないのが経営である。だからこそ、「無」から「有」あるいは目指すゴールとそこへ向けた推進力を生み出す「志」が起点になるのである。

「志」について私なりに説明を加えると、「社会や明るい未来を想い、時としてわくわくするような、本当に目指したいもの(パーパス)は何なのか?」「自分(達)の内にある利他の心や貢献欲求が力強さを与えてくれる、成し遂げなければならない大切な使命(ミッション)とは何なのか?」そして、「それらを完遂させる気持ちの強さや実行力(コミットメント)はいかほどか?」ということである。

■経営コンサルタントの役割

企業は環境変化に適応しながら進化していかなければならない。そこには「生き残る」という生物的な生存欲求と「夢」や「目的・目標」の実現という人間ならではのポジティブな欲求が混在する。そして、企業は的確な事実認識・未来予測の下、各ステークホルダーの顕在・潜在ニーズを汲み取り、事業化と実践を行う。

経営コンサルタントはこのような機能が促進されるように多くの場合、コーチングやファシリテーションスキルを用いながら伴走型の企業支援を行う。もちろん、専門家の立場から提案やアドバイスも行うし、図表「セブンブリッジフレームワーク」のような総合的視点から「目指すものは何なのか」「ゴールに辿り着くための戦略やマイルストーンはどうするか」「会社発展に向けたツボを押さえられているか」「ボトルネックになっていることはないか」「重要要素間の相乗効果を生み出せているか」などを熟考し、経営改革・経営改善策を経営者と共に掘り下げながら検討・実行し、成果へ結び付けていく。purpose.png

■今後へ向けて

AI技術の進歩など、次々に生じる環境変化により、多くの企業や人々は自分達のあり方自体を問われていくことになるであろう。そのような中、「志」は今後、素晴らしい企業創造や自己実現を図る上でのキーポイントになる。

私自身も成長意欲を持ちながら、自己研鑽に励みつつ、「志」を大切にする企業や人々をしっかりと支援していきたい。

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

加瀬 元日

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。
株式会社ナイキジャパンにて、新規事業創出(直営店ビジネス)及び全国チェーン展開体制の構築業務を担当。
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、企業の診断指導、人材育成の任にあたる。
(1972年生)

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