第9回 理想の姿を思い描く

■未来設計図と環境適応

大学卒業後、銀行、テレ局に勤務後、日本生産性本部の経営コンサルタントとして約20年間経営コンサルティング業務に従事してきた。銀行とテレビ局、そして経営コンサルタントと一貫性のない職務経験のようだが、自分なりの思いを大切にして、その時々の環境に適応してきた結果でもある。20代に受講した研修が大きな転機となった。その研修の中で講師が参加者に次のような質問をした。「皆さんが今の会社にいる理由はなんですか」。

この問いに対して私は、「これまでの生い立ち・経験、現在の興味の観点から今の会社にいます」という趣旨の説明をした。

各参加者の発表の後、講師から次のようなフィードバックがあった。「世の中には二つのタイプがいる。8割の人間は過去から現在の流れの中で今を説明するタイプであり、もう一方の2割の人間は将来のありたい姿から今を説明するタイプである。そして世の中で成功する可能性が高いのは後者である」。私は前者になるわけで、かなりのショックを受けた。また当時、勤めていた銀行が破綻したこともあり、将来のありたい姿=未来設計図を描かなければならないと強く思うに至った。そして死ぬ間際の私、35歳時点の私、50歳時点の私がどうありたいかを具体的に言語化していった。すると驚くことにそれを描く過程で、知らず知らずのうちに自分の意識・行動が変わっていったのである。

「このままではいけない!」という思いから、キャリアをリセットし、仕事も組織風土も全く異なるテレビ局へ転身し、そこでも未来設計図を自分の意思決定と行動の旗印として経験を積み重ねた。その時々の状況によって未来設計図を書き換えることはあるが、今現在、自分が思い描いた理想の姿に近づいており幸せであると自信をもって言える。これまでの経験から、個人でも組織でも「未来設計図を具体的に描き、その時々の環境変化に適応していくことが極めて大切である」というメッセージを説き続けている。

■情報の外側にある言語化されていないものを見極める

頭が痛い時は薬局に行って相談すれば頭痛薬を出してくれる。それで治ることもあるが、痛みが治まらないとか、どうも調子が悪いという場合には病院へ行って医者に診てもらうだろう。そこで医者は患者の日頃の生活習慣などをヒアリングし、必要な検査を行い、病気の本当の原因を特定して治療してくれる。私も医者のように、クライアントが言語化できない、あるいは気づいていない隠れたニーズや課題を探り出し、最適なソリューションを提供したい。そして、単にノウハウを伝えるだけでなく、クライアントが自力で進められるように、一緒に実行していく経営コンサルタントでありたい。

生成型AIの進化には驚かされるばかりだが、現時点では適切なプロンプトを入力しなければ、本質的な解答を導き出すことはできない。聴き手が本当の課題に気づいていなければ、聴き手の意識の範囲内にある解しか導きだせないだろう。加えて手取り足取りの実行支援も、〝人〟である私がAIよりも貢献できる部分ではないだろうか。

■シン化と貢献

私は、心理学・脳科学の理論を踏まえた経営コンサルティングと教育を心がけている。このアプローチは今後も変わらずにシン化(進化・深化・新化)させていきたい。時代の急激な変化や社会的ニーズの高度化への対応は大変キツイものがあるが、気力が続く限りは自身のスキルとマインドをアップデートし、自らの成長を通じて、顧客の成長に貢献できたら幸せである。

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

大場 正彦

慶応義塾大学経済学部卒業後、株式会社北海道拓殖銀行本店営業部にて中堅・中小企業の融資業務に従事
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、北海道テレビ放送株式会社にて中期経営計画策定、人事制度改革などのプロジェクトに従事
本部経営コンサルタントとして、企業の診断指導、人材育成の任にあたる
(1969年生)

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