第19回 答えを自ら出せる組織に
■答えを教えない経営コンサルタント
「とにかく労働生産性を高める」と「労働生産性を上げ続ける組織に変容する」、どちらの経営コンサルティングスタイルがあなたの組織にフィットするだろうか。
前者は具体的な手法という答えを示し、結果を目指す流れだ。後者は自組織で答えを考え導き出せるよう一緒に変えていく流れである。私の経営コンサルティングの成果は「答えを自ら考え導き出し続ける組織に変える」ことである。
私の経営コンサルティングの現場では、戦略や組織の方法論等の答えをすぐに伝えるのではなく、経営者や経営幹部に長い時間を掛けて考えてもらう。時には答えを導き出す方法も自ら悩んでもらうこともある。答えは経営者や経営幹部が持っていると私は信じている。ただしその答えを認知し言語化するには一人あるいは自社だけでは難しい場合も少なくない。またこれまでと同じ経営幹部の顔ぶれのなかではより最適な答えを言語化することは難しい場合もある。答えを導き出せる組織に近づけていく現場には、良い伴走者が必要であり、そこに私はいたい。
■何をしてくれるかではなく、自組織がどのようにありたいか
医者には「何をしてくれるのか」ではなく「健康になるにはどうしたらよいか」と聞くだろう。
もっとも重要なことは経営者や経営幹部がどうなりたいか、何をしたいかではないだろうか。「目的により手段は定義される」という言い方が正しければ、ステークホルダーが自組織の存在目的や今後の取り組みの目的をどのように捉えているかが重要である。伴走者である私は「答えを自ら考え導き出し続ける組織に変える」ため、組織の存在目的をあぶり出すだけではなく、その存在目的に向かうマーケティングを行う。ここでのマーケティングとは「人々を何かの思惑の方向へ自ら向かわせる」であり、それを支援することが私の経営コンサルティングである。
市場の人々を自社の思惑の方向へ向かわせ自社製品を買ってもらう。そのために経営戦略の文脈に向かって社員に活躍してもらう。「買ってもらう」と「活躍してもらう」はどちらも何らかの思惑や文脈へ向かわせるマーケティングだ。マーケティングという名の市場に向けた事業マネジメントと社内に向けたマーケティングという名の組織マネジメントである。代表的な伴走テーマを挙げる。①労働生産性を高め更に安定的な組織とするための中期経営計画策定の伴走。私が策定し実行してもらうのではなく、存在目的や考え方を共有し自社で策定してもらった。②業績堅調だが更に主体的な組織にするため、単位当たり利益額や一人当たり生産性などの収益構造を共に明らかにし、社員自らがより深く考え、課題を見つけられるようにした。③評価制度が形骸化しエンゲージメントに課題がある。社員自らが事業マネジメントを深く考え、それを支える組織マネジメントにするために現業も参画するプロジェクトチームと一緒に評価制度を策定した。
いずれも前述の二つのマーケティングであり、経営幹部や現場と一緒に考え、自らが答えを導き出している点が特徴だ。
■ 教えない外部専門家の存在価値は何か
私のクライアントの多くが次の50年の景色を目指す成長組織であるが、なかにはかつての危機から脱却し今は次の50年を描いている組織もある。その場合でも「答えを教えない伴走」と言い切りたいところだが、その組織の業歴や成熟状態によっては答えを伝え、私が策定せざるを得ない場面もある。ただし「答えを教えない伴走」場面が少しでも増えるようにしている。いつも教えられていては「答えを自ら考え導き出し続ける組織」とは言えない。
一方で「社内に優秀な伴走役がいる」と聞こえてくることもある。それは「よそ者の視座」ではなく「気心の知れた者たちの内部の視座」である。多くの組織がイノベーションを選ぶとすれば、伴走者が「気心の知れたいつもの人」では硬直化とも言われかねない。だから私たちのような「よそ者」が求められると考えている。
「この伴走は自分達にも考えさせてくれる余裕がある」とクライアントから評価を受ける。経営課題は変遷しているが、「答えを自ら考え導き出し続ける組織に変える」ことは普遍的と感じる。そのように感じさせてくれるクライアントの方々に感謝している。
コンサルタント紹介

小林 誠
早稲田大学商学部卒業後、住友スリーエム株式会社産業財営業、プロダクト・マーケティングに従事。
その後、中小企業の取締役に就任し、同社事業規模拡大に貢献。1年で黒字化、5年で事業規模を2倍にする。
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、各種事業体の経営指導、人材育成の任にあたる。
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