第20回 結論 = 理由+具体例で念押し
■旬の情報を提供しつつ、顧客企業とのコミュニケーションを図る
私の経営コンサルティングは、旬の情報を提供しつつ、顧客企業とのコミュニケーションを図ることを大切にしている。情報の収集・整理のため、「情報アンテナ」を日々、数時間活用し、多種多様な情報ソースをチェックしている。提供情報は大きく二つで、顧客企業や競合・取引先に関連する統計的データと、時事的ニュースである。定量的なデータで外部から入手するものは加工された2次情報ではなく、出典もとの1次情報までたどる習慣を自分に課している
■情報の提供・活用が重要
時事的ニュースは同業他社の取り組み事例や、学ぶべき異業種の動向など多岐にわたる。顧客企業への訪問は、月次等、定期的に訪問する場合もあるが、企業内研修の場合、数カ月後や年に1度の訪問という場合もあるため、対面でコミュニケーションをとれない期間の関係性を保つためにも情報提供はとても有効である。
情報の提供・活用が重要だと考えるようになったのは、私の前職時代の怠惰な業務姿勢による。前職では、小売・サービス業で宅配・店舗の現場や、本部スタッフを経験してきたが、自業界のできごとに日々、接しているがゆえに、わかっているつもりになっており、情報感度が劣化。自業界はもちろん、異業種の動向に疎くなっているのに気づいていなかった。
社内の処理業務に追われ、勉強不足でも、日々の仕事はなんとかなっていた。これは組織内でうまく立ち回って仕事をこなすことができる「社会人あるある」ではないだろうか。自社の業績が順調で、将来の予測が確かなときは、これまでの延長線上の仕事の仕方で問題がないかもしれない。しかし、現在のようなVUCA(ブーカ:Volatility・変動性、Uncertainty・不確実性、Complexity・複雑性、Ambiguity・曖昧性)といわれる時代に、情報感度が低いまま、意思決定や業務遂行をすることは、天気予報を見ずに荒波の航海に出るのに近い。
■一石を投じる効果が大きいのは異業種の取り組み事例
顧客企業内のミーティングや従業員研修等のディスカッションにおいて、一石を投じる効果が大きいのは同業他社の情報ではなく、異業種の取り組み事例である。スポーツでいえば同一リーグのライバルチームの話題ではなく、異なる競技種目の成功事例や失敗事例を共有することで、新たな気づきを与え、発想の転換を後押しする効果が大きい。各社の課題は業種を超えても大同小異であり、外部専門家人材としての「情報ソムリエ」の価値提供は有効である。
こちらから提供する資料・情報を、顧客企業内でのミーティングで活用することも推奨している。社内の会議やルーチンな連絡事項が多くなりがちだが、担当コンサルタントが作成した自社や業界に関する課題を見える化した資料をもとに次の一手をディスカッションしてもらうべく、資料化の段階で見やすさ、理解しやすさに注力している。
コミュニケーション技法として「PREP」と呼ばれるものがある。結論(Point)↓理由(Reason)↓具体例(Example)↓結論(Point)の念押しという流れで伝える技法である。結論(Point)だけでは説明不足なので、理由(Reason)を伝えるが、この段階では詳細なイメージをつかめていない場合が多い。そこで、具体例(Example)を伝えると、伝えたい情報の解像度が大きく改善する。
職歴の長さは、同一業種に精通する一方、確証バイアス(自分が既に持っている先入観や仮説を肯定するために、都合の良い情報ばかりを集める傾向性のこと)や認知バイアス(過去の経験・先入観・固定観念・思い込みにより合理的な思考ができない現象)の補正・矯正が必要になる場合も多い。客観的な外部専門家人材として、「情報ソムリエ」的な重要情報を提供し、顧客企業の業績・顧客満足の向上の援護射撃に資する、作戦参謀役として貢献を続けていきたい。
コンサルタント紹介

小倉 高宏
関西大学社会学部卒業後、関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科修了
コープこうべにて勤務
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、サービス産業生産性協議会のリソースも活用し、小売・サービス業の現場力向上の任にあたる。
講演や執筆など多数の実績があり。
これまでの受講者は2万人に及ぶ。
(1968年生)
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