「デザイン思考でUX向上を図る」(生産性新聞 2020年12月5日号)

日本生産性本部は2020年11月10日、ソシオメディアデザインコンサルタントの田附克巳氏を講師に招き、デザインシンキング研修を都内で開催した。

冒頭、田附氏は「デザインシンキングとは、デザイナーが過去から用いてきた、問題解決のアプローチ、手法、ツールを指す。簡単に言えば、デザイナーが普段行っている仕事のやり方を学ぶことだ」と述べた。

それは、①顧客の様子をよく観察し、②アイデアを絞り切れていない段階で製品やサービスのプロトタイプをたくさん作り、③出来上がったものを検討して修正を繰り返すという特徴を持つという。相手があって初めて成り立つという点で、自身の表現に最も重きを置くアーティストとも、頭の中にある仮説を十分深化させてから実装を始めるエンジニアとも異なる。デザイン思考とは、キャッチ&トライ(ユーザーの行動観察による課題発見と、トライアルとしての解決策の提示)の反復だ。

デザイン思考に注目が集まっている背景には、問題解決に直行する単線型の思考、分析的・論理的な思考では、イノベーティブなアイデアや商品開発は難しいとの問題意識があるとされる。いまや顧客は機能や価格ではなく、体験(=UX、ユーザーエクスペリエンス)の質に最も関心を持って、商品を選んでいるとも言われる。研修ではミニワークショップも開かれ、自身の思考を外に開き、枠外の視点を探索し構造化して課題抽出に結びつける思考訓練が重ねられた。

田附氏は「お客様には提供者が考える決まったセオリーもカテゴリーもない。商品に対するご自身の思いはある。それをうまく汲み取ることが大事だ」と強調した。全ての情報を一つずつ厳密に処理しようとしないこと、曖昧なままにしておくことがコツだとも付け加えた。

加えて、顧客自身も言語化できていない本音を引き出すための方法論を解説。ワークショップで実践したほか、デザイン思考の成功事例も紹介し、ポイントを分析した。さらに、「ターゲットユーザーを明確化するペルソナ手法」、「ユーザージャーニーマップ」など、現場ですぐに使える効果的なフレームワークを解説した。

同本部では、組織がデザインを通じてその戦略的目標およびミッションを達成し、効率的なビジネス環境の開発・維持を実現するための支援「UXマネジメントソリューション」を提供している。

■顧客視点忘れないために(研修講師を務めたソシオメディア・デザインコンサルタント田附克巳氏)


社会システムそのものの変革を余儀なくされている昨今、問題解決に向けたデザインの必要性が求められています。モノやサービスは過剰に溢れるにもかかわらず、お客様ご自身も明確な課題やニーズがわからない時代です。また、従来型の価値観や方法論では新しい解決策が構築できないことが増えてきました。

そこで、デザイナーが無意識に行っている曖昧なものを可視化しブラッシュアップを繰り返す仕事のやり方に学ぶ、デザインシンキングの活用に注目が集まっています。

今回の研修では、デザインシンキングの切り口から、問題解決のアプローチや方法論を学んでいただきました。座学だけでなく手を動かしていただくワークショップを実施しましたが、受講者の皆様がいきいきと楽しみながらワークショップ課題に取り組んでおられたのが印象的でした。顧客視点とは昔から言われていることですが、忘れがちになり、いつの間にか提供者視点に戻ってしまいます。顧客に共感し、お客様を主語にすることで、強制的に思考の枠を変えるのもデザインシンキングの考え方です。

今回はデザインシンキングを通じて、担当者個人の諸課題にとどまらず、結果として組織全体の問題解決に取り組んでもらうことで、本研修自体が、日本生産性本部と共に提供している「UXマネジメント」の取り組みのひとつにもなりました。

研修で学び経験したことを周りの皆様にも共有することで、ぜひデザインシンキングを全社的な課題解決のツールとしてご活用いただきたいと考えます。

■受講者の声:今後も試行錯誤(高橋桂子・大樹生命保険お客さまサービス統括部副部長)


弊社では「ひとつひとつの、夢によりそう。」をメッセージに、2018年度から3カ年の中期経営計画を策定しており、お客さま本位の業務運営に取り組んでいます。

その観点において、課題解決のアプローチ手法であるデザインシンキングは以前から着目しており、今回テーマ別人材育成研修の一つに採用しました。デザインシンキングは、いざ実践することの難しさがある一方で、徹底的な顧客視点を得るために必要な考え方です。受講者からは、「お客さまの真のニーズを見極める重要性を再認識した」との感想も寄せられており、今後も、試行錯誤を繰り返しながら「デザインシンキング」を定着させていきます。

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