第14回 「ななつ星in九州」に新たな物語 JR九州
連載「ミライを変える革新力」⑭ 「ななつ星in九州」に新たな物語 JR九州
この夏、乗らず楽しむ「ななつ星」
九州を巡るクルーズトレイン「ななつ星in九州」の新たな取り組みが注目を集めた。「ななつ星」は、6月21日から9月12日まで4年に1度の車両点検、整備のため運休に入った。この期間を活用し、「日本の最高技術と美意識」を体験する旅が企画された。JR九州は、2022年よりレクサス「TOUCH JAPAN JOURNEY by LEXUS」と共にななつ星の旅を毎年行ってきた。今年の夏旅は、走っていないからこそ、普段立ち入ることができない「JR九州小倉総合車両センター」で「ななつ星」の車両検査や整備の様子、外観などを間近で見学。さらに、LEXUSの車を世界へ送り出す「トヨタ自動車九州宮田工場」を巡った。
「LEXUS様との企画だからこそ、モノづくりや、地域の様々な人、物語を大事にするお互いに共通する想いにより、列車の旅では実現できない企画となりました」(JR九州)。
国内外から高い人気が続く
「九州を世界に発信する」。2013年10月、日本初のクルーズトレインとして誕生した「ななつ星in九州」。「ななつ星」は、九州7つの県、九州の主な7つの観光素材である「自然」、「食」、「温泉」、「歴史文化」、「パワースポット」、「人情」、「列車」、そして、7両編成の客車を表現した。
国内外の観光客から、高い人気が続く。その理由について、JR九州は「移動手段としての列車ではなく、旅そのものを楽しむ舞台として位置づけられている点にあると考えています」。
それだけではない。例えば、乗客の声を反映させていく現行コースのブラッシュアップはもちろん、数年に一度のタイミングで「コース変更」を実施。そして年に数回実施している「プレミアムツアー」を、地域との連携を図りながら企画、実施している。


クルー、地域の人たちの温かいもてなし
ロイヤルワインレッドの車両、ゴールドの「ななつ星」のエンブレム。クラシカルで豪華な「ななつ星」は、工業デザイナーの水戸岡鋭治氏によるデザインだ。壁や照明には、福岡の伝統工芸「大川組子」が使われている。釘を一切使わず、小さくて薄い木片のパーツを一つずつ手作業で組み合わせて織りなし、繊細で美しい。洗面鉢は有田の名窯「十四代柿右衛門窯」。茶室もあり、クルーが点てたお茶を楽しむことができる。有名料理人が乗車して、九州ならではの旬の食材を活かした料理を提供する。
さらに大きな魅力は、列車内でのクルーや地域の人たちによるおもてなしだ。地域の人たちのおもてなしは、「ななつ星」の旅をより忘れがたいものにしてくれる。
多様な体験プログラム
この秋に催行予定の「唐津での観光と前夜祭付きプラン」、「奄美大島と列車の旅」といった「プレミアムツアー」では、列車に加え、現地で文化や伝統芸能に触れる機会を提供する。唐津では、唐津焼窯元を訪ね、歴史文化にも触れる。奄美大島で自然観察や泥染め体験などの後、霧島での滞在、そして博多に移動し、そこから「ななつ星」に乗車し、九州を回る。
「伝統文化に直接触れていただき、より奥深い九州の魅力をご参加の皆様に感じていただくことができる機会と考えています」(JR九州)。乗る前や降りた後の体験も含めて「ななつ星」の旅となり、乗客の記憶に深く残る。「雲仙コース(3泊4日)」、「九州周遊コース(1泊2日)」も高い人気で、来年3月までの受付は既に終了した。
地域と乗客をつなぐ架け橋
「ななつ星in九州」の旅は、九州各地の地元の人たちの協力に支えられて成り立っている。クルーやスタッフが沿線に出向き、日頃の感謝の気持ちを伝える「サンタプロジェクト」(毎年12月実施)などのイベントも実施している。体験、自然、文化、工芸、そして沿線で出会う人々の笑顔。それらが重なり合い、乗客の心にかけがえのない物語を紡ぎ出す。「ななつ星in九州」は、地域と乗客をつなぐ架け橋となり、九州全体の魅力をさらに広げていく。
- ※日本企業は世界を変えるイノベーションの数々を生み出してきた。企業の革新力の源泉に触れつつ、新たなビジネス展開の動きを探っていく。
お問い合わせ先
公益財団法人日本生産性本部 広報戦略室(新聞グループ)
WEBからのお問い合わせ