第2回:職場改善のための実践型研修~BBSジャパン~(2017年8月25日号)

■職場改善のための実践型研修を実施

車輌用軽合金ホイールの国内製造販売及び輸出入を行う自動車部品メーカーのBBSジャパン(高岡本社=富山県高岡市)は昨年度、課長から主任層を対象としたマネジメント研修を実施した。BBSブランドのホイールは様々なモータースポーツに供給されている。 

同研修は、昨年8月から今年2月まで、毎月1日、計7日間、高岡工場内の食堂で開催され、高岡本社、高岡工場、小矢部工場(富山県小矢部市)に勤務する総務、業務、製品検査、品質保証、技術開発、製造、金型の各部署に所属する課長、担当課長、係長、主任の一部の計37人が参加した。 

「最初はもっと対象をしぼって次世代のリーダーを育成しようと考えていたが、こうした研修の受講経験がない人も多かったので、もう少し下の層まで受講の対象を広げ、幅広くマネジメントや改善の基本を身に付ける研修を行うことにした。現場で改善を行う際に、課長一人が研修を受けただけでは、なかなか現場にはその考え方が浸透しない。改善などの共通の考え方を浸透させるために対象の人数を増やした結果、参加者は当初予定の2倍程度に増えた」(田中康博・BBSジャパン経営戦略本部長)という。 

8月の第1回研修では、リーダーの能力開発、戦略的思考、チームワーク力などを学んだ。その際に、「職場改善課題テーマ」の選定と計画策定についての宿題(自職場の確認)も出された。自社製品を友人に勧めることを想定してA4に説明を手書きで書いてもらい、1分間で相手に伝える演習である「1分間プレゼンテーション」も行われた。 

9月の第2回では、PDCAの重要性、部下に対する動機付け、簡易巻紙分析を用いた技能伝承を学習。「職場改善課題テーマ」の演習(自職場のありたい姿と現状のギャップから課題を整理する)も行われた。1回目に続き、「1分間プレゼンテーション」も実施された。 

10月の第3回では、論理的思考の講義と演習(連関図による原因分析、系統図による対策検討)を学んだ。これまで学んだ戦略的思考や論理的思考などを用いた「職場改善課題テーマ」の検討も行われた。 

11月の第4回には、「職場改善課題テーマ」の中間発表会があり、1人あたり2分のプレゼンテーションが行われた。論理的思考もさらに学んだ。 

12月の第5回では、巻紙分析を用いた改善手法、設備稼働率向上のための段取り改善の着眼点、観察型問題解決法、ヒューマンエラー対策などを習得した。 

1月の第6回では、2回に分けて、最終報告会の発表資料作成の時間が設けられ、個別相談会も開催された。 2月の第7回では、2回に分けて、1人あたり15分の改善課題テーマの最終報告会が行われた。最終報告会に同席した経営トップからは、改善活動を自分のミッションとして継続して実施してほしい、これで終わりではなく、学んだことを実務に生かしてほしいとのコメントがあった。

■論理的な考え方が身に付いた

(田中康博・BBSジャパン経営戦略本部長の話)

BBSジャパンは、2013年から前田工繊グループの一員だが、前の親会社が会長のワンマン経営だったこともあり、言われたことだけをやるという受身の体質が蔓延していた。 

管理職も言われたことはきちんとやるが、意見や提案がほとんどなかった。会議で発表する機会もあまりなかったので、会議で論理的に考え、話す経験がなかった。 

今の経営者層は、数年たてば一斉に会社からいなくなる可能性が高い。その下の40歳代後半から50歳代前半の年齢層が薄く、もっと下の層である40歳代前半層から、次世代の経営幹部を育てていく必要があった。 

研修では、三枝先生に論理的思考の講座を特に充実してもらった。当社には、論理的に考えたり、論理的に話すことが非常に苦手な社員が多い。3回目、4回目、7回目の個人発表など、論理的思考を重視したカリキュラムにした。その甲斐があって、経営陣からも、個人発表はとてもわかりやすかったという評価を得た。発表テーマは、各工程における改善や効率化をどのように実施していくかについて、問題を原因分析して解決案を提示するテーマが多かった。 

研修後の会議ではしっかり現状を分析し、数字を使うようになった。従来は「だいたい」とか「よくなってきています」といったあいまいな表現が多かったし、数字が出てきてもそれが改善とつながっていないことが多かった。今は、具体的な改善の金額まで提示するような発言が増えてきた。 

研修を通じて、問題解決の考え方や論理的な考え方が身に付いた。目標を設定し、目標に到達するためにはどういうステップを踏んで問題解決を図ればよいかということが研修を通じてよく理解できたのではないかと思っている。

■『エデュ・コン』をベースとしたマネジメント研修

(研修を指導した三枝久芳・日本生産性本部主任経営コンサルタントの話)

『エデュ・コン』とは、エデュケーショナル・コンサルティングの略称であり、研修と経営コンサルティング手法の組み合わせにより、実践的なマネジメント知識・スキルを高めていくための課題解決型実践研修のことである。今回は、『エデュ・コン』をベースにしたマネジメント研修を実施した。 

具体的には、管理職がマネジメントを行う際に、上位の目標を理解したうえで、自分たちは何をしなければならないのかについて、実際に参加者一人一人が改善テーマを考え、自分でメンバーを決め、スケジュールを決め、改善の成果を報告してもらった。もちろん、座学によって様々な知識の習得も図ったが、全体としては、研修を通じてマネジメントを実体験してもらった。 

集合研修で一方的に講師が講義を行う形では、講義を聞いているときは参加者はわかったつもりになるが、その効果は長続きしない。実際に手を動かし、考えてもらい、悩んでもらう場を数多く設けたことが今回の特徴だ。 

研修では、自分が取り組むべき職場の課題について、上位目標や職場の状況を理解したうえで、きちんと理屈立てて、思いつきではなく、根拠を持って決めることの重要性を強調した。人材育成の要素も重視した。本人に事前に自己評価をしてもらい、研修終了後に自分がどう変わったかを認識してもらった。上司からの評価も伝えながら、自分がどう成長したかを認識してもらい、将来のためのフィードバックを行った。 

また、職場でのありたい姿とともに、個人におけるありたい姿も設定してもらった。個人のありたい姿は趣味のことでもいい。目先のことに追われるなかで、本人にとっても職場にとっても、もっと先を見ながら考えてほしいというねらいで設定した。 

職場において実際に改善の成果が出てくるのはこれからだろう。研修で設定した改善テーマは、研修期間中の3カ月で終わるようなテーマを選んだ。もっと重要なテーマや難しいテーマに取り組めば、さらに大きな成果が出るだろう。 

働き方改革が問われているが、製造部門の働き方改革は、すでに標準作業や標準時間が設定されており、ある程度できている。問題は、製造部門を取り巻く設計開発部門や営業部門、事務スタッフ部門などだ。そこにはまだまだ多くのムダがある。業務の「見える化」を行い、仕組みをつくっていくことが重要だ。また、能力開発を進めるためには、実際に考え、悩む場面を作り出すことが大切である。

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