ニューノーマル時代の上司と部下の関わり方①(2020年7月15日号)

■ちょいコミュづくりのすすめ

全国の緊急事態宣言が解除され、経済活動は徐々に元に戻りつつある。その一方で私たちの生活は、いたるところでニューノーマルといわれる新しい様態へと変わっていった。働き方はまさにその代表格であろう。これまでじわりじわりと広がりつつあったテレワーク、すなわちIoTを活用して時間と場所を柔軟に選択できる働き方が、コロナ禍をきっかけにオフィスワークを中心に急速に広がりつつある。

テレワークが今後さらに浸透するかどうかは、ひとえに従来の働き方と比して生産性が向上するかどうかにかかっている。

これから多くの組織で様々な方策が模索され、試行錯誤が繰り返されるであろう。そして、その巧拙が組織力の差としてはっきりと出てくる時代になる。本連載では、その一助になればと上司と部下の関わり方に焦点を当てて対応を考えたい。

さて、テレワークの導入当初、上司の立場からすると部下と直接、顔を合わせて仕事をできなくなることでマネジメントが難しくなるという見方が多かった。それに対し、日立製作所、資生堂のようにジョブ型雇用を導入・拡大することでプロセスよりも成果で評価するよう、人事制度を変えて抜本的に対応しようという組織がフロントランナーとして出てきている。

テレワークをニューノーマルとして組織内に展開するのであれば、対象層は各社各様になるものの、中長期的には多くの組織でジョブ型に移行していくというのが筆者の見方である。ジョブ型雇用では、一般的にメンバーシップ型雇用よりも部下に裁量を与えることになる。するとマネジメントのあり方は必然的にマイクロマネジメント型ではなく、部下の主体的な挑戦を支援するフォロー型がこれまで以上に期待されるようになる。では、フォロー型のマネジメントにおいて、それも直接に顔を合わせずに上司は部下とどのように関わっていけばよいのだろうか。

筆者はその一つの解が「ちょっとしたコミュニケーション(以下、ちょいコミュ)づくり」にあると考えている。オンラインを通じてやり取りをするなかで一番、抜けがちになるのがこのちょいコミュである。オンラインでは特定の目的を果たすためのコミュニケーションの機会と捉えがちとなる。すると職場で顔をあわせたときの雑談程度のちょいコミュが不足してくる。このちょいコミュは、マネジメントがうまい上司ほど上手に活用している。例えば、部下の表情や言葉から不安や不満を感じ取り早いうちに対応したり、仕事の成果につながる気づきをそれとなく提供したりしている。

もう少し厳密にみると、ちょいコミュには、ソーシャルサポートといわれる四つの要素が含まれている。

情報的支援=必要な情報や専門知識を共有する支援

道具的支援=業務がオーバーフローしていれば他のメンバーに割り振ったり、手助けをするなどの支援

評価的支援=部下の仕事のどこが良くてどこが十分でないのかを客観的に伝える支援

情緒的支援=安心して前向きな気持ちで仕事ができるようになる心理的支援

これらの支援をちょいコミュとして実践するのにうってつけの方法が「1on1」である。コロナ禍の前から一部の企業で導入が進んでいたが、今後、フォロー型マネジメントの具体策として多くの組織で取り入れられるだろう。

1on1とは、上司と部下が「短時間で・定期的に・頻繁に」対話の機会をもつ仕組みで、部下のためにつかう時間という点に特徴がある。つまり、何を話題にしたいか、その主導権は部下に与えられる。しかしながらこの1on1、なかなかうまくいかないという声も多い。次回は、その原因を明らかにして質の高いちょいコミュを実現するにはどうしたらよいか考えていきたい。
(3回連載)


筆者

栗林 裕也
日本生産性本部 人材開発コンサルタント
鉄道会社を経て現職。「人は組織内でどのように成長するのか」「どうすればより成果のあげやすい組織になるのか」をテーマに調査、コンサルティング、研修に従事。論文に「組織における管理職を起点とした人材の活性化戦略とは」(生産性労働情報センター)など。白百合女子大学非常勤講師。

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