第1回:対話の質を向上させよう

■背中を押された1年

この1年、否応なしにリモートでの仕事が増え、オンライン会議も一般的になった。1年前、在宅の通信環境がそろわず、操作について「基本のキ」から学んでいったのが懐かしく思えるくらいだ。
オンラインにはたくさんのメリットがある。例えば、働く場所から解放される。
在宅勤務は、育児や介護などを抱えている社員にとってメリットが大きいし、働き方の自由度をひろげるものだ。
企業にとっては、オフィスコストの削減を行いながら、多様な人材を活用することができる。
通勤地獄から解放された社員は、1日を有効に過ごすことができるようになった。
一方、面と向かう時間が少ないと、ちょっと質問がしにくいといった、デメリットも予想された。
そう、これらは、新型コロナが流行る前から予想されていたことだ。
いかがだろうか。実際、こうしたメリット、デメリットを実感した1年だったのではないだろうか。
たしかに、急スピードでの変化だった。
コロナに背中を押されて右往左往もした。しかし、その経験を通じて、私たちは、また進化した。


■体験から学び続ける

実際、体験して気づいた事もたくさんあった。知事が「不要不急の外出をやめるよう」とメッセージを発信した。
「この仕事は、本当に重要で緊急なものなのか」しっかり考え直す機会を得た。よくよく考えてみると、「なくても問題ない仕事がたくさんあった」。
表現的に問題があるかもしれないが、コロナは、厳しく敏腕な鬼コンサルタントのような役割を果たしたと思う。
判を押すためだけに出社すると言った、だれが考えても明らかに生産性が低い業務も、やっと廃止の方向にむかった。
オンラインになって、「自分は何の仕事をしていたんだろう」と考え直す管理職もいた。「自分がいなくても、仕事はまわるのではないかと」
そう、玉石混合だった仕事が、一気に整理されたのだ。
しかし、あいまいだけれど、実は重要な仕事もその中に含まれていた。
わざわざ正式に会議を開催するほどではないけれど、ちょっと数名に相談したいから開くミーティング。机が隣り合わせのときは、声をかけて昼休みに気軽に相談することができた。オンラインは、このあたりが苦手だ。
こうした問題は依然として残っている 。


■会社間や個人間で格差がついた

もともと素晴らしいマネジャーは、概ね、オンラインになっても部下と良質な対話をしていて、エンゲージメント(お互いの関係性)も良好だ。
しかし、一方的に部下を呼び出すようなマネジャーは、在宅で部下が働いているのか心配になり、1日に何回もメールを送ったという実例さえある。笑えない話だ。
マイクロマネジメントはよくないと、頭ではわかっている。でも心配なのだ。そして当然、それは逆効果になった。
会議についても同様だ。もともと、会議の仕組みがしっかり整っている会社は、オンラインになっても大きな問題は生じなかった。
会議のゴールを決めてアジェンダを事前に共有する。会議のオーナーは、もちこむ課題を明確に提示し、参加者から衆知を集めて解決していく。会議を課題達成の仕組みとして十分に活かしていれば、オンラインになっても問題がない。
一方、ただ集まることを会議といっていた会社、読めばわかる業績報告の羅列だったり、トップの独演会ばかりだった会社は、オンラインになって、何をしていいのかわからなくなった。そんな会社の社員は言う。「オンライン会議はいいですね。仕事をしながら参加できますから」
彼にとっては、まさに、BGM(バックグラウンド・ミーティング」なのだ。
こうした違いはどこから来るのだろうか。
それは「エンゲージメント」の違いである。
「エンゲージメント」とは、一言で言うと「会社と個人のつながり」のこと。
社員が、自発的な貢献意欲をもって、仕事に取り組んでいる」とき、「エンゲージメントが高い」という。
こうした時代だからこそ、エンゲージメントを向上させたい。
そして、その第一歩は「対話の質」の向上だ。


■対話の質を向上させよう

社内で、対話の質の向上をはかるべきシーンはたくさんある。
日常の簡単な相談だったり、1対1の話し合い(1オン1)だったり、チャットの使い方だったり、会議の仕方だったりする。
そんな中で、どのチームにも効果がある方法をおすすめしたい。
それが「エンゲージメント調査」を活用した対話の場づくりである。
具体的には、
①「見える化」エンゲージメント調査(社員の声を聞く調査)によって、メンバー一人ひとりの声を聞く
②「ガチ対話」それを、メンバー間で共有して、よりよい職場にするために、リーダーが司会者となって会議(ワークショップ)を企画運営する
③「未来づくりと実践」これからのことを決めて、実践する
という流れを、四半期サイクルでまわすとよい。
こうしたサイクルを繰り返すことで、お互いの対話の質が向上し、結果として、エンゲージメントが向上するからだ。
次号では、エンゲージメント解析ツールを提供するアトラエ社より、①「見える化」の具体的方法をご紹介する。

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

寺沢 俊哉

慶応義塾大学理工学部管理工学科卒業後、株式会社パルコにて、新規事業開発・マーケティング等に従事
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、リーダーシップ、エグゼクティブコーチング、モチベーションアップなどのテーマで人材育成の任にあたる。
(1961年生)

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