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第5回生産性シンポジウムを開催しました

2022年3月3日

公益財団法人 日本生産性本部は、2022年2月16日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて第5回生産性シンポジウム「企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する人材戦略とは~経営を変革するDX人材の確保・育成策を考える~」を開催しました。50人にご来場いただき、オンラインで400人にご参加いただきました。
シンポジウムでは、日本生産性本部に設置された有識者会議、イノベーション会議(座長:大田弘子 副会長/政策研究大学院大学特別教授)が取りまとめた提言「企業のDXを進めるための人材戦略~DXと人材戦略に関する企業アンケート調査からの知見~」をもとに、企業のDXを実現する人材戦略のあり方、課題、方策などについて、企業・労組の幹部、学識者が討論しました。

提言「企業のDXを進めるための人材戦略~DXと人材戦略に関する企業アンケート調査結果からの知見~」


イノベーション会議では2021年秋、上場企業の役員を対象に、DXへの取組状況やDXを進めるための人材戦略についてのアンケートを実施し、143社から回答を得ました。積極的にDXに取り組んでいる企業の人材戦略を明らかにすることにより、これからDXに取り組む企業に知見を提供することが主な目的です。

シンポジウムの概要

大田弘子 日本生産性本部副会長/
イノベーション会議座長/政策研究大学院大学特別教授

シンポジウムではまず大田弘子座長が、このアンケートから次の4点が導き出せると説明しました。

  1. 1.日本企業のDXは道半ばである
  2. 2.DXのための組織改革や人事制度改革に踏み込んでいない企業が多い
  3. 3.DX人材育成のための社員研修を実施していない企業が4割を占める
  4. 4.DXへの取り組みは企業規模間格差が大きい
金丸恭文
フューチャー 代表取締役会長兼社長 グループCEO

次に、フューチャー 代表取締役会長兼社長 グループCEOの金丸恭文氏が、「企業のDXを実現する人材戦略はどうあるべきか」をテーマに基調講演を行いました。
金丸氏はDX人材の採用について、外部からの採用にこだわらず、特にDX推進のリーダーは社内実績のある、信頼できる人物にすべきだと述べました。

今井達也
ダイキン工業 役員待遇 人事本部 人事・労政・労務グループ長

続いて「企業のDXを実現する人材戦略のあり方」をテーマにパネル討論が行われました。まず、今井達也氏(ダイキン工業 役員待遇 人事本部 人事・労政・労務グループ長)が、先進的なデータサイエンティスト育成の場として知られる「ダイキン情報技術大学」の取り組みを紹介しました。同大学の講座は「新入社員向け」から「役員向け」まで部門横断的に階層別に設けられており、特に新入社員については教育に2年間をかけていることを説明しました。金丸氏は、「自社でも一人前のDX人材を育てるのにだいたい2年はかかる」と、2年間のカリキュラムは妥当であるとの見方を示しました。

神保政史 電機連合 中央執行委員長

神保政史氏(電機連合 中央執行委員長)は、デジタル社会の実現により、経済発展と社会的課題の解決を両立させることが可能になるとしたうえで、社会全体でデジタル化への理解を深め、IT人材が持てる能力を発揮できる環境整備が重要だと述べました。

森川正之 イノベーション会議コアメンバー/
一橋大学教授/経済産業研究所所長

イノベーション会議コアメンバーの森川正之氏(一橋大学教授/経済産業研究所所長)は、DX人材は大学院卒や理系人材など基礎的な知識を持っている人が望ましいとしました。また、森川氏の試算では教育訓練投資の収益率は30~40%であり、投資をした社員がある程度社外に流出しても、全体としての収益率はプラスを維持することが期待できるとして、社内でのDX研修の重要性を強調しました。

柳川範之 イノベーション会議コアメンバー/
東京大学大学院経済学研究科教授

同じくイノベーション会議コアメンバーの柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科教授)は、DX人材戦略のポイントとして①安易に外部に頼らず時間をかけてじっくりと人材を育成すること、②会社としてDXは何のために行うのかしっかり定めること、③社員のスキルの管理や棚卸をした上でリカレント教育を行うことなどを挙げました。
最後に、コーディネーターを務めた大田氏が、「DX人材戦略では、人材一人ひとりを、会社の方針に強く共感するように、経営に巻き込んでいくことが大事なことではないか」と述べ、DX人材戦略と経営戦略の結びつきを強めることの必要性を強調してシンポジウムを締めくくりました。