イノベーション会議 提言「企業のDXを進めるための人材戦略」

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進のための組織・人事制度改革は道半ば

2022年2月16日
公益財団法人 日本生産性本部

調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人 日本生産性本部(東京都千代田区、会長:茂木友三郎)のイノベーション会議(座長:大田弘子 副会長/政策研究大学院大学特別教授)は、2月16日、提言「企業のDXを進めるための人材戦略~DXと人材戦略に関するアンケート調査からの知見」を公表しました。

本提言は、2021年12月9日に速報版として発表した「新政権への期待とDXに関する緊急アンケート調査」から、主に「DX人材戦略」に関する結果をもとに、DXに取り組む企業の現状と課題について取りまとめました。本調査は、2021年10月18日~11月8日、上場企業の経営者(社長、会長)、もしくはデジタル戦略専門役員を対象に、郵送およびインターネットを通じて実施し、143社から有効回答を得たものです。

本提言は、DXに積極的に取り組む企業の目的や進捗状況を明らかにすることで、これから取り組む企業への知見の提供を目的としています。特に、DXに全社を挙げて取り組んでいる「DX推進企業」では、トップ自らDXを推進し、「新規事業の創出」や「ビジネスモデルの変革」などに成果を上げている姿が浮き彫りになりました。

  1. 【DXと人材戦略に関する企業アンケート調査の主な結果と示唆】
    • DXに「全社を挙げて取り組んでいる企業」(以下、「DX推進企業」)は、全体の63.6%(図3-1)。従業員規模別にみると、従業員5,000人以上の大企業では86.2%、従業員1,000人未満の中堅企業では44.4%が「全社を挙げて取り組んでいる」と回答(図3-2)。
    • DXの目的が達成された項目について、「業務効率化・コスト削減」が7割。一方、「新規事業の創出」「ビジネスモデルの変革」など本来DXに期待される事業革新を達成した企業は、3割前後にとどまる。DX推進企業でも同様に低調で、日本のDXは道半ばである(図6-1)。
    • DXのための組織改革について、「特に取り組んでいない」企業が4割と最多。「出島などイノベーションのための組織の創設」や「企業理念や存在意義(パーパスなど)の明確化」を行った企業はいずれも25.2%にとどまり(図11-1)、DX推進企業においても、「特に取り組んでいない」企業は26.4%で、DXが組織を変えるところまでは進んでいない(図11-2)。
    • DX人材の課題について、「DX人材が不足している」が91.4%と圧倒的に多く、次いで「DX人材の適切な育成方法が分からない」(42.4%)、「労働市場でDX人材不足のため採用が進まない」(24.5%)、「人事制度が全体的に硬直的で、優れたDX人材を採用できない」(24.5%)と採用・育成の両面に課題を抱えている(図12)。
    • デジタル化時代に対応するための人事制度見直しについて、「テレワークなど多様な働き方の導入」(61.5%)が最多。「成果主義の本格化」「デジタル人材向けの処遇制度等の導入」「年功的賃金の廃止・縮小」など本格的な人事制度改革はいずれも約1割(図14-1)。DX推進のための組織改革や人事制度改革など、重要な方針転換が進んでいないことは、大きな課題。
    • DX人材育成のための社員研修を「実施していない」が約4割(図15-1)。特に、従業員規模1,000人未満の中堅企業では66.7%が「実施していない」と回答(図15-2)。DX人材不足の中でも、DX人材育成のための社員研修は多くの企業で行われておらず、大きな課題。
  • 本アンケートでは、「DX」をデジタル技術やデータを活用して顧客ニーズに応えるため、製品やサービスの変革、ビジネスモデルの変革、業務・組織などの社内体制の変革を行うこと、と定義している。
  • 本アンケートにおける「DX人材」とは、DXを実現するための人材を広く対象とする。
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