「 中小企業における人的資本経営の取り組み 」ダイヤ精機株式会社 代表取締役 諏訪 貴子 氏

従業員34人「町工場の娘」社長が講演
~『限られた人、もの、金だから知恵を出す』~

ダイヤ精機代表取締役の諏訪貴子氏

日本生産性本部は2023年12月22日、第96期「人事部長クラブ」の12月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は、ダイヤ精機代表取締役の諏訪貴子氏が同社における社内改革や人材育成について講演した。


ダイヤ精機は東京・大田区に本社がある従業員34人の中小企業で、自動車関連の精密金属加工(ゲージ製作、治具・治工具、型部品)を得意としている。


諏訪氏は、創業者である父の依頼で同社に2度入社するが、経営方針の違いから2度とも辞めさせられた。2004年に父の急逝に伴い、専業主婦から2代目社長に就任し、様々な改革を行った。その模様は書籍『町工場の娘』などにまとめられ、テレビドラマ化もされた。


社長就任後は、3年間の改革に着手した。メーカー勤務時に培った「5ゲン主義」(現、現物、現実、原理、原則)の考え方に基づき、あいさつの励行や2S(整理・整頓)の徹底などを通じて、社員の意識改革を図った。組織も、トップダウンの組織から、従業員の意見を集める「意見集約型」のボトムアップの組織に変えた。老朽化した設備を更新し、新しい生産管理システムも導入した。若手社員への技能継承の仕組みも作った。


諏訪氏は、「多品種少量生産の小さな町工場では、限られた人、もの、金で色々なものを作り出さないといけない。そのためには人間の知恵が重要だ。問題が起こったらとにかく集まって知恵を出し合って問題を解決している。ある程度の問題はコミュニケーションで解決できる。若手にも『2人以上で話していたらその輪の中に入りなさい。そこに解決のための知識や情報があるはずだ』と言っている」と述べ、知恵を出し合うことの重要性を強調した。

入社後の人材育成については、「若手生活相談係」を決め、1週間の机上教育や、社長との1カ月間の交換日記で、入社した社員の不安の解消に努めている。その後、様々な機械を操作させ、様々な部署を経験させる。成功体験によって自信をつけさせた後は、その人にしかできない技術を担当させ、本人の自立や責任感の醸成を促している。

人材の確保では、「経験者のみ」に限定していた求人を「未経験者可」とした。入社後に円滑なコミュニケーションを図れるように、幅広い年齢層との接客経験のあるサービス業出身の未経験者を多く採用している。定期的に採用を行ってきた結果、社内には入社2年目から15年目までの社員がいて、定着率は非常に高いという。

中小企業の経営者の役割については、「目的を示すこと」「方向性を示すこと」「モチベーションを上げる仕組みをつくること」の三つにこの20年間、取り組んできたと述べた。


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