「組合のリブランディング事例」 三井物産労働組合 中央執行委員長 井上潤也氏

中央執行委員長 井上潤也氏
日本生産性本部は2024年12月18日、第98期「人事部長クラブ」の12月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は、「変わる組合 変える組合~MPUが取り組む共に創る労使共創の在り方」をテーマに、三井物産労働組合(MitsuiPeopleUnion)の井上潤也中央執行委員長が講演した。
「リブランディングプロジェクト」をスタート
井上氏は冒頭、同組合は、2012年には組合加入率の低下や執行部の担い手不足などを背景に組合機能を停止し、解散も視野に入れるような状況だったことに触れ、その原因として、組合員ニーズの多様化をとらえたサービス提供ができていなかったことや、過去に「対立・闘争」を前面に出していた労働組合の組織イメージが蔓延していたことなどを挙げた。
そこで、組合では、2015年に会社側とユニオンショップ協定を締結したことを機に、組合の在り方を見直し、「リブランディングプロジェクト」をスタートさせ、「顧客=組合員」ととらえたマーケティングの発想で、現状分析(顧客ニーズの把握)やブランドの再構築(サービスの変革)を実施していった。
組合員を対象にアンケートを実施したところ、従来組合が取り扱ってきた「評価」や「報酬」といったテーマに加え、「キャリア」に関して潜在的なニーズがあることを確認した。
「データドリブン提案型」に活動ドメインを再定義
また、会社と組合員が抱えている課題として、「経営や人事、直属の上司と組合員の間に距離が生まれていること」や「成長を実感できる機会が少ないこと」などを把握した。次世代の執行部の担い手にも魅力と存在意義を感じてもらえるよう、「データドリブン提案型」に組合活動の活動ドメインを再定義した。組合で取り組むテーマ・施策については「変革エージェント」「戦略パートナー」の方向へとシフトした。
執行部の組織改革では、活動コンセプトなどを再定義するとともに、エンゲージメント、自律的キャリア支援、タレントマネジメント等へと活動範囲が広がっている現状に合わせ、組合の通称を「MitsuiPeopleUnion」に変更した。また、多様化する組合員ニーズをタイムリーに把握し、サービス提供や会社への提案につなげるためのデータドリブン組織(外部コンサルタントや専門家も起用)を組合内につくった。
組合の「戦略パートナー」としての取り組みでは、外部のデータアナリストと連携し、各組織のエンゲージメントスコアや各組織リーダーのマネジメント能力を見える化し、全社に配信することで現場の組織改善を促進していることや、アンケート調査に基づき、キャリア研修等の実施を会社に提案する。独自のキャリアコンサルティングサービスを提供していること、本部ごとの個別事業戦略や人事戦略について本部長対談を実施し、対談結果を踏まえ、全社経営方針について社長対談を実施していることなどを説明した。
労働組合は会社の中長期的発展に必要なもの
井上氏は最後に、「時代によって労働組合の在り方というものは変わる。意見集約だけでなく、その時々の組合員及び会社のニーズを数字で把握し、提言とつなげることが肝要だ。労働組合は会社の中長期的発展に必要なものだと信じて取り組んでいる」と述べた。
第98期「人事部長クラブ」は、「人を惹きつける会社とは」を統一テーマに来年2月まで開催。
対象は、人事・労務、総務、人材、経営企画等のエグゼクティブ。
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