「 人的資本開示の方向性 」 事業創造大学院大学教授 一守 靖氏

「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、
中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」

事業創造大学院大学教授 一守靖氏

日本生産性本部は2月20日、第97期「人事部長クラブ」の2月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「人的資本開示の方向性」をテーマに、事業創造大学院大学教授の一守靖氏が講演した。一守氏は、同本部の「人的資本経営の測定・開示ワーキンググループ」の座長を務めている。


一守氏は、人的資本経営とは「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」とする経済産業省の定義を紹介し、投資家が人的資本の情報に注目し始めたことや、ESG投資やSDGsの動きなどを背景に、人的資本経営が注目されていると説明したうえで、企業が人的資本経営に関して取り組むべきことは、「政府が要求する人的資本指標の測定・開示への対応」と「自社の持続的成長につながる人的資本経営の導入」の二つだと述べた。


前者の「政府が要求する人的資本指標の測定・開示への対応」については、上場企業等に、2023年3月末以後の事業年度における有価証券報告書から、サステナビリティ関連項目として人的資本(「人材育成方針」「社内環境整備方針」)および多様性(「男女間賃金格差」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」)の情報開示が義務付けられたが、一守氏は、同本部が昨年公表した、23年3月末決算企業の「有価証券報告書における人的資本開示状況」(速報版)の内容を紹介しながら、女性管理職比率は「5%未満」と「5~10%未満」の企業が多いことや、男女間の賃金格差は男性100に対して女性70が平均であることなどを説明した。


後者の「自社の持続的成長につながる人的資本経営の導入」については、「人的資本可視化指針」に沿って、有価証券報告書に自社の人的資本の情報を開示することが求められているが、その開示状況をみると、有価証券報告書における人的資本に関する記述の文字数は、2000字未満が約6割で、1000~1499字が19・9%で最多であることなどを指摘した。


また、同ワーキンググループが実施している、企業の人的資本経営の取り組み状況のヒアリング結果の一部を紹介し、人的資本経営を導入したことで、自律的社員の育成や企業ミッションへの共感度向上、離職率の削減などの効果があったことなどにも触れた。



97期の「人事部長クラブ」は「人材こそ価値創造の源泉 人的資本経営の未来展望」を統一テーマに開催している。


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