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生産性運動65周年記念式典を開催しました

2020年9月18日

2020年3月に創立65周年を迎えた日本生産性本部は、9月18日、ホテルオークラにて「生産性運動65周年記念式典」を開催し、「生産性白書」を発表しました。

式典の冒頭、挨拶した日本生産性本部の茂木友三郎会長は、人口減少やグローバル化、デジタル技術の発展により日本が直面している課題や、コロナ禍による影響を挙げたうえで、「わが国が今後も成長を続けていくためには、国民一人ひとりが持てる潜在力を発揮し、付加価値を生み出し、生産性を向上させていく以外、他に道はない。今こそ戦後復興に続く第二の生産性運動の推進が求められている」と述べました。


式典の冒頭、挨拶した茂木友三郎 日本生産性本部会長/キッコーマン 取締役名誉会長 取締役会議長

続いて「生産性白書」の編纂に携わった生産性常任委員会のメンバーが報告を行いました。

生産性白書」は、経済界・労働界・学識者11名で構成した生産性常任委員会と学識者8名からなる生産性白書小委員会で、2018年9月から約2年にわたり議論を重ね、とりまとめたもので、日本の生産性の現状と課題を提起する第1部と、生産性向上のカギとなる6つの論点を専門家が分析した第2部から構成されています。


福川 伸次 生産性常任委員会委員長/
地球産業文化研究所顧問・東洋大学総長

白書の概要について報告した生産性常任委員会委員長の福川伸次氏(地球産業文化研究所顧問・東洋大学総長)は、日本の労働生産性が主要先進7カ国で最下位であることに改めて触れたうえで、生産性向上のためには、企業による需要創造や品質競争の重視、攻めのICT投資、リスクを取る企業風土への転換、そして民間のイノベーションの取り組みへの政府による支援が必要だと指摘しました。そして以下の8つの提言を発表しました。


        • 生産性改革を推進する新たなプラットフォームづくり
        • 先端的なイノベーション促進への挑戦
        • 企業経営の革新
        • 働き方の改革と人間力の充実
        • 個人の生きがいの追求
        • 生産性運動三原則の今日的意義
        • 生産性改革の担い手の新たな役割
        • 生産性向上の効果を測定する新たな指標の開発


そのうえで、これらの提言の実現への協力を呼びかけました。


宮川 努 生産性白書小委員会委員長/
学習院大学教授

次に生産性白書小委員会の委員長を務めた宮川努氏(学習院大学教授)が第2部で分析している以下の6つの論点についてそれぞれ説明しました。


            • ICT化(デジタル経済化)への適応
            • 人材の育成
            • 価格戦略の見直し
            • サービス化への対応
            • 物流ネットワークの効率化と再構築(国内及び海外)
            • 新たな付加価値概念


このなかで宮川氏は、デジタル化で生産性を上げるためにはハードやソフトだけではなく補完的な取り組みが必要であり、なかでも人材育成が最も重要であるにもかかわらず、日本の人的投資のGDP比率は非常に低いと指摘しました。

また、生産性の測定について、シェアリングエコノミーなど新たなビジネスが出現したことやコロナ禍により「健康」の価値が再認識されたことなどから、付加価値の概念を変えていく必要があるのではないかと問いかけました。


経済界メンバーとして登壇した大八木成男氏(帝人相談役)は、コロナ禍で在宅勤務体制が定着するなどデジタル技術による変革が急速に起きていることを念頭に、「現下の困難な状況を元に戻すという発想ではなく、5Gの時代の新しいデジタル社会、ニューノーマル体制を作っていきたい」と強調しました。またこの苦境を、ESGやSDGsを経営の中心に据えて事業を発展させるチャンスと捉え、環境経営を進めていくべきだとしました。

労働界メンバーの松浦昭彦氏(UAゼンセン会長)は、流通サービス業が諸外国と比較して生産性が低いとされているとしたうえで「多くの人が働いているサービス業が技術革新を取り入れて生産性を向上していくことによって、人口減少社会の持続可能性が生まれていくのではないか」と述べました。

また学識者メンバーの清家篤氏(日本私立学校振興・共済事業団理事長)は「生産性向上の主役は人的資源」と題したメッセージを寄せました。「生産性向上のために個人の能力への投資拡大は必須の条件」と指摘したうえで、今回とりまとめられた白書について「人間本位の生産性ということの原点に立ち戻ったもの。尊厳ある仕事を通じて成長することによって、個人の幸福を高めるための道標となるはずだ」としました。


生産性常任委員会委員の大八木成男 帝人相談役(左)と松浦 昭彦 UAゼンセン会長(右)

日本生産性本部は今後この白書を軸として、課題の共有とその解決にむけた議論を行う基盤づくりに取り組み、「生産性運動65周年記念大会」(10月26~27日)の開催をはじめとした、合意形成活動を推進してまいります。