2024年度第2回生産性シンポジウムを開催しました
2024年8月26日
8月26日、「人的資本の測定と開示が企業経営に与える影響~『人的資本経営の測定・開示ワーキンググループ』報告」をテーマに、2024年度第2回生産性シンポジウムをオンラインで開催しました。
人的資本経営の重要性を指摘
同シンポジウムでは、まず、同本部の「人的資本経営の測定・開示ワーキンググループ(WG)」の座長を務める一守靖 事業創造大学院大学事業創造研究科教授が「人的資本の測定と開示が企業経営に与える影響~人的資本経営の測定・開示WG報告」をテーマに基調報告を行いました。
一守氏は、今年7月に公表したWGの報告書に盛り込んだ「人的資本経営を効果的に進めるための10のポイント」の各項目について、ヒアリング調査において得られたコメントを引用しながら、解説しました。
パネルディスカッション
次いでパネルディスカッション「開示義務化2年目を迎えた企業の取り組み」が行われ、浅野浩美 事業創造大学院大学事業創造研究科教授、九鬼至留 りそなホールディングス人材サービス部長(りそな銀行人材サービス部長)、木村香代子 構造計画研究所ホールディングス取締役執行担当が登壇しました。(コーディネーターは一守氏)
浅野氏は、人的資本経営の先進企業の社員にたいする社員に対するアンケート調査の結果を踏まえ、「先進企業においても、さらに、社員に人材戦略を理解してもらい、『わが社らしい』ところを生かし、人材戦略と経営戦略のつながりをより良いものとする余地がある」と指摘しました。
また、同本部が8月に公表した、2024年3月末決算の東証プライム上場企業の「有価証券報告書における人的資本開示状況」(速報版)の結果からは、「取り組みの熱心さにはかなりの差がある。男性の育児休業取得率など成果が見えやすいものをうまく使い、先進企業の取り組みを参考に、自社に合ったやり方で社員を見つつ、取り組みを進めていくことが重要だ」と述べました。
九鬼氏は、りそなグループの人材戦略は、会社と従業員が対等な関係に立ち、顧客や地域社会の「価値創造」と従業員の「ウェルビーイング」双方を実現することを重要視していることや、人材戦略をアンカー(碇)として、効果的な人材投資を行うことにより、従業員の行動変容を促していくことなどを説明しました。
木村氏は、構造計画研究所では、「総付加価値の成長と適正な労働分配率によって企業として持続的な成長を続ける」ことを経済指標に掲げていることや、経営の最優先事項は従業員の成長の「場」を設定することとしていること、組織の目標を所員全員で共有する「レビュー会議」や年1回の異動希望調査、社内公募制などを導入していることなどを紹介しました。
関連リンク
登壇者
事業創造大学院大学 事業創造研究科教授 一守 靖 氏
慶應義塾大学経営学修士(MBA)、同博士(商学)。長年にわたりヒューレット・パッカード、NCR等の主に外資系企業における人事部門の責任者としてグローバル人事制度の導入、次世代リーダーの育成、企業変革等を推進すると同時に、複数の大学院における教育活動に従事。アカデミックの知見をビジネスの実践に活かす取り組みを行っている。著書に『日本的雇用慣行は変化しているのか-本社人事部の役割』(慶應義塾大学出版会)、『人的資本経営のマネジメント:人と組織の見える化とその開示』(中央経済社)などがある。
事業創造大学院大学 事業創造研究科教授 浅野 浩美 氏
筑波大学大学院ビジネス科学研究科修了。修士(経営学)、博士(システムズ・マネジメント)。厚生労働省で、人材育成、就職支援、女性活躍支援等の政策の企画立案に従事したほか、労働局長として働き方改革を推進。高齢者雇用推進のための人事制度見直しマニュアルを執筆。著書に『キャリアコンサルタント・人事パーソンのための キャリアコンサルティング』(労務行政)など。社会保険労務士。ライト工業株式会社社外取締役、日本キャリアデザイン学会専務理事、NPO法人日本人材マネジメント協会執行役員等。
構造計画研究所ホールディングス取締役 執行役 グループ業務執行担当 木村 香代子 氏
構造計画研究所にて、マーケティングや社会シミュレーションを専門分野として、企業や官公庁に対するマーケティング戦略立案支援や事業評価、制度設計などのコンサルティングに従事。2016年取締役就任後、経営企画および人事企画を担当し、社内の制度設計に従事、特に個人および組織にとって納得性に高い評価制度の構築に取り組んできた。
りそなホールディングス人財サービス部長/りそな銀行人財サービス部長 九鬼 至留 氏
1995年4月に大和銀行(現そな銀行)入社。世田谷支店・新大阪駅前支店・堂島支店と営業店での勤務を経て、2002年7月に人事部(現人財サービス部)へ異動し、和銀行とあさひ銀行の人事制度統合や人事給与システムの開発、個別人事、人事制度企画等の業務を担う(この期間にりそなショックも経験)。2017年10月に人事部門から一旦異動し、新川崎支店長等を経て、2021年4月に人財育成室長、2022年4月より現職。