2024年3月末決算企業の有価証券報告書「人的資本開示」状況(速報版)
~男性の育休取得率が急伸、女性管理職比率・男女間賃金格差は長期的取組が必要~
2024年8月1日
公益財団法人 日本生産性本部
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(公財)日本生産性本部(東京都千代田区、理事長:前田和敬)は、8月1日、人的資本経営の測定・開示ワーキンググループ(WG)(座長:一守靖 事業創造大学院大学教授)にて取りまとめた2024年3月末決算の東証プライム上場企業の「有価証券報告書における人的資本開示状況」(速報版)を公表しました。本調査は昨年に続き2回目となります。
人材を「資本」と捉え、その価値を最大限に引き出す経営(人的資本経営)が注目されるなか、内閣府令により、2023年3月末以後の事業年度にかかる有価証券報告書から、サステナビリティ関連項目として人的資本(「人材育成方針」「社内環境整備方針」)および多様性(「男女間賃金格差」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」)の情報開示が義務付けられました。
本WGではこれを受けて、昨年より有価証券報告書への記載状況を独自に調査・集計しています。今回は、2024年3月末決算の東証プライム企業(集計社数1,130社:6月30日時点で開示があった企業)について、提出された有価証券報告書から人的資本・多様性に関する記載内容を集計し、速報版として公表しました。
主な特徴は以下の通りです。
1.男性育休取得率:50%以上が6割を超え、取り組みの成果が表れる
- 男性育休取得率は、50%以上が64.8%となり、昨年の44.9%から大きく伸びた。
- 業種別に見ても全業種で伸びており、女性管理職比率や男女間賃金格差と比べて成果が表れやすい取り組みと見られる。
2.女性管理職比率、男女間賃金格差:昨年から大きな変化はなく、長期的取り組みが必要
- 女性管理職比率が5%未満の企業は46.0%(昨年は48.2%)、15%未満が83.2%(昨年は84.1%)を占め、いずれも昨年より微減した。
- 業種別の女性管理職比率は、サービス業、金融・保険・不動産業、情報通信業の順で高く、鉱業・建設業、電気・ガス業が低い。
- 男女間賃金格差は、男性を100とすると女性は全体平均で71.4と昨年の70.8より縮小。70~75未満の企業が232社(24.0%)、75~80未満が224社(23.2%)と、70~80未満が47.2%を占める。
- 業種別の賃金格差は、情報通信業が76.4でもっとも小さく、製造業、サービス業と続く。一方、金融・保険・不動産業が64.0ともっとも大きい。
3.人的資本・多様性に関する記載の傾向:人材・多様性を「経営」とつなげる意識の高まりが見られる
- 有価証券報告書における人的資本に関する記述の文字数は、昨年同様1,000~1,499字が最多で20.9%、次いで1,500~1,999字が15.8%、500~999字が14.1%と2,000字未満が全体の57.3%を占める。
- 記述における頻出語(出現回数)を見ると、「人材」が9,458回と最多で、「育成」(6,952回)、「経営」(6,301回)、「環境」(6,292回)と続く。「経営」が昨年と比べ1,000回近く増え、全体の傾向は変わらないものの人材や多様性を「経営」とつなげる意識の高まりが見られた。
- 人的資本に関する記述の文字数を「多い群(4,500字以上)」「中程度の群(1,500字以上4,500字未満)」「少ない群(1,500字未満)」に分類し各開示指標の平均値を算出すると、文字数の多い方が従業員規模(連結含む)は大きく、男性育児休業取得率が高い。
- 記載文字数の「多群」「中群」「少群」で頻出語の特徴を分析したところ、「少群」では人材「確保」や「管理職」、「多様性」など開示が求められている内容に関連する語の記載が多い。「中群」では「人的資本」が他群と比べて多く、「多群」では「キャリア」や「人事」「評価」など従業員のキャリアや人事部門、評価と連携する意識がうかがえる。また、「経営」「戦略」など人事施策を経営戦略と併せて考えている様子も見て取れた。
【日本生産性本部「人的資本経営の測定・開示ワーキンググループ」について】
人的資本経営の測定・開示のあるべき姿と人的資本指標の具体的な活用を討究・発信することを目的に、2023年4月に設置。学識者と企業実務家(東証上場企業の人事部門)で構成し、一守靖 事業創造大学院大学教授が座長を務める。本WGでは、2024年7月23日、企業の取り組み状況のヒアリングやアンケート調査などを取りまとめた報告書「人的資本の測定と開示が企業経営に与える影響」を公表している。
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雇用システム研究センター(担当:前田、大西)
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