コロナ危機に克つ:統合1年のロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ

DX等の経営改革に取り組む


三菱地所グループのロイヤルパークホテルズアンドリゾーツが、100%子会社の横浜ロイヤルパークホテルと統合してから約1年を迎えた。

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中での統合だったが、2度の緊急事態宣言を乗り越え、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの改革に取り組み、ウィズ・コロナでの経営の対応力を高めている。

同ホテルグループは、1980年代からホテル事業を展開。横浜ロイヤルパークホテル、仙台ロイヤルパークホテル、宿泊特化型「THEシリーズ」含め全国で15軒の経営・運営を行う。

ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツの仲條彰規副社長は「フルサービス型ホテルと宿泊特化型ホテルなど複数のホテルタイプを一気通貫で展開するホテルチェーンとして、さらなる発展を目指す」と統合の狙いを説明する。

全てのホテル運営のノウハウを集約して、それを横展開する。総務、人事、経理などのコーポレート部門の機能を一元化することで、経営の効率化を実現する。フルサービス型で長年培った「食」のノウハウを生かし、「食に魅力のあるロイヤルパークホテルズ」のブランド確立を目指す一方、新たなテクノロジーの導入にも意欲を示す。

仲條氏は「フルサービス型ホテルをイメージリーダーとして、ブランド展開を宿泊特化型ホテルにも適用することで、お客様からの信頼を厚くすることができる」と話す。

しかし、2020年4月1日の統合から間もなく、コロナの感染拡大が加速し、緊急事態宣言へと突入した。「4~6月期は感染対策をどうするのか、営業を大幅に縮小する中で、資金の確保をどうするのかといったコロナ対応に追われ、統合効果を出すための取り組みが減速した」(仲條氏)。

その後、いったんは感染状況が落ち着き、GoToトラベルキャンペーンが始まった。「感染対策を徹底しながらも、非日常を楽しんでいただける商品造成(商品企画)」に取り組み、横浜ロイヤルパークホテルでは、部屋当たりの宿泊単価で過去最高記録を達成した月もあったという。

だが、インバウンドに加え、企業の大規模な宴会需要も戻らない。また、ウエディングなどの予約も延期や人数の縮小などが相次いでいる。

仲條氏は「1回目と2回目の緊急事態宣言下の経営を経験し、ブレーキとアクセルの踏み分けがわかってきた。ストップ&ゴーの正確さをさらにブラッシュアップしていく」と話す。

ワクチン接種の広がりに1年以上はかかると想定し、テイクアウトサービスやEコマースなどウィズ・コロナに適したサービスの充実に取り組む一方で、電子マネーを含むキャッシュレス化の対応などDXにも力を入れている。

ウィズ・コロナは2年覚悟 水面下で水かき、時機を待つ
ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ 仲條彰規副社長に聞く


ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツの仲條彰規副社長に、感染対策やウィズ・コロナ、ポスト・コロナへの対応を聞いた。

仲條彰規
ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ副社長

――4月1日のホテル統合の後まもなく、緊急事態宣言へと突入した

「4月1日時点では、すでに感染が広がっており、いつ、緊急事態宣言が発令されてもおかしくない状況であった。統合は計画通りに淡々と進めたものの、統合直後は、インバウンドをはじめ、お客様の消費活動が停滞、しかも、コロナへの感染から社員をどう守るのかという喫緊の課題への対処に追われた。また、このままの状態が続けば、資金をどう確保するのかという難題にも向き合う必要があった。統合の目的や目標を体現するための取り組みに移行するのが当然の流れだが、移行したくても、その前にやることが山ほどあるという状態だった。経営としてここまでの事態は想定していなかった。統合効果を出すための取り組みが後回しになってしまった」


――感染対策は

「緊急事態宣言に入り、5月はレストランも閉鎖し、稼働率はひと桁の状態だった。その中で、何をすればいいのか、四六時中考えていた。後にホテル業界もガイドラインを出したが、それを待つことなく、感染が拡大していた欧米の先行事例を調べて、業界に先駆けガイドラインを策定する等できることから導入を急いだ。緊急事態宣言中に、従業員が安心して働ける環境と、お客様が食事や宿泊していただける環境を整えることができた」

――GoToトラベルキャンペーンへの対応は

「お客様は感染リスクを警戒しながらの旅や食事になるので、安心安全を前面に出すことを考えた。GoToキャンペーンのメリットを十分に享受できるような価格帯のプランに人気が集まることは予想されていたので、遠出をせずに、マイクロツーリズムで楽しんでいただける充実した食や旅の商品提供を心掛けた。コロナ禍で従業員の出社も絞らなければならない難しい中で、全員が力を合わせ、商品造成やマーケティングに知恵を出し合った。フルサービス型ホテルは、GoToキャンペーンのメリットを享受できる1泊2食4万円の商品造成がしやすい。一方で、宿泊特化型は外部のレストランとコラボし、一定の反響はあったが、フルサービス型ホテルと比較するとそれほど恩恵を受けることはできなかったように思う」


――宴会需要は

「宿泊部門のキャンペーン効果で、大規模宴会など、コロナ禍で激減してしまった需要をカバーしきれていない。企業宴会は、大規模なものは完全にストップし、ウエディングは、3密を避けるために人数を減らす方向で商談するが、親族から『人数を減らしても、やるべきではない』という意見も出たりして、延期するケースの方が多い」


――年末年始の状況は

「GoToトラベルキャンペーンの中止の方向が決まり、2回目の緊急事態宣言に関する議論が始まると、過去に例を見ないほどのキャンセルが発生した。例年なら、年末年始は100%の稼働率だが、今回は3割程度にとどまった。2回目の緊急事態宣言下では、稼働率は30%程度であるものの、資金の流出が続く状況には変わりがない。需要の変動がジェットコースターのように大きい中で、お客様へのサービスをしっかり確保するために、マネジャーはシフトの作成に苦労し、頑張ってくれている」


――ウィズ・コロナの戦略について

「1回目の緊急事態宣言下は混乱状態の中での対応だったが、2回目では経験を生かして、アクセルとブレーキの踏み分けをうまくできるようになった実感はある。GoToトラベルキャンペーンは効果があったホテルや旅館もあるが、観光産業全体を見渡すと、その効果が十分に行き渡らなかったように感じる。キャンペーンの再開に向けて、政府は効果を広く浅く行きわたらせ、また需要を平準化させる方向で対策を検討していると聞く。我々はそういう中で、どこまで自助努力ができるのかを考え、水面下で水をかくような必死の経営で乗り切るしかない。ワクチン接種の状況を見ていると、ウィズ・コロナの期間は、あと2年程度は覚悟する必要がある。ポスト・コロナではインバウンド含め、観光需要は必ず復活するとみている。政府の観光戦略に対応し、インバウンドの取り込みにも力を入れるが、コロナ禍の教訓として、インバウンドに頼り過ぎるリスクは明らかで、地元のお客様の信頼を厚くするサービスに引き続き力を入れていく」

*2021年3月5日取材。所属・役職は取材当時。

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