コロナ危機に克つ:連合大阪 多様性を実現する取り組み

連合大阪の田中宏和会長(関西生産性本部副会長)は、第33・34年度(2021年11月~2023年10月)の運動方針に、「一人ひとりが尊重された真の多様性とジェンダー平等の推進」を重点取り組みとして盛り込んだことを明らかにした。フェアワークやハラスメント防止なども含め、真の多様性が根付く社会・職場の実現に向けた取り組みを強化することで、新型コロナウイルス感染拡大の影響で浮き彫りとなった働き方をめぐるさまざまな課題の解決をめざす。

「ジェンダー平等」推進 労働相談の声を政策に反映へ
連合大阪 田中宏和会長がめざすもの

田中宏和 連合大阪会長
《連合は2013年5月31日の第65回中央委員会で、「連合第4次男女平等参画推進計画」を機関決定し、その中で、取り組みの推進に向けて「モデル組織」を設定することを確認した。その後、2014年11月の連合中央執行委員会で、連合大阪が47地方連合会唯一のモデル地方連合会と位置付けられた》

一人ひとりが尊重された真の多様性を実現するには、ジェンダー平等の推進がその突破口になり、極めて重要であると考えている。連合大阪では、全構成組織において「運動方針に男女平等参画を明記する」ことと「女性役員を選出する」こと、連合大阪・構成組織・単組は「役員と機関会議の女性参画率を30%に」を目標に掲げて、取り組みを強化してきた。

その結果、目標に対して100%の達成には至らなかったものの、数値的には前進した。ただ、地方連合会としての取り組みだけでは、目標達成が困難な局面もあり、今後もこの「モデル地方連合会」の取り組みを継続するならば、構成組織本部も巻き込んだ連合(本部)のより強い指導力が不可欠だ。

政府は、2020年度を目標に、「指導的地位に占める女性の割合を30%程度に引き上げる」と掲げた。目標達成は先送りされたが、「黄金の3割理論」(ハーバード大学の社会学者であるロザベス・モス・カンター氏が提唱したもので、組織のなかでマイノリティの割合が3割となったときに、組織全体の文化が傾くという理論)という観点からも極めて重要な数値目標である。

労働組合としての役割を積極的に果たしていくために、連合大阪は「ジェンダー平等推進計画」(2021年11月)を策定し、構成組織や地域組織と連携を深めながら、確立した数値目標と行動目標達成の取り組みを強化していきたい。

女性初の連合会長である芳野友子氏が「ジェンダー主流化」を浸透させるためには、「まず参画すること」の重要性を発信した。まさに同感であり、会長の発信力に大いに期待したい。

一方で、労働組合にとっての生産性運動について、これまではどちらかというと労使関係の枠の中で考えてきたように思う。

しかし、コロナ禍を経験して分かったのは、従来の枠の中での生産性運動は限界を迎えているのではないかということだ。労使関係の枠組みに留まらず、国民運動として盛り上げていくことが、さまざまな問題の解決にもつながるはずだ。

そのためには、私たち労働組合としても、フリーランスや業務委託、請負など、いわゆる「曖昧な雇用」で働く就業者や外国人労働者にも呼び掛けて、働く仲間を増やし、労働組合づくりに参加して、生産性運動につなげていく取り組みをもっと積極的に進めていかなければならない。


《連合大阪には、新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言下での休業補償問題や感染経路不明な時の労災補償問題、休業問題に関連した解雇、契約打ち切りなどについての電話相談が寄せられている。これに対応し、加盟組織の組合員や労働組合に加入しようとする人を対象にした裁判費用の貸し付け援助を行う「連合大阪BACK UP基金(通称BUILT(ビルト)基金」を創設した》


連合大阪の「なんでも労働相談」は、年間で約2,400件(2019年)の相談を受けている。これは、働き方改革関連法の制定、インターネットなどによる多様な媒体を活用していることも相まって、大幅な増加傾向にある。

これに加えて、2020年2月以降は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う相談が大幅に増えている。ちなみに2020年は年間約2,900件である。

このように、労働相談の増加のみならず、コロナ禍での新たな相談事例を鑑みた時、今後の労働法制の整備に向けても労働訴訟による判例の積み上げが求められている。また、企業の違法な権利乱用を許さないためにも、基金の創設が必要と考えていた。というのも、本来は提訴に取り組むべきであるにもかかわらず、過去の判例や費用負担額を考慮した結果、費用が捻出できないという理由で、提訴を断念せざるを得ない事例がこれまでにも見受けられていたからだ。

そこで、有意義な労働訴訟を支援することは、労働組合の重要な社会的使命と考えて、基金の創設に踏み切った。すでに実績も積み上がっている。

この基金による支援は、連合大阪法曹団と連携し、コロナ禍で浮かび上がった労働をめぐる課題に特化して、社会課題の解決に取り組もうという狙いだ。コロナ禍での労働課題が落ち着くまでの間は、しっかりと取り組んでいきたい。

加えて、コロナでの影響だけでなく、労働相談で寄せられた声は、連合本部への集約とともに大阪府行政への要請も含めて、具体的な政策へと反映させる仕組みを機能させていきたい。

連合大阪では、ポスト・コロナに向けて労働組合としてどのような役割を果たすべきかという観点で、労働組合が何のために存在しているのかという根本の部分まで掘り下げて議論をしてきた。その中で掲げたスローガンが、「平和、幸せ、道ひらく~安心社会へ新たなチャレンジ~」だ。

32年前に連合・連合大阪が結成された時のスローガンと同じであり、今の時代に照らすと、「平和」とは、コロナ禍で顕在化したさまざまな社会課題や働く者の雇用環境の改善を求めていくことである。猛威をふるっている自然災害への対応も「平和」の実現には重要である。一方、格差や貧困の解消、それにつながるフェアワークをどう実現するかということは「幸せ」につながり、「道ひらく」は、「ジェンダー平等」の実現などがそれに相当する。

大阪の政治の安定も「平和、幸せ、道ひらく」ために重要であることは言うまでもない。労働運動の社会への波及に力を尽くすことが、社会的な役割を果たす一歩であると確信している。



*2021年12月6日取材。所属・役職は取材当時。

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