国際連携:ブルッキングス研究所ベイリー博士研究

慎重なリスク忌避文化の克服を


日本生産性本部は2022年10月下旬、「生産性マネジメントフォーラム」及び「71期経済情勢懇話会 10月例会」を都内のホテルで開催した。米国ブルッキングス研究所のマーティン・ニール・ベイリー氏(元米国大統領経済諮問委員会委員長)がオンラインで登壇し、日米欧の過去30年以上にわたる生産性比較をもとに日本の生産性について考察、今後の日本の成長に必要な視点を示した。

ベイリー氏は、世界の雇用者1人あたりの労働生産性の伸びが全体的に鈍化していることや、日本と英国は米国に比べ、労働生産性水準で後れを取っていること、米国全体の全要素生産性(TFP)上昇率に対する各産業の寄与度(1987-2019年)をみると、最も寄与しているのが製造業であり、その中でも特に「コンピューター/電子製品」が大きく寄与していることなどを説明した。

そのうえで、国による生産性の水準の違いについては、先進国では資本集約度が生産性格差の主要因になることはほとんどないことや、「トヨタ生産方式」や、資源を有効に活用するためのマーケティングや生産管理のスキルといった「ソフトテクノロジー」が非常に重要であること、管理職や技術職の教育や技能も非常に重要であることなどを指摘した。

日本の生産性が低迷する要因については、過剰規制による保護が存続している業界があることや、女性労働力などが十分に活用されていないこと、全人口に占める修士号・博士号取得者の割合が米独よりも低いこと、日本の設備投資が低迷していること、研究開発費を投入している割には生産性上昇に結びつかないことなどを挙げた。また、日本のTFP上昇率に対する各産業の寄与度(1996-2019年)をみると、製造業や不動産業、情報通信業などではプラスになっているが、金融・保険業、宿泊・飲食業、建設業などではマイナスになっていることなどにもふれた。

ベイリー氏は最後に、日本の成長のための必要な要素の一つとして、ベンチャーキャピタルの充実を挙げるとともに、「慎重なリスク忌避文化」を克服し、失敗への許容度を高めることが重要だと強調した。

なお本稿で紹介したマーティン・ニール・ベイリー博士の研究については、日本生産性本部の支援により刊行されたブルッキングス研究所の下記研究を参照されたい。
Lessons from Productivity Research: Applying these to a strategy for Japan
生産性研究からの教訓:日本における戦略への適用(日本語仮訳)

(日本生産性本部 国際連携室)

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