調査・研究日本の生産性の動向
「農業の生産性~現状と成長産業化にむけた課題~」刊行について
2010年4月9日
公益財団法人 日本生産性本部
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公益財団法人 日本生産性本部は、「農業の生産性~現状と成長産業化にむけた課題~」を刊行した。本書では、国内外の取得可能な統計データをもとに、産業レベル・個人及び組織経営農家の労働生産性の動向、生産性の国際比較などをとりまとめている。概要は、以下の通り。
≪ 主なポイント ≫
- [1]付加価値労働生産性の現状
~農林水産業の労働生産性は229万円、全産業平均の約3割~- 農林水産業の労働生産性は229万円(2008年)。全産業平均(766万円)の29.9%にとどまる。
- 農業主要分野の労働生産性(自営農業労働1時間あたり)は、稲作が573円。酪農(1,077円)や肉用牛(1.239円)、養豚(1,958円)、野菜(731円)、果樹(739円)より低くなっている。
- 地域別にみた農家の労働生産性は、畜産の比重が高く大規模農家が多い北海道(1,594円)が突出して高く、米どころとして名高い北陸(977円)が続いている。反面、経営耕地10aあたり付加価値額は、北海道(36,000千円/10a)や北陸(同57,000円)が平均を下回り、東海(同111,000円)が最も高くなっており、労働生産性とは傾向が大きく異なる。
- [2]物的労働生産性(土地生産性)の動向
~日本の米の土地生産性は主要国中第11位~- 稲作分野における2009年の土地生産性は、522kg(作付10aあたり)。気候変動などの影響もあるが1990年代半ばから概ね500kg強で横ばい傾向にある。
- 日本の米(籾ベース)の土地生産性は、主要米生産国中第11位(2008年)。中国やギリシャとほぼ同水準であり、第1位のエジプト(9,731kg/ha)の2/3程度にとどまっている。
- [3]農業生産法人などの労働生産性
~組織経営法人の生産性は個人経営平均を大幅に上回る~- 農業生産法人など組織経営法人の労働生産性は、稲作分野で2,773円(労働1時間あたり)。特に、稲作や畑作、酪農などといった分野では、組織経営法人の労働生産性が個人経営平均を大幅に上回る水準となっている。
- [4]補論:農業の成長産業化に向けた課題
- 食料安全保障の観点から国内生産力向上と輸出振興を成長戦略とし、減反政策の廃止、ゾーニング規制の強化を前提とした個別所得保障政策の実施、FTAの促進を行う。生産性向上の手段として、企業の農業参入促進をはかる。
政策1: 企業の農業参入促進に向けた参入条件の緩和
政策2: 生産性向上に向けた農業経営に関するデータベース構築
政策3: 輸出拡大に向けたブランド戦略の構築と推進
政策4: 企業家的農業経営人材の育成に向けた教育プログラムの検証と拡充
- 食料安全保障の観点から国内生産力向上と輸出振興を成長戦略とし、減反政策の廃止、ゾーニング規制の強化を前提とした個別所得保障政策の実施、FTAの促進を行う。生産性向上の手段として、企業の農業参入促進をはかる。
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公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター(担当:内山・木内)
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