夏時間(サマータイム)制度導入と自治体の環境政策に関する首長アンケート
2003年2月5日
公益財団法人 日本生産性本部
財団法人 社会経済生産性本部は5日に記者会見し、「生活構造改革フォーラム」(代表は茅陽一・東大名誉教授、木元教子・評論家、主催・事務局は社会経済生産性本部。各界有識者51名で昨年3月に設立。詳細は添付資料参照)が実施した夏時間(サマータイム)制度導入と自治体の環境政策に関する首長アンケート」の調査結果を公表した。
アンケート調査は全国3,288の地方自治体首長(47都道府県知事、東京23区長、675市長、1,981町長、562村長)を対象に、首長個人の意見を調査することを目的として、平成14年10月29日~12月31日の期間、調査票の郵送発送・郵送回収法により実施された。有効回答数963名・有効回答率29.3%(うち都道府県知事37名78.7%、東京23区長11名47.8%、市長237名35.1%、町長531名26.8%、村長147名26.2%)。
調査結果によると、回答した963名の首長のうち、735名(回答者の76.3%)が夏時間制度の導入に賛成(「賛成」286名29.7%、「どちらかというと賛成」449名46.6%の合計)と回答。さらに、賛成と回答した735名に夏時間制度の導入で期待される効果をたずねたところ(複数回答)、「省エネルギーや地球環境にやさしいライフスタイルに有用」(595名81.0%)、「家族、地域社会の交流機会の増大」(519名70.6%)、「余暇を楽しみ、スポーツ等を通じて健康増進に有用」(431名58.6%)が上位を占めた。一方、昨年閣議決定された「地球温暖化対策推進大綱」については628名(65.2%)がよく知らない(「名前だけは知っている」507名52.6%、「知らない」121名12.6%の合計)と回答し、「よく知っている」は331名(34.4%)にとどまった。
また、夏時間制度の導入を日本人の生き方、暮らし方、働き方を変える突破口にしようとする「生活構造改革フォーラム」の趣旨を114名の首長(都道府県知事9名、東京23区長1名、市長33名、町長54名、村長17名)が支持、フォーラムへの参加を表明した(実名は別添報告書13、14頁参照)。 「生活構造改革フォーラム」では今回の調査結果を踏まえ、夏時間制度の理解促進のための活動をさらに広範囲で積極的に展開するとともに、夏時間制度に賛成する国会議員にも呼びかけて超党派の「推進議連」発足を求めていく予定。
※夏時間(サマータイム)とは ……
夏時間(サマータイム)制度とは、海外ではデイライト・セイビング・タイム(Daylight Saving Time)とも呼ばれている制度で、具体的には、日の出時刻が早まる時期(たとえば4月~10月)には、夕方の明るい時間帯を増やし有効活用するために時計の針を1時間進めることをいう。現在、世界70ヶ国以上で導入され、OECD加盟国で実施していないのは、日本、韓国、アイスランドのみ。
わが国では、これまで主として省エネの観点から夏時間制度の導入が検討されており、平成13年7月に実施された内閣府の世論調査では国民の50.9%が導入に賛成しているにもかかわらず、いまだに導入の見通しは立っていない。
「京都議定書」が発効すれば、わが国は温室効果ガスの排出量を90年度比で6%削減することが義務づけられるが、夏時間の省エネ効果は、原油換算で年間50万kl、炭素換算44万トンと推算され、これは福井県の年間エネルギー消費量に相当すると言われている。
また最近では、単に省エネの観点のみではなく、夏時間を突破口として日本人のこれまでの生き方、暮らし方、働き方を変えようとする議論が民間で高まっており、このような観点から「生活構造改革フォーラム」が設立された。
アンケート結果の要旨
質問1.環境問題に対する関心……
◆「地球温暖化対策推進大綱」、首長の65.2%がよく知らないと回答
~「よく知っている」は34.4%にとどまる~
- 初めに、「地球温暖化対策推進大綱」(平成14年閣議決定)についてどの程度関心があるかを質問したところ、628名(65.2%)がよく知らない(「名前だけは知っている」507名52.6%、「知らない」121名12.6%の合計)と回答する結果となった。これに対し、「よく知っている」と答えたのは331名(34.4%)にとどまった。
- 回答の内訳をみると、よく知らない(「名前だけは知っている」「知らない」の合計)と答えたのは、都道府県知事は1名(2.7%)にとどまったものの、東京23区長5名(45.5%)、市長114名(48.1%)、町長391名(73.7%)、村長117名(79.6%)となっている。これに対し、「よく知っている」と答えたのは、都道府県知事34名(91.9%)、東京23区長6名(54.5%)、市長121名(51.1%)、町長140名(26.4%)、村長30名(20.4%)となっている。
質問2.夏時間制度の導入に関する賛否……
◆76.3%の首長が夏時間制度の導入に賛成
◆夏時間の実体験の有無が導入賛否に反映
- 次に、夏時間制度の導入について賛否を質問したところ、735名(76.3%)が夏時間制度の導入に賛成(「賛成」286名29.7%、「どちらかというと賛成」449名46.6%の合計)と回答。導入に反対とした121名12.6%(「反対」17名1.8%、「どちらかというと反対」104名10.8%の合計)を大きく上回る結果となった。
- 回答の内訳を行政単位別でみると、賛成(「賛成」「どちらかというと賛成」の合計)と答えたのは、都道府県知事26名(70.2%)、東京23区長8名(72.7%)、市長191名(80.5%)、町長406名(76.5%)、村長104名(70.8%)となっている。これに対し、反対(「反対」「どちらかというと反対」の合計)と答えたのは、都道府県知事6名(16.2%)、東京23区長0名(0.0%)、市長31名(13.1%)、町長64名(12.0%)、村長20名(13.6%)となっている。
- また、回答者が夏時間制度を実際に経験したか否かで導入に対する賛否の違いを確認したところ、「戦後日本での実施時に経験」した223名のうち180名(80.8%)、「海外生活で経験」した39名のうち34名(87.1%)、「海外旅行中に経験」した166名のうち140名(84.4%)が導入に賛成(「賛成」「どちらかというと賛成」の合計)と回答。一方、「経験はない」と答えた380名のうち賛成(「賛成」「どちらかというと賛成」の合計)と答えたのは270名(71.1%)にとどまった。
質問3.夏時間制度の導入に賛成する理由……
◆「省エネルギーや地球環境にやさしいライフスタイルに有用」(81.0%)、「家族、地域社会の交流機会の増大」(70.6%)、「余暇を楽しみ、スポーツ等を通じて健康増進に有用」(58.6%)が上位を占める結果に
- 次に、質問2で夏時間制度の導入に賛成と回答した735名に対し、その理由を3つまで選択する複数回答方式で質問したところ、「省エネルギーや地球環境にやさしいライフスタイルに有用」(595名81.0%)、「家族、地域社会の交流機会の増大」(519名70.6%)、「余暇を楽しみ、スポーツ等を通じて健康増進に有用」(431名58.6%)が上位3つを占める結果となった。
- 以下、「地域の産業振興・観光資源の活用と雇用機会の増大」(222名30.2%)、「自然資源の価値が見直され、環境美化が促進」(150名20.4%)、「70ヶ国以上で実施され、国際協調の上で必要」(82名11.2%)、「夕方の明るい時間の増加による交通事故の減少」(65名8.8%)、「夕方の明るい時間が伸びることで犯罪の減少、治安の向上に有用」(60名8.2%)、「高齢者、障害者の生活の安全に有用」(41名5.6%)という順になっている。
質問4.夏時間制度の導入に反対する理由……
◆「地域の地理的特性や風土にあわないから」(60.3%)、「現状に問題があるわけでなく、導入の必要性を感じないから」(51.2%)が上位を占める結果に
- 次に、質問2で夏時間制度の導入に反対と回答した121名に対し、その理由を3つまで選択する複数回答方式で質問したところ、「地域の地理的特性や風土にあわないから」(73名60.3%)、「現状に問題があるわけでなく、導入の必要性を感じないから」(62名51.2%)とする回答が上位2つを占める結果となった。
- 以下、「結果的に労働時間の増加や労働強化につながる恐れがあるから」(29名24.0%)、「制度導入のために新たなコスト負担が発生するから」(23名19.0%)、「生活時間の変更により、体調を崩しやすくなるから」(17名14.0%)、「切替日における時計の修整など、住民の手間が煩雑となるから」(12名9.9%)、「制度に関する広報・周知活動が不十分だから」(8名6.6%)という順になっている。
質問5.「生き方」「暮らし方」「働き方」を変えるうえで、夏時間制度とあわせて必要な工夫はなにか……
◆「労働時間が増大することのないよう指導の徹底」(886ポイント)、「スポーツ施設や文化施設等の充実と活用施策の向上」(852ポイント)、「サマータイムに対する誤解を解くための政府による広報の徹底」(742ポイント)などを重視
- 最後に、地域住民の生き方、暮らし方、働き方を見直していくためにはサマータイム制度とあわせてどのような工夫が必要かを全員に質問し、用意した10の選択肢の中から3つ選んだうえで優先順位をつけてもらった。選んだ中で最も優先順位が高いものを3ポイント、以下2位を2ポイント、3位を1ポイントとウェイトをつけ、各項目ごとにポイントの合計値を出し比較してみた。その結果、「サマータイムによって労働時間が増大することのないよう指導の徹底」(886ポイント)、「夕刻の明るい時間が活かせるスポーツ施設や音楽・演劇など文化施設等の充実と活用施策の向上」(852ポイント)、「サマータイムに対する誤解を解くための政府による広報の徹底」(742ポイント)、「サマースタイル(ノーネクタイ・ノージャケット)の社会での常識化」(681ポイント)などが重視される結果となった。
- 以下、「サマータイムを時限立法とし、導入後の一定時期(3年後程度)に再検討」(424ポイント)、「サマータイムの切り替え時に啓蒙普及をかねた楽しいイベントを企画・実施する」(339ポイント)、「3連続休暇、秋休み、ローカルタイムなど国あるいは地方独自の休暇への取り組み」(308ポイント)、「サマータイムによる混乱を緩和する電波時計を公共施設や家電製品等に装着」(198ポイント)、「ポイ捨て、不法看板、貼り紙等を禁止する条例を設け、ボランティアの協力による街の美化」(170ポイント)、「遊歩道や自転車道の整備、中心市街地等への車乗り入れ禁止や時間制限等」(110ポイント)という順になっている。