調査・研究その他の調査研究・提言

裁量労働制ならびに労働時間管理に関する調査

2002年9月26日
公益財団法人 日本生産性本部

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財団法人 社会経済生産性本部は、裁量労働制の導入・運用実態と今後の課題を探るために、従業員500名以上の企業3,573社の人事労務部門および裁量労働制が導入されている企業30社の職場のライン管理職を対象に「裁量労働制ならびに労働時間管理に関する調査」を実施した。

(有効回答数と回収率は、人事:407票11.4%、ライン管理職87票、27.2%)調査結果のポイントは以下の通りである。

<調査結果の主なポイント>

  • ライン管理職に裁量労働制の運用状況を尋ねたところ、仕事の進め方やスケジュールの決定の『裁量』について、「対象者全員に認められている」が69.0%にとどまっている一方、「一部の人だけに認められている」18.4%、「認められていない」11.5%となっている。
  • 人事部門の認識では、適用者の半数以上がみなし時間を上回る企業は3割(30.8%)、そのうち、適用者全員がみなし時間を上回る企業が1割(12.8%)を超えている。
  • 裁量労働制の導入により、人事、ライン管理職とも「部門や業務の生産性が向上した」(人事48.7%、ライン管理職44.8%)、「従業員の仕事の意欲が高まった」(人事79.5%、ライン管理職47.1%)としている。一方、人件費総額については、「減った」が28.2%、「増えた」が20.5%(いずれも人事)となっており、裁量労働制の導入が必ずしも人件費削減に効果があるとはいえない。
  • 専門業務型裁量労働制に新たに対象に加えて欲しい業務については、「ない」とする企業が86.5%、「ある」は12.8%にとどまっている。
  • 企画業務型裁量労働制を導入していない理由は、「対象者と非対象者の混在など、職場の管理が複雑になる」52.4%が最も多く、「対象者を特定しにくい」47.9%、「法律で定められた手続きが煩雑」35.8%が続いている。
  • 「サービス残業」については、人事63.9%、ライン管理職50.6%が「あると思う」としている。また、 「サービス残業」が存在する実態について、人事は「ある程度やむを得ないことだ」が47.9%(裁量労働制を導入している企業41.0%)であるのに対し、ライン管理職は「ある程度やむを得ないことだ」が54.0%と過半数となっている。
  • 成果主義の導入に伴う実労働時間の変化について、裁量労働制を導入している企業は「減る」が64.1%と過半数に対し、ライン管理職は「増える」が59.8%と逆の見通しをしている。個人の成果に対する企業の要求が厳しくなる中で、労働者のゆとりがますます失われていくことに、注意する必要がある。