エネルギー環境特別委員会・エネルギー政策と地方自治体~自治体のエネルギー政策推進にむけての提言
2006年6月5日
公益財団法人 日本生産性本部
調査研究・提言活動 資料ダウンロード
本報告書は、財団法人 社会経済生産性本部に設置されている、エネルギー環境特別委員会(委員長 茅 陽一東京大学名誉教授)が、平成16年より取り組んできた「エネルギー政策と地方自治体」の調査研究報告書である。本報告書の中で、調査結果に基づき、自治体の特性に応じたエネルギー施策の展開、電源三法交付金の活用など自治体のエネルギー政策推進について提言を行っている。
国が講ずるエネルギー政策の具体化のための地域における広聴・広報の活性化、また、その地域の実情に応じた省エネルギー、新エネルギーの取り組みの促進など、エネルギー政策における地方自治体の役割は一層重要になってきている。
おりしも三位一体改革・市町村合併など、地方自治体は地方分権改革という大きな問題に直面しており、また、電源開発促進対策特別会計(電源特会)の見直し論議も広がってきている。
このような重要な環境変化の中で、エネルギー政策における地方自治体の役割を明らかにするため、地方自治体の意見・ニーズを把握し、具体的実現や課題などについても把握する必要があるとの観点から、エネルギー環境特別委員会では、平成16年10月より「エネルギー政策と地方自治体」を取り上げ、17年8月には地方自治体に対してアンケート調査を行うなど調査研究を行ってきた。
アンケート調査分析結果にもとづき、社会経済生産性本部の運動展開の視点から実効性のある政策提言として(5項目の提言)を示すこととする。
- 1.各自治体レベルで、省エネルギーと温室効果ガス削減の自主行動計画の策定および計画的な実行を
地球温暖化対策についての国際的制度整備、国内での実効性ある政策措置の検討の中、第二期約束期間の温室効果ガス削減目標はさらに厳しくなることが予想されている。厳しい削減目標を達成していくためには国のみならず地方自治体、企業、国民が互いに協力し合って取り組んでいく必要がある。地方自治体は自主行動計画を策定し、省エネルギーの推進と温室効果ガスの削減に向けて住民の模範となる行動を示すべきである。
- 2.画一的な補助制度から脱却し、地域特性にあった新エネルギーと省エネルギー施策の立案と実施を
新エネルギーの導入と省エネルギーの推進に対して、地方自治体と企業はいつまでも国からの補助金に頼ることはできない。各自治体レベルで実効あるものにしていくためには、自治体独自の成功事例や情報を伝達するネットワークを構築し相互コミュニケーションを促進していくことが大切になる。また、地元の企業、NPO、住民と自治体との間で普及に向けた協力関係を図る必要がある。具体的には、新エネ活用と観光交流とのコラボレーションを図ることなどが例として挙げられる。
- 3.学校・家庭・地域社会の相互連携で、充実したエネルギー・環境教育の実施を
地域におけるエネルギー・環境への長期的な取り組みの必要性を考えた場合、次の時代を担う青少年層を対象とした教育が極めて重要な意義を持つことから、小中高校段階でのエネルギー・環境教育については、「総合的な学習の時間」や各教科を通して、学校・家庭・地域社会の相互連携の下、地域の特色を活かしつつ、地域社会の持続可能な発展を目指して行われるべきである。
具体的には、「総合的な学習の時間」における学習活動の一つに「エネルギー・環境」分野を確立させ、地域の教育センターや生涯学習センターが中核となり企業・NPO等との連携の下、先生方への指導方法習得のための研修プログラムや指導者派遣など各種支援制度の拡充をすることが挙げられる。 - 4.地域経営のデザインにむけた電源三法交付金の柔軟な運用を
エネルギー政策を実効あるものにしていくためには、自治体が力を入れている施策である「福祉の推進」「観光振興」「地場産業の育成」等と結び付けて実施していく必要があり、その財源の一つとして「電源三法交付金」を有効に活用することは重要である。
電源三法交付金制度は、使途の弾力化や交付金の一本化等、継続的に見直しが行われてきているところであるが、今後も、例えば地元の企業、住民、NPO等が主体的に参加するイベントの開催や電力消費地との交流(産消交流)など、地域振興や教育活動に対してより一層効果的に活用されるよう、地元要望を踏まえた制度改正が望まれる。 - 5.立地地域における原子力を含む科学技術リテラシーを向上していく仕組みづくりを
科学技術の高度な発展によって、科学技術の領域が拡大している一方で、専門が細分化し深化している。そのため総合的な科学技術の理解が困難になる傾向があり、それが原子力への不安感を増大させている。科学的知識や安全を確保するための技術的な対策が正しく理解されていないために、放射線利用技術などについて進展の速度が滞っている分野もある。日本が科学技術立国として発展していくためには、人々が身近な生活から科学の原理や技術の仕組みと制御方法などを理解していくことが必要になる。
発電所などエネルギー関連施設を立地している地域は、科学技術リテラシーを向上していく仕組みづくりと人材育成についてのモデル地域となるべきである。