調査・研究その他の調査研究・提言

第5回 働く人の意識調査

行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を

2021年4月22日
公益財団法人 日本生産性本部


公益財団法人 日本生産性本部は4月22日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第5回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。
コロナ禍の長期化を視野に、日々の暮らしや働き方、組織の業務内容や運営形態などが見直され、その影響は社会・経済の仕組みや人々の意識・価値観の変遷にまで及んでいます。経営者・労働者・学識者の三者構成による日本生産性本部は、組織で働く雇用者を対象に、所属組織に対する信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、継続的にアンケートによる意識調査を実施しています。
5回目となる今回の調査は、2021年4月5日に政府より一部地域にまん延防止等重点措置が適用された直後の4月12日(月)~13日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行ったものです。

調査結果からは、全ての世代で感染不安が薄れて「コロナ慣れ」が進み、テレワーク実施率は約2割で変わらず推移していることから、人々の自覚に基づく行動変容の訴求は、従来以上に難しくなっていることが伺えます。企業には、テレワークを前提とした業務遂行プロセスの再設計や多様な働き方の体験・実践を通じた意識改革により、従業員の移動を抑制して安全確保に努めるなど、一層の施策が求められます。また、今回の調査では、社会保障の給付水準と負担額のバランス、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用、就業希望年齢に関する設問などを新たに追加しました。主な特徴は以下の通りです。


【第5回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は「資料1:調査結果レポート」参照)

1. 感染不安と外出自粛:全年代で希薄化、特に20代・50代・60代で「コロナ慣れ」進む(図5~10)

  • 自分自身が新型コロナに感染する不安の程度について、「かなり不安を感じている」が25.5%と、1月調査の35.2%から減少している一方、「やや不安を感じている」は52.7%と1月調査の48.2%からやや増加。「あまり不安を感じていない」が13.0%から17.4%へと増加していることも併せて考えると、全体として不安の程度はやや薄らいでいる(図5)
  • 年代別に見ると、全ての年代で「かなり不安を感じている」が減少。特に、50代・60代の大幅な減少が目立つ。何らかの不安を感じている者が最多だが、全ての年代で感染への不安が希薄化している(図6)
  • 不要・不急の外出を「できるだけ避けるようにしている」は43.5%と、1月調査の49.8%から減少(図8)。年代別に見ると、「できるだけ避けるようにしている」が20代で45.9%から31.9%に、50代でも56.3%から42.7%へと減少(図10)
  • 新型コロナ感染への不安感と外出自粛行動には強い関連がみられる(図9)

2. 社会保障の給付と負担:給付水準と負担額のバランス、年代による意識の差が明確に(図13~15)

  • 社会保障の給付水準と負担額のバランスについて、「給付水準は維持し、負担額はある程度増やす」が38.6%で最も多く、次いで「給付水準を引き下げ、負担額は現状を維持する」が32.1%(図14)
  • 30代~50代は「給付水準は維持し、負担額はある程度増やす」と「給付水準を引き下げ、負担額は現状を維持する」がいずれも30%台で拮抗。60代・70代以上では「給付水準は維持し、負担額はある程度増やす」が他の年代より大幅に増え、過半数を占める。「給付水準を大幅に減らし、負担額も減らす」は20代が31.9%で最も多く、高年層ほど減少(図15)

3.勤め先への信頼度・業績不安:不安感は減少傾向だが、業種により大きなバラつき(図16~21)

    • 勤め先の業績に「かなり不安を感じる」は15.0%、1月調査の20.2%から減少(図17)
    • 業種別に業績への不安感について「不安は感じない」(「全く不安は感じない」と「どちらかと言えば不安は感じない」の合計)から「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」と「どちらかと言えば不安を感じる」の合計)を引いた割合(D.I.:Diffusion Index)をみると、「教育、学習支援業」「公務」等のようにプラスの値を示す業種や、「情報通信業」といった僅かなマイナスにとどまる業種がある一方、「卸売業」「運輸業、郵便業」のように40ポイント以上のマイナスを示す業種があり、業種によって業績不安の様相は大きく異なる(図18)
    • 今後の自分自身の雇用についての不安感は、1月時点と比べて大きな変化はない(図19)
    • 勤め先の業績に「かなり不安を感じる」がやや減少、3か月前と比較した業務量の増減がマイナスからプラスに転じた(図11)ことから、企業の事業活動が一部で回復しつつあると推察

4. 人事評価・キャリア形成:望ましい雇用形態や「何歳まで働きたいか」は性別で差(図25~31)

      • メンバーシップ型雇用を「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」、ジョブ型雇用を「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」として、希望する雇用形態を聞いたところ、ジョブ型が58.7%、メンバーシップ型が41.3%(図26)
      • 性別で見ると、男性はジョブ型54.0%/メンバーシップ型46.0%である一方、女性はジョブ型64.5%/メンバーシップ型35.5%と、性別によって10ポイントの統計的有意差がある(図27)
      • 就業希望年齢について、「働ける限り、何歳になっても働きたい」が35.5%で最多、次いで「61~65歳まで」30.9%、「56~60歳まで」14.6%、「66~70歳まで」13.4%、「55歳まで」5.5%(図28)。性別でみると、男性は「61~65歳まで」が34.9%で最多、「何歳になっても働きたい」は32.3%。女性は「何歳になっても働きたい」が39.5%で最多、「61~65歳まで」は26.0%(図29)

5. 働き方の変化:テレワーク実施率は約2割で推移、宣言・措置の影響力は低下(図44~55)

    • 雇用者に占めるテレワーカーの割合は2020年7月以降、継続して約2割程度で推移(図45)
    • 調査実施時点でまん延防止等重点措置が適用されていた大阪府・兵庫県において、同措置の適用がテレワーク実施率に影響した様子は見られなかった。1月調査で緊急事態宣言発出直後の首都圏(1都3県)で発出前との差がなかったことと同様で、宣言や措置の企業への影響力が2020年4~5月頃と比較して低下していることを示唆(図46)
    • 新型コロナ問題が収束した後の働き方や生活様式に関する変化の可能性について、テレワーカーの方が非テレワーカーよりも変化の可能性を肯定する傾向が強かった。ほぼ全ての項目で統計的有意差がみられ、体験が「ニューノーマル」を現実化する力になると推察される(図55)

【「働く人の意識調査」概要】
公表日 調査期間 タイトル 調査期間の特徴
第1回
2020年5月22日
2020年
5月11日~13日
労使の堅固な信頼関係の再構築と「新しい生活様式」に向けた意識改革を 初の緊急事態宣言発出(4月7日)から1か月半
第2回
2020年7月21日
2020年
7月6日~7日
組織の生産性向上につながる労使の信頼関係の再構築を 緊急事態解除(5月25日)から1か月半
第3回
2020年10月16日
2020年
10月5日~7日
人的資本への積極投資を。テレワークは一定程度定着の兆し 「GoToトラベル」等積極的経済活動再開から3か月
第4回
2021年1月22日
2021年
1月12日~13日
組織の健康配慮が行動変容を後押し、社会経済システムや組織への信頼強化を 二度目の緊急事態宣言発出(1月7日)直後
第5回
2021年4月22日
2021年
4月12日~13日
行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を 一部地域に「まん延防止等重点措置」適用(4月5日)直後
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公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター(担当:柿岡)

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