清水建設が目指すBeyond Zero 2050
名知博司 清水建設技術研究所副所長(2024年9月5日号)
連載「続・サーキュラーエコノミーを創る」⑤ 清水建設が目指すBeyond Zero 2050
清水建設は、2021年6月に環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」を公表した。シミズグループが目指す持続可能な社会を「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」の3つの視点で捉え、それらの実現に貢献すべく、2050年までに自社活動による負の影響をゼロにするだけでなく、お客様や社会にプラスの環境価値を積極的に提供することを目指すべき姿に掲げた(=図表)。
「資源循環社会」の実現に向けては、サーキュラーエコノミー(CE)に段階的に移行することを見据えて、社会実装の準備を進めている。リニアとサーキュラーが混在する期間(バトンゾーン)においては、建物の価値や健全性を再評価して長寿命化を図ること、解体建物を資源とみなし極力再利用することなど、価値の創出「Beyond Zero」に取り組んでいく。
建材の天然資源消費量を削減
建設廃棄物を再資源化し、建材の一部として再利用することで、天然資源の消費量を削減する取組みを推進している。通常、建設現場から発生する廃棄物は中間処理場に排出されるが、最近では「広域認定制度」を利用してメーカーの製造工場に廃棄物を直接戻すことで、建材の原料等に再資源化する活動を加速させている。コストの観点では、現場からの収集・運搬効率の飛躍的な向上と、回収可能な品目を増やすことが不可欠であり、建設業界全体で、サプライチェーンの輪を広げていく。
最近、板ガラスのマテリアルリサイクルに取り組んだ事例が存在する。解体建造物に使用されていた外装ガラスを板状のまま取り外し、ガラガラス製造工場の品質検査を経て、板ガラスの原材料として利用した。
木質建材の循環システムを構築
循環資源として再生可能な木材活用は世界中で注目されている。当社は、需要拡大が見込まれる木造・木質建造物に利用する木材の循環調達を目指すプロジェクト「シミズめぐりの森」を推進している。このプロジェクトは、当社が木材を消費する需要家としてだけでなく、森林資源の再生にも主体的に取り組み、循環型の木材活用を推し進めるものである。具体的には、群馬県川場村の村有地を植林地として借り受け、最大50年間にわたり、自社事業で利用する木材を産出する森林の育成に取り組んでいく。さらに、地域と連携しながら、この活動を全国に広げていく。
他方、木材を加工する際に生じるおが粉については、炭化させバイオ炭としてコンクリートへ貯留することで、長期間の炭素貯留を行うこともできる。
このように、森林資源の循環活用を目指す「シミズめぐりの森」を通じ、脱炭素社会と資源循環社会の実現に寄与していく。
循環が可能な材料や工法を再検討
建材に再資源化材を活用することにより天然資源の消費量を減らすことは可能だが、より天然資源の消費量を削減できるリペアやリユースを行うためには、建材の接合方法や健全性の観点から、材料や工法の抜本的な見直しが必要となる。そこで、東京大学と実施している社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」では、循環経済の社会実装に最大限貢献する建造物の設計・施工システムの確立に向けた共同研究を推進している。
具体的には、建設材料の主要構成元素の循環を追跡・予測するシミュレーションモデルや、元素・物質の持続的な循環性の評価指標を研究している。また、建設材料・部材の用途に応じて複数の機能を実現でき、かつ性質・形態を容易に変化させることができる素材や、それらを用いた建設材料・部材の実用的な製造方法についても研究している。
研究成果を活用して、環境的にも経済的にも無理なく元素・物質を流通・循環させる建造物の実現を目指していく。
このような活動を通じて「SHIMZ Beyond Zero 2050」を達成し、お客様や社会にプラスの環境価値を積極的に提供するとともに、持続可能な社会創りに貢献していきたい。
著者略歴
名知博司 清水建設技術研究所副所長 博士(工学)
1991年清水建設株式会社技術研究所入社。専門は、建築仕上げ材料・施工・品質管理全般。2020年建設基盤技術センター長、2023年資源循環グループ長を1年間兼任後、2024年から現職。趣味はゴルフ(歴18年)とベランダ菜園(歴22年)。
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