第3回:日本ユニシス~管理職を軸にした変革~(2016年6月15日号)

■風土を変える変革リーダーを育成

いつの時代も、どのような組織でも管理職の能力向上は経営の重要な課題である。

管理職は扇の要として組織の方針を浸透させる役割を担うとともに、業務指示といった直接的な影響力の行使に加え、日頃の言動が組織風土となることで間接的にも部下の意識や行動、ひいては業績に影響を与えるからだ。

管理職に焦点を当てて組織目標の達成に注力をしているのが、ITサービス大手の日本ユニシスだ。

同社では、人財育成施策のビジョンとしてイノベーションを起こす組織風土の醸成を掲げている。そのための施策の柱が管理職のマネジメントスタイルの変革だ。

その背景について施策の推進を担う組織開発部担当マネージャーの秋山美枝氏は「業界の特性もあり指示型のマネジメントが多かったため、よりイノベーティブな風土になるよう管理職のマネジメントスタイルを社員の自発性を引き出すコーチング型に変え、風土変革の中心となる変革リーダーを育成するのが会社の方針である」と語る。

そのための取り組みの一つが「コーチング力強化研修」だ。

コーチング力強化は一般的に課長クラスを対象にすることの多い研修だが、あえて部長に受講させている。そのねらいは「部門の中核であるキーパーソンがコーチングの考え方を理解して実践することにより、自ら発想し、変革とチャレンジが起きる組織風土を作り上げること」(秋山氏)だ。加えて、コーチングの手法をまとめたガイドをイントラで公開し、全ての社員が学べる環境を整えている。

意識の醸成にとどまらず実行まで担保するために、管理職の人事評価に自律型社員をどれほど育成できたか、というコーチングに連動するような評価項目を追加するなど人事制度にも手を加えている。

社員の自発性を引き出すために取り組んでいるもう一つの柱が、キャリア開発に関わる施策だ。

同社では、計画的に専門性を高めていくためにキャリア形成のモデルをキャリアパスとして明示し、節目ごとにキャリアをデザインするための研修を実施するほか、社員がキャリアコンサルタントの資格を取得してキャリア相談を行うなど、社員のキャリア形成に積極的に取り組んでいる。

なかでも特徴的なのは、組織の期待と社員のニーズをすり合せながらキャリア形成について語り合う上司と部下の面談を年間3回にわたり実施している点である。面談のみならず日常の場面でも社員のキャリア形成において、上司の果たす役割が大きいとの認識から、上司のキャリア開発支援力を強化する取り組みとして「キャリア開発支援研修」を行っている。この研修はグループ会社も含め、これまですべての課長、部長が受講しており、部下と向き合う姿勢や、実技演習を取り入れた実践的な関わり方などを習得している。

研修を担う組織開発部担当マネージャーの柴田宏一氏は「業績を上げて管理職になるとどうしても自身の成功体験に基づいて指示型のコミュニケーションになりがちだが、研修を受講することで部下の思いに耳を傾けられるようになる」「社員向けのキャリアデザイン研修だけでなく、上司向けの支援研修をセットで実施することで、研修時のモチベーション向上といった『点』の効果を、日常でも持続させる『面』にすることができる」と研修の効果を説明する。

管理職からは「個人への動機づけが組織全体のパフォーマンスアップにつながっている」といった声が寄せられるなど、着実に成果に結びつき始めている。


筆者

栗林 裕也
日本生産性本部 人材開発コンサルタント

お問い合わせ先

公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部

WEBからのお問い合わせ

電話またはFAXでのお問い合わせ

  • 営業時間 平日 9:30-17:30
    (時間外のFAX、メール等でのご連絡は翌営業日のお取り扱いとなります)