第4回:NEC~中高年社員のキャリア開発~(2016年6月25日号)

■社員が自ら選択できる環境を整備

いわゆる「あがり意識」によるモチベーションダウンや能力の陳腐化などといったミドル・シニア社員にありがちな問題は、同世代の社員の構成比率が高まってきている多くの企業において、悩みのタネとなっている。

職場を去るその日まで貴重な戦力として活躍してもらうために、組織として何ができるのか。今回はNECの取り組みを紹介したい。

同社ではミドル以降のキャリアをどのように形成していくのか、早い段階から社員が意識し、社内だけでなく社外も対象として生涯にわたり専門性を発揮できるような支援を行っている。

まずはキャリア形成を支える取り組みについて。同社の人事機能を担っているNECマネジメントパートナーの大西洋人氏によると、「シニア社員に限らず、若い時から会社と社員がWin-Winになるようキャリア支援の取り組みを行っている」という。その柱となるのが「ライフタイムキャリア・サポート」と呼ぶ一連の施策だ。いくつか内容を紹介する。

30、40、50歳に達した翌年度には、キャリアだけでなく健康やマネーの観点からも自身のこれまでの振り返りや今後のキャリア形成を進めることを目的とした「ワークライフバランス研修」を受講できる。

また、同年度には、日常の業務から離れて今後の自分のキャリアのあり方を考える契機とするため、年齢に応じて連続する5、7、10日間の有給休暇を「リフレッシュ休暇」として取得することができる。

その他に、35、45、55歳のタイミングでは「キャリア小包」と称したキャリアに関する情報提供が行われ、節目ごとに自らのキャリアを考えるための施策が幅広く実施されている。

次に、希望するキャリアを実現するための制度の一つとして「人材公募制度」がある。これは、年に2回、様々な部署から人材の公募がなされ、社員は希望する業務や職場への人事異動に上司への事前連絡や承認なしにチャレンジできるというものだ。

特に中高年向けの制度として特徴的と思われる点は、45歳以上の社員が活用できる人生設計への主体的取り組みを支援することを目的とした「セカンドキャリア支援制度」である。

本制度では、「能力開発休暇」として最長1年間の有給休暇取得後に退職したり、「セカンドキャリア準備支援金」として加算金を受け取り退職するという選択が可能である。加えて、希望する場合は研修費補助や再就職支援を受けることもできる。

これらの一連の施策や制度を通じて、「現在の職場で働き続ける」「社内外の別の職場で働く」「雇用されるのではなく別のキャリアを積む」等の選択肢の可能性を広げ、自身にとって最適な選択を行えるよう、会社からの支援がなされている。

NECに限らず、企業を取り巻く環境変化の激しい今日において、同一の組織内のみにこだわってキャリアを考える必然性は薄れてきていると言えよう。能力が十分に発揮されずにくすぶり続けるのは本人にとっても組織にとっても不幸である。

それは産業界全体でも同じで、人材の流動化を通じた最適化の実現が望ましい。もちろん、会社の都合を社員に押し付けてキャリアの無理強いをするのは論外である。社員が自らの意志で最適な選択を行える環境を整えることが、組織としてできることの一つなのかもしれない。


筆者

栗林 裕也
日本生産性本部 人材開発コンサルタント

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