第3回 進化するウォシュレットでグローバル展開加速 TOTO

連載「ミライを変える革新力」③ 進化するウォシュレットでグローバル展開加速 TOTO

3月下旬、ドイツ・フランクフルトで開催された世界最大規模の国際見本市「ISH2025」。TOTOは、温水洗浄便座ウォシュレットと便器が一体となった商品(タンクレストイレ)の最上位グレード「ネオレスト」や関連商品の海外向け商品に関してカラーバリエーションを強化し、水回り全体の空間コーディネートを提案した。

「おしりを洗う」新しい生活習慣への挑戦

「ウォシュレット」は、1980年の発売から45年。TOTO株式会社の登録商標だ。「おしりを洗う」という新しい生活習慣への挑戦だった。それを可能にしたのが、20代を中心としたメンバーたちの気力と体力、チームワーク。自分自身が実験台となり、正確な場所に湯を当てるために、便座の中央に針金を張り、狙った位置に紙を貼って数値化した。洗浄水の温度については、0.1℃ずつ温度を上げては自分の体にあて、適切な水温を導き出した。
多くのモニターが必要だった。開発チームの熱意にのべ300人以上の有用なデータが集まった。洗浄する温水は38℃、便座の温度は36℃、乾燥のための温度は50℃、ノズルから噴出する噴水角度は43度といった「黄金比率」が定まった。
温水を適温に維持するためには、温度の変化を素早く正確に感知し、必要な制御を即座に行う技術も必要だった。開発者が導き出した答えがICによる制御。しかし、精密機械のため、温水がかかると、漏電の可能性もあった。「開発者たちは、風雨にさらされながら、点滅する交通信号機をヒントに、ICを樹脂カバーで覆い、この問題をクリアした。常識にとらわれない柔軟な発想と新商品に懸ける熱い想いにより、ウォシュレットが誕生した」(TOTO広報部の山崎明子氏)。

節水技術と除菌効果の進化は続く

トイレの進化は続く。TOTOウォシュレット開発第一部部長の檜皮康一郎氏は、ウォシュレットのノズル、便器のボウル面、便座の裏面など、トイレのきれいさを保つ「きれい除菌水」の開発に携わった。「『きれい除菌水』は、水に含まれる塩化物イオンを電気分解してつくられる除菌成分を含む水で、薬品や洗剤を使わず、水からつくられる。時間が経過すると普通の水に戻るので環境にもやさしい。エコと快適さの両立は、TOTOならではの技術」と話す。霧状のミストにして、いかに水量を少なくするか、ミストをどの角度で噴射すると効果的か、実験を繰り返した。
便器洗浄では、渦を巻くように流れる「トルネード洗浄」が、少ない水で効率的に便器ボウル内を洗浄する。1回の洗浄で流す水の量は2002年当時8リットルだったが、いまは3.8リットルにまで減少。一方、ウォシュレットも、少ない水できれいにおしりを洗うニーズに対応してきた。
流速の異なる水を交互に連射しておしり洗浄を水玉吐水にする「ワンダーウェーブ洗浄」で節水を実現。現在では水玉に空気を含ませて大粒化し、おしり洗浄のたっぷり感をさらに向上させている。

「ISH2025」のTOTOブース。
「ISH2025」のTOTOブース。独自のクリーン技術と、
海外向けに強化したカラーバリエーションを中心に展示
「ISH2025」のTOTOブース。
ウォシュレットの技術革新を進めるウォシュレット開発第1部
部長の檜皮康一郎氏(TOTO提供)

デザインなど各国のニーズにあわせてグローバル展開

TOTOは、米国、欧州、中国、アジアなどでグローバルに展開する。インバウンドの回復で外国人が日本でウォシュレットを使う機会が増えている。ウォシュレットの清潔さと快適さは好評で、帰国したらつけたい、との声も多いという
檜皮さんは、ベトナム工場で開発を担当した。「日本のトイレの機能はナンバーワンだと思う。テクノロジーの開発を先頭で続けながら、デザインなどを地域のニーズにあったものにしていくことで、さらにグローバル展開を進めたい」。
トイレは、どこまで進化するのか。
TOTOは、「きれいと快適・健康」「環境」「人とのつながり」を重要課題としている。「健康」のキーワードでは、センサーによる便の性状計測で、スマートフォンのアプリに計測結果と健康習慣に関するレコメンドが伝わる商品を開発中だ。 未来のトイレは、未病対策や健康維持にもつながる。

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