第4回 QRコードで社会や産業の課題を解決 デンソーウェーブ

連載「ミライを変える革新力」④ QRコードで社会や産業の課題を解決 デンソーウェーブ

4月13日に開幕した大阪・関西万博。連日多くの人々で賑わっている。入場者ゲートや各パビリオン、イベントは専用スマートフォンアプリの画面に表示したデジタルチケットのQRコードをかざして入場する。
QRコードは、世界中に広がっている。開発したのはデンソーだ。1994年に特許が出願されて30年以上が経った。
当時、自動車産業の製造工程や小売業・物流業の在庫管理などでバーコードによる自動認識システムが活用されており、デンソーも製造工程の効率化を中心に自動認識事業を展開していた。1980年代から90年代にかけてのインターネット時代の到来を背景に、コードの大容量化が求められ、縦横方向にデータを持つ二次元コード開発が始まる中で、デンソーとして、自動認識事業における二次元コードの可能性に着目し自ら開発することを決めた。

印刷物調べ上げ、試行錯誤の連続

四角形のQRコードの三隅に「回」のような形の印がある。これを「切り出しシンボル」と呼ぶ。印刷物の中からコードの存在を読み取るものだ。
開発の中心メンバーだった技術者の原昌宏氏は、「バーコードと同等の読取速度を確保するのに苦労した。コードの隅に『印』を付けることに気づいたが、具体的な形を見出すため、数え切れないほど、さまざまな印刷物を調べた」と振り返る。同じ形状の図形がコード近くにあった場合、正しく認識することができず、世の中の印刷物にもっとも表れにくい比率を見つけ出す必要があったからだ。原氏ら開発メンバーは、多数の印刷物の文字や図を調べ上げ、ついに世の中の印刷物に表れにくい比率を見つけ出した。それが「1:1:3:1:1」だった。QRコードの「切り出しシンボル」の白黒の比率は、どんな方向からみてもこの比率になる。
原氏と当初から開発に参画した渡部元秋氏も、「当時は相当長い時間かけていろいろと試した」と言う。独自の比率を持つ印を四角形の三隅に配置したことが、性能と見た目の最大の特長となった。
普及のため、コードに関する特許を無償提供。そうした中で、2000年代初め、携帯電話のカメラでQRコードを読み取る技術が開発され、一気に広がった。2001年に、QRコードを含む自動認識事業や産業用ロボット事業などがデンソーから分離する形で設立されたデンソーウェーブのもとで、さらに進化が続く。

QRコードを活用したホームドア開閉

東京都営地下鉄浅草線の新橋駅。列車がホームに止まると、列車のドアと同時にホームドアが開く。列車のドアガラスには16センチ四方のQRコードが貼ってあった。ホームドアの上部には三つのカメラ。列車が到着すると、ドアのQRコードをカメラが読み取り、ホームドアが開くシステムだ。東京都交通局から打診され、開発に参画。日照変化の激しい環境下でも確実に読み取れる専用コードと、その読み取り技術を原氏の下で学んだ技術者も参画して開発このコードを用いたドア開閉システムの開発は、公共交通機関の安全性向上に貢献しつつある。
デンソーウェーブ技術者の神戸陽介氏は開発を振り返って「従来のQRコードで重要だったのは格納情報の装置への読み込ませと受け渡し。今回の挑戦は位置情報を活用した新たなQRコードのシステム開発だった」と語る。

列車の扉に貼られたQRコード
列車の扉に貼られたQRコード(東京都交通局提供)
QRコードの特許証
QRコードの特許証。5人の開発メンバーの名前がある(デンソーウェーブ提供)

進化型が次々と登場

多様な形状・用途で使用できるよう横長にした「rMQRコード」や、イラスト、写真などが格納できる「フレームQR」など新型が次々と開発されている。
「社会や産業課題の解決に直結するソリューションを、自治体から民間企業まで幅広い顧客に提案していく」(デンソーウェーブ)。QRコードを活用した地域振興に向けた商品券事業をはじめ様々なサービスも提供、社会や企業から必要とされる技術を、QRコードの本家として開発し続ける。
<注>QRコード、rMQRコード、フレームQRは株式会社デンソーウェーブの登録商標。

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