パッケージの資源循環に挑戦! 岩本健太 TOPPANホールディングス経営企画本部部長(2024年10月25日号)

連載「続・サーキュラーエコノミーを創る」⑦ パッケージの資源循環に挑戦!

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

TOPPANグループでは「環境」をサステナビリティ経営の重点課題の一つと位置付けている。将来にわたり、あらゆる生命が存続できる持続可能な社会の実現を目指した「TOPPANグループ地球環境宣言」(1992年策定・2023年改定)を表明し、積極的に地球環境保全へ取り組んでいる。
また、その取り組みを加速させるために「TOPPANグループ環境ビジョン2050」を策定。国際社会の一員として未来を見据え、地球環境の保全に配慮した企業活動を通じ、「脱炭素社会」「生物多様性の保全」「資源循環型社会」および「水の最適利用」に貢献し、「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」の実現を目指している。
中でも、本論のテーマである「資源循環型社会」への貢献では、廃棄物のゼロエミッションを見据え、廃棄物最終埋立量や廃プラスチックのマテリアルリサイクル率の定量目標を設定することにより、全社活動として取り組みを推進している。
さらに、中期経営計画のキーコンセプトを「DX(Digital Transformation)」と「SX(Sustainable Transformation)」として、多岐にわたる事業で様々な取り組みを行っている中から循環経済に関連する具体例を紹介する。

サーキュラーエコノミー確立への貢献

TOPPANグループでは、主力事業の一つであるパッケージ関連事業を起点に、プラスチック資源循環のサプライチェーン全体に対して幅広いサービスを展開している。
開発・設計・製造・販売における場面では、リサイクルフィルムなどリサイクル素材の開発や紙化の推進、更には従来複合素材が主の軟包装において、リサイクル可能な包材を目指して単一素材化の製品開発を進めている。
使用・分別・回収・再生原料化における場面では、リサイクルに関する消費者認知向上施策の促進や使用済み包材のリサイクル回収スキームの構築、そして各種リサイクル技術の開発を強化している。
CO2排出量の見える化にも20年以上前から取り組み、原料の製造・調達・リサイクル・廃棄などパッケージのライフサイクル全体を通じたCO2排出量の定量評価を行い、それに基づいた最適な包装設計を進めている。2023年には、CO2排出量算定システムの第三者認証をパッケージだけでなく、建装材・出版商業印刷物も含めて取得した。さらに、パッケージのCO2排出量を誰でも算出できるクラウド型システム「SmartLCA - CO2」の販売を開始した。
また、パッケージ起点のサステナブルブランドとして「SMARTS™」を立ち上げた。モノ(製品)とコト(サービス)の両面を扱えることを強みとするTOPPANは、パッケージで培った技術・ノウハウに、DX、SXなどのリソースを掛け合わせ、バリューチェーンに沿って川上から川下まで最適な選択肢の提供を行っている。

資源の最大限有効活用へのアプローチ

資源循環においては「限られた資源を最大限有効活用すること」すなわち「利用の延伸」も重要な焦点と考える。
TOPPANグループでは、長年、食品フードロスに着目し、包材技術面から食品の賞味/消費期限延長に取り組んできた。
具体的には、「GL BARRIER」というTOPPANが開発した世界最高水準のバリア(吸湿・乾燥・腐敗などから内容物を保護)性能を持つ透明蒸着バリアフィルムの展開である。
環境負荷の高い金属(アルミ)を使わずに高いバリア性能を実現することからCO2削減に寄与している。豊富なラインナップの中には単一素材化を実現するグレードもあり、リサイクル適性向上にも貢献。世界的に販売している製品である。さらに調理時には、金属不使用のため電子レンジで加熱でき、湯煎調理に比べてCO2を削減することが可能となる。

資源循環の社会実装にむけて

当グループは昨年10月にホールディングス体制に移行し、新生TOPPANグループとしてスタート、グループ理念「TOPPAN’s Purpose&Values」を制定した。そこには、実現すべきサステナブルな社会で、我々が永続的に果たす役割を示している。事業活動を通じて社会に文化の息吹を吹き込み、物質的な豊かさに加えて心の豊かさを提供していく。
こうした考え方のもと、政府や自治体、そして異業種や同業他社の皆さまと連携して、共に資源循環の社会実装をリードしていきたい。

著者略歴

岩本健太 TOPPANホールディングス経営企画本部部長

現TOPPAN株式会社の生活・産業事業本部でパッケージ領域の営業職として従事した後、2022年より現職へ異動。主には、パッケージや建装材から成る「生活系領域」の中期経営計画推進を担当。全社SX戦略の立案・実行に加えて、海外展開を加速させているグローバルパッケージ事業の支援も担う。また、サステナビリティ経営の強化に向けた体制構築に取り組むと共に、気候変動課題への対応やサーキュラーエコノミー実現に向けた活動を推進している。趣味は読書と体を動かすこと。

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