CEをビジネスチャンスに! 的場啓祐 埼玉県産業振興公社循環経済支援グループリーダー(2024年10月5日号)

連載「続・サーキュラーエコノミーを創る」⑥ CEをビジネスチャンスに!

現在、国内外の経済社会情勢は大きく変化しており、特に将来的な資源不足やカーボンニュートラルに対応するため、大量生産・大量消費・大量廃棄型の線形経済からサーキュラーエコノミー(循環経済、以下CE)への移行が世界的に求められている。

ワンストップ支援拠点の開設

埼玉県では環境と経済を両立するため、資源の効率的・循環的利用を図るCEへの転換を推進している。2023年6月には埼玉県産業振興公社に「サーキュラーエコノミー推進センター埼玉」(以下、「センター」)を設置。ワンストップ支援拠点として企業等からの相談に対応するほか、セミナーや研究会を開催して情報発信や事業化支援を行っている。
2024年7月末までに443件の相談を受け付けており、主に「(食品・金属・木材などの)端材や規格外品を再製品化したい」「自社製品に再生材を活用したい」といった相談が寄せられている。また、51件のビジネスマッチングを行った結果、製品化した事例として今まで廃棄されていた規格外の紅赤(さつまいも)と米麹を活用した「川越紅赤芋みつ」がある。この製品は県の研究機関である埼玉県産業技術総合センター北部研究所(以下、「北部研究所」)とセンターが連携し、製法等を北部研究所が開発。製造・販売を行う各企業のマッチングをセンターが実施した。2024年2月から販売を開始し、昨年度の規格外品による初回製造分は完売している。

県内のCE推進の取組と連携

埼玉県におけるCE推進の取組は、産業振興を所管する産業労働部と環境保全等を担う環境部が連携して取り組んでいる。企業の環境配慮の取組がCSRで終わるのではなく、持続可能な取組にするため、企業が経済合理性を確保できるよう支援し、これまで県内の中小企業支援を担ってきた埼玉県産業振興公社にセンターを設置している。
また、県では2024年度から複数の補助金を新設し、財政面からの支援を強化している。たとえば、「サーキュラーデザインリーディングモデル構築支援補助金」として、資源の循環に配慮した製品設計への見直し(リサイクルのための解体容易化、単一素材化、バイオ素材や再生材への転換等)やビジネスモデルの構築を支援するための補助金(上限2000万円)を新設し、試作開発等に要する経費を補助している。また、「食のサーキュラーエコノミー技術導入支援補助金」として、食品廃棄物等を活用した新製品の開発やアップサイクル、バイオマス発電などに取り組むための新たな設備やシステムの導入等を支援する補助金(上限2000万円)を新設した。
具体的な補助事業として、マレリ株式会社における自動車用内装部品の単一素材化・リサイクル材活用の取組や株式会社伊勢惣の規格外米麹を利用した高付加価値食品の生産などがある。いずれの補助事業も事業化を目指してセンターに在籍する民間企業OBのコーディネーターが伴走支援している。
さらに、埼玉県SDGs官民連携プラットフォームに「サーキュラーエコノミー推進分科会」を2024年6月に設置し、企業や市町村等に参画いただいている。分科会では、県内企業・市町村が連携し、使用済み家庭用リチウムイオン電池からレアメタルの回収・再資源化を検討する取組等が行われている。

センターの支援強化

CEに関心ある企業が参加する研究会を開催

センターでは2024年4月からコーディネーターを増員し、より相談しやすい体制を整えている。CEの取組は1社で完結することは難しく、サプライヤー、投資家、消費者などの理解や積極的な関与が必要になる。そのため、特にサプライヤー、消費者へのPRの観点から大型展示商談会への出展支援強化に取り組んでいる。2024年12月には「エコプロ」、2025年1月には「彩の国ビジネスアリーナ2025」、2月に「サーキュラーエコノミーEXPO」において特設ブースを設け、取組のPRを行うことでビジネスマッチング等につなげていく。
また、CEに関心がある企業が参加する研究会を開催し、新たな事業の創出を支援している。2023年4月から「食」と食以外の「未利用資源」の活用を研究しており、8月末現在、55社が参加している。2024年度は日本生産性本部SDGs推進室長の清水きよみ氏にファシリテーターを担っていただき、新事業の創出に向けて研究を進めている。参加企業からは「新たな知見の獲得ができた」「連携事業につながる出会いがあった」などの声が寄せられている。

さらに、サーキュラーデザイン(循環配慮設計)に関する研究会を新設し、10月に第1回となる研究会を開催する予定である。同研究会に参加する企業向けの試作品開発に対する補助金なども設けており、具体的な補助事業として、株式会社ルールメーカーと和光市の協働による衣料品のリユース・リサイクル推進の取組やケイワート・サイエンス株式会社の未利用コメもみ殻の高度利用技術の開発などの事業がある。
今後もセンターの支援を強化し、埼玉県におけるリーディングモデルの創出に取り組んでいく。

著者略歴

的場啓祐 埼玉県産業振興公社循環経済支援グループリーダー

  • 民間企業での7年間の勤務を経て平成25年3月埼玉県に入庁
  • 若者の就職支援や官民連携に関する業務を経験し、令和5年4月から埼玉県産業振興公社に派遣
  • 現在、「サーキュラーエコノミー推進センター埼玉」の開設など埼玉県のサーキュラーエコノミーの推進を担当
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