「 リスキリングとは何か、推進のための7つのアクション 」一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 後藤 宗明 氏

ChatGPT時代の成長産業への失業なき労働移動の実現

ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事
後藤 宗明 氏

日本生産性本部は2023年9月13日、第96期「人事部長クラブ」の9月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「人的資本投資におけるリスキリング~ChatGPT時代の成長産業への失業なき労働移動の実現」をテーマに、ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤宗明氏が講演した。


後藤氏は冒頭、海外でリスキリングが普及した背景には、技術的失業(テクノロジーの導入によりオートメーションが加速して、人間の雇用が失われる社会的課題)があり、なくなっていく産業から成長産業へ労働移動をしていくための最大の解決策としてリスキリングが注目されたと説明したうえで、日本ではリスキリングについての誤解があると指摘した。

「リスキリングとは新しいスキルを(再)習得させるということで、主語は組織で、目的語は従業員だ。個人が好きなことを学ぶ『学び直し』とは異なり、リスキリングは、DX(デジタルトランスフォーメーション)等の、組織の新しい事業戦略を担う職業能力の再開発であり、少し踏み込んでいえば、組織が実施責任を持つ『業務』だといえる」と強調した。


企業のリスキリング成功事例としては、海外ではAT&Tとリーバイス、日本では西川コミュニケーションズ(名古屋市)と石川樹脂工業(加賀市)の事例を紹介した。1906年創業の老舗印刷会社の西川コミュニケーションズは、2013年にリスキリングを開始し、業務時間の20%をリスキリングに充てて、リストラをせずに、デジタルマーケティングやAI(人工知能)導入支援企業へと変貌したという。


リスキリングにおける経営や人事の役割では、経営者が成長分野を示すことや、スキルを高めた従業員を生かす受け皿を用意することが必要だと指摘した。「自社の成長分野が示されていないのに、人事がDXやリスキリングをやれと言われて、AIの研修を実施したものの、それを生かす場所がないので従業員が忘れてしまうといったことが現場では起きている。経営者が成長分野を示して、それに対してリスキリングをすることが重要だ」と述べた。


後藤氏は今後、ジョブ型雇用からスキルベース雇用へと変化する可能性を指摘する。「ジョブ(職務)ではなくスキル(技術)のレベルで人を雇用し育てていくスキルベース雇用が米国やシンガポールで始まっている。今後は特に、『外部環境の変化に対応して自ら学習していく力』(学習戦略スキル)が必要とされる。人間とAI、ロボットが一緒に働く時代の解決策がリスキリングだ」と強調した。



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