いま必要な経営人材の育成とその企業事例

なぜ、いま経営人材の育成が注目されるのか?

日本でも、コーポレートガバナンス・コードにて取締役会がサクセッションプラン(後継者育成計画)の策定・運用に主体的に関与し、後継者候補の育成を適切に監督することが示され※1、また、国際標準化機構(ISO)の人的資本の情報開示に関するガイドライン「ISO30414」の11分類の一つとして「サクセッションプラン」の項目も設けられました※2 。
持続的な企業価値の向上を目指すため、経営を適切なタイミングで最適な人物に引き継ぐこと、また、その人材の層が最善な形で育成・リスト化されていることが、今後の企業経営の重要な要素と認識され始めています。

※1「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」
「原則4-1.取締役会の役割・責務(1)」の「補充原則4-1③」
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。
※2「ISO30414人的資本の情報開示」
サクセッションプランとして、情報開示が推奨されている指標(大企業も内部開示)は、「内部継承率(Succession Effectiveness Rate)」「後継者候補準備率(Successor Coverage Rate)」「後継者の継承準備度(Succession Readiness Rate)」の3つがある。


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経営者の要件とは?

経営者に求められる普遍的な要件

良い経営とは、企業が置かれた状況や企業としてのあるべき姿、進むべき方向性に応じて異なり、経営者に求められる要件も変わってきます。また、時代の変化に応じて、求められるものも変化するものです。その一方で、経営者である以上、共通して求められる普遍的な要件もあるのは確かです。
日本生産性本部の「人と経営フォーラム(2013-14年)」での討議から、経営者の要件として、以下のようなものが挙げられています。

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これらの経営者に求められる要件は、「当たり前」の要素の羅列にも見えます。しかし、それらには、長期の構想力と臨機応変の決断・実行力、自己の信念(強さ)と寛容さ(優しさ)等、相反する要素があります。つまり、企業経営は矛盾の連続であり、それを解決していく過程でもあり、経営者には、そうした矛盾を超克する資質が求められるということです。その意味で、経営者に求められる要件とは、個々の要素をどの程度持っているかではなく、それらを調和した全体像として持っているかということに他なりません。
経営者は、特定の資質や能力に秀でていれば良いわけではなく、様々な資質・能力がマルチで求められます。複雑で多様な環境や組織に対処するための資質・能力面での多様性が求められるということです。
以上のようなことを考慮しながら、企業のあるべき姿、進むべき方向性を、企業理念やビジョンに沿って再検討した上で、自社に求められる経営者像を確立する必要があります。


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ダイセル(化学)における経営人材育成の事例

次世代リーダー塾

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ダイセルは、人材育成の基本的な考え方として、「人の成長こそが会社の成長である」「『人』を信頼し、大切にする会社風土をベースに、全社員がそれぞれの立場で役割と責任を認識して人財育成に取り組む」を掲げ、新入社員研修、モノづくり研修、キャリア研修、専門能力開発、技術者人材育成プログラムなど、多彩な人材育成プログラムを設けている。
昨年度からは、優秀な人材が適材適所でリーダーシップを発揮し、早期に部門を率いるリーダーに成長していくことを期待して、若手管理職層を対象とした「次世代リーダー塾」を開催している。


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ハウス食品グループ(食料品)における経営人材育成の事例

ハウス経営塾

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ハウス食品グループでは2012年から、次世代経営人材育成を図る「ハウス経営塾」を開催し、今期(2021年8月~2022年3月)で10期を迎えた。ハウス食品グループ本社の浦上博史代表取締役社長が「塾長」としてフルコミットしているほか、役員陣が折々で経営塾全般に関与しており、グループを挙げた次世代経営人材育成の場と位置付けている。
「経営塾は2012年の10月にスタートしたが、その年の4月からの第4次中期計画では、次の成長に向け、持株会社体制を目指すこと(2013年の10月に持株会社体制に移行)や、売上規模で3000億円を目指せる組織体制をつくることが打ち出された。そうしたグループの成長を支える人材を育成することが経営トップの大きな経営課題となっていた」(大澤善行・ハウス食品グループ本社常務取締役)という。


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ANAグループ(空運)における経営人材育成の事例

グループ力強化に向けた人材育成

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ANAグループでは、「人財こそが最大の資産であり、差別化の源泉」との考えに立ち、グループ各社が連携して、採用―育成―評価・処遇―教育・研修を戦略的に推し進めた人材育成を行っている。2016年度には「アドバンスキャリア制度」を導入し、集合研修、戦略的ローテーション、個別研修などを組み合わせた育成の仕組みを構築するなど、グループ力強化に向けた人材育成を促進している。
ANAグループは2013年度から、グループ経営の強化や、各事業会社の自律的経営によるグループ運営の推進などをねらいとして、持株会社制へ移行した。「持株会社化によって、グループが一体となって運営する体制になったが、グループの成長戦略実現の原動力となるグループ各社の発展とグループ運営体制の深化に向けて、グループの事業を牽引する人財の育成が求められてきた。グループ各社でコアとなってグループの事業を牽引していける人財を選抜し育成しようと、『アドバンスキャリア制度』を導入した」(河村光章・ANAホールディングスグループ人財戦略部担当部長)という。


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