Withコロナ Afterコロナにおける目標設定・人事評価のあり方は?

新型コロナウイルス感染症の影響により、今年度の人事制度の運用について見直しを迫られたり、そもそも人事制度の運用自体が中断している企業は少なくないのではないか。


「コロナ禍の人事マネジメントに関するヒアリング調査(上場企業30社)」(クレイア・コンサルティング実施)によると、今年の4月13日から4月20日の調査段階において、新年度の目標設定について、「例年通り実施予定」と回答する企業は全体の約65%に留まり、「特別ルールで対応予定」「未定」と回答した企業が約30%にのぼる結果であった。会社全体の新年度の業績の見通しが不透明な中、各従業員の目標設定をどのように進めるべきか多くの企業がその対応方法に苦慮している様子がうかがえる。


また、こうした状況を踏まえ、今後の人事評価の運用についての不安も増えてきている。なぜなら、今後はテレワーク(以下、在宅勤務を含む)の普及が急速に進み、評価者(管理職・上司)が被評価者(非管理職・部下)の仕事ぶりを把握することが困難となり、適切な人事評価ができなくなると考えるためである。あしたのチームが実施した調査によると、テレワーク時の人事評価が難しいと感じる理由について、「勤務態度が見えないから」(72.6%)「成果につながる行動(アクション数、内容等)を細かく把握しづらいから」(67.1%)「勤務時間を正確に把握しづらいから」(45.2%)が上位の3回答となっている。また、テレワークに適していると思う人事評価制度については、「成果(数値結果)をもとにした評価制度」(77.0%)「プロセス(行動量・質)をもとにした評価制度」(57.0%)「360度評価」(32.0%)が上位の3回答となっている。同じ職場で顔を合わせて仕事をすることで評価されてきた従来の働き方に対する再考が求められているようである。


個別企業の取り組みとして、カルビーではテレワークを本格導入する前に成果主義の人事制度に移行し、成果を求める効率性を重視し、在宅の働き方は社員に任せることとしている。日本マイクロソフトも同様に、時間管理ではなく成果で評価をすることとしている。また、イトーキはテレワークに伴い業務プロセスの評価が難しくなったことを踏まえ、時間管理と上司部下のコミュニケーションをもとに評価する人事制度の変更を検討している。


このように人事評価制度のあり方については、今後テレワークが普及する中で仕組み自体の見直しが図られる可能性が高いが、まずは現時点の人事評価制度を踏まえ、コロナ禍においてどのような対応をすべきか考える必要がある。

当年度の目標設定

目標設定を実施するに際し、今年度は事業の不透明感の高まりから、そもそも組織目標(売上・利益)を確定させ、部門への目標にブレイクダウンすることが困難となっている企業が多いのではないだろうか。一方で、何も目標が設定されない中で社員が各々のやり方で仕事を進めるのは、組織にとって非生産的になってしまう可能性が高い。


こうした状況では、四半期または月次でもって組織目標を立て、部門へのブレイクダウンを実施することが望ましいのではないか。通常、目標設定と評価の期間は当該事業年度(1年)または事業年度を上期と下期に分ける半年間としている企業が多い。こうした場合に、目標設定と評価の期間を柔軟に変えることで、コロナ禍に対応することが望ましい。


仮に、四半期または月次での成果が十分でなかった場合にも、その後の目標設定と評価によってはリカバリーすることができる可能性が担保されれば、社員のモチベーションの維持・向上に資するものと考える。


最も避けたいことは、コロナ禍においても例年通りの目標を設定し、社員が到底目標達成など不可能だと捉えて、仕事に対するやる気を失ってしまうことである。目標設定について、より現場の社員への影響を踏まえた、短期的で柔軟性のある目標設定に取り組んでみてはいかがだろうか。

これからの人事評価に備えて

今後テレワークが普及することを前提に、同じ職場で顔を合わせて仕事をすることで、上司が部下の行動を観察し評価するモデルが通用しなくなることを念頭に置かなくてはならない。行動・プロセスが見えない(把握できない)のであれば、成果目標としてのKPI(Key Performance Indicatorの略:重要業績評価指標)を設定し、その達成度を評価するのが良いと考える企業が多いのではないか。


これを機能させる前提として、成果目標が定量的に設定可能であり、かつ社員個人の裁量・責任の範囲で取り組むことが可能である必要がある。これは会社におけるポジション(職位)や、業界・職種により状況は異なる。まずは、自社が成果を中心に評価する仕組みがフィットするか、具体的な成果指標を踏まえ検討する必要がある。


一方、成果指標だけでは評価することが困難な場合にはどうすればよいのか。成果以外に評価の対象となるものは、行動・プロセス・能力発揮などが挙げられる。では、テレワークにおいて、行動・プロセス・能力発揮はどのように把握すれば良いのであろうか。コロナ禍で急速に普及したオンライン会議は、貴重なツールになると考える。発言や提案内容などを通じて、仕事に対する取り組みを把握することができる。また、メールや社内チャットツールを活用し、取り組んだ内容は何か、どの程度進捗したかを把握することも重要である。業務日誌や定期的な報告を習慣化している企業であれば、管理や報告のツール以上に、運用ルールを見直し、コミュニケーションのツールとしての活用も期待できる。自社の仕組みの中で、社員の仕事への取り組みを対面でなく把握する方法を検討することが求められる。


尚、上記のように、業務の取り組みの把握さえ難しい場合は、どのように対処すればよいのか。対応として、今後の面談において上司は部下に対してどんな取り組みをしたか聞き、部下は根拠を持って説明することで、人事評価に繋げていくことが必要と考える。従来の上司が部下の仕事を把握し評価するという考え方から、部下が上司に対して自身の仕事ぶりについて説明し、評価についても交渉するやり方が求められてくるのではないだろうか。部下として、上司が仕事ぶりを見てくれているというマインドを改め、必要に応じて上司に仕事ぶりをアピールすることが必要になる。ただし、こうしたやり方を浸透させていくためには、人事評価のあり方について上司だけでなく、部下をも巻き込んだ教育研修の場を設け、理解を深める仕掛けづくりは必要不可欠である。


テレワーク下において、まずは上司が部下の仕事ぶりについて、いかに把握するかを試行錯誤の中で見つけなければならない。また、こうした現場の状況に応じて、人事部門が支援者として果たす役割は極めて重要であると考える。上司・部下との間でどのような課題が生じているかを把握し、「目標設定ができない」「人事評価することができない」という意見に対して、どのように取り組み、改善策を見出していくかフォローすることが求められている。

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筆者略歴

小堤 峻(おつづみ・しゅん)
日本生産性本部 雇用システム研究センター 研究員

大学卒業後、信託銀行で営業・企画業務に従事。2015年1月に日本生産性本部入職。担当領域は、民間企業および学校法人を対象とした人事制度設計支援、人事・労務の教育研修の企画・運営。中小企業診断士・MBA(経営学修士)。

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