論争「生産性白書」:紙面座談会・今こそ進めよう、生産性改革
生産性改革のあり方に関する議論のベースとなる「生産性白書」を今後、国民各界各層にどう浸透させるべきなのか。白書作成に携わった日本生産性本部生産性常任委員会委員長で地球産業文化研究所顧問・東洋大学総長の福川伸次氏、同委員会委員で帝人相談役の大八木成男氏、同委員会委員で全国労働組合生産性会議(全労生)前議長の野中孝泰氏に聞いた。
白書刊行の意義
福川氏 日本生産性本部の65周年の事業として、生産性白書を刊行したのは、時宜を得た企画だったと思う。生産性運動の歴史は長く、その始まりは1955年に遡る。日本生産性本部を所管していた通商産業省(現・経済産業省)企業局第二課長時代の1970年前後を振り返ると生産性運動は、どちらかというと単純な議論だった。当時、日本経済は高度成長で、設備投資や技術革新により、いかに産出量を増やすかが生産性向上のメーンテーマだった。その後、経済構造が高度化・複雑化し、生産性を高める方法は多種多様になった。
21世紀に入ると、情報化の進展が加速し、同時に新興国の追い上げが勢いを増した。なかでも、中国が非常に速い速度で経済成長を実現し、国際経済の状況は大きく変わった。この65年の間に生産性に対するアプローチ、生産性運動に対する評価も多様化したわけで、この時点で生産性運動を再評価し、新しい着眼点で見直してみる意義は大きい。
時代が昭和から平成になり、21世紀に入ってから、国際競争の舞台で日本のモノづくり能力や生産性が低下してきた。これから、新しい形で付加価値をどう高めていくかが問われている時期であり、日本経済や生産性運動を総括することは大事である。期待した分析が十分なされたかは議論の余地があるが、タイミングとしてはまさにその時であったと思う。
大八木氏 戦後75年が経過した。戦後復興が始まったのは朝鮮戦争の特需がきっかけで、日本経済は高度成長へと突入する。生産性運動65年の歴史は、日本の戦後復興の歴史と重なるわけで、当時の世界経済は大量生産の工業化の時代だった。
65年後の今の足元を見ると、日本経済は低成長、低金利、低インフレの「3低」にある。世の中が大きく変わっているにもかかわらず、成長の姿が見えていない。経団連は「Society5.0(ソサエティ5.0)」、経済同友会は「Japan2.0(ジャパン2.0)」と高度情報技術社会に向かう時代のコンセプトを発表したが、日本生産性本部の「生産性白書」は、生産性革新の課題を具体的に提示した意味で挑戦的な試みである。
日本経済の運営に責任ある労使を含めた産業界の人たちが、直面する社会課題を共に認識し、またその課題をどう解決していくべきなのかについて議論する共通の場を持てたことは貴重な機会だった。議論した内容を「白書」として求心力のある形で世に問うことは極めて大事だ。
今回議論に参加したのは、活動のドメインが異なる多様な価値観を持つ人たちであり、経営、労働、行政、学界を代表する方々が日本経済や生産性運動の課題を具体的に議論した。課題解決のためのオプションや、具体的な解決手法にまで踏み込んだ書き方をしていないが、政策課題を網羅的に整理し、広く議論を興すという意味で、非常に素晴らしい白書だと思う。
白書の中で、デジタル社会への移行を第一義的に訴えていることが重要である。デジタル化を生産性改革のど真ん中に据えることによって、生産性を算出する計算式の分母よりも、分子のサイドに重点を置き、新しい産業や新しいサービスを生み出すことに焦点を当てることができた。
野中氏 変化が求められる時代、持続可能な日本社会の再構築という一大事業をやり切るには、すべての国民の理解と協力が必要だ。価値観が多様化する時代でもあり、国民一人一人が迷った時にも立ち戻れるような普遍の理念、考え方が必要になる。
白書はその位置付けを担うべきものだし、そういうものにしなければならない。そしてこのことは、混迷する世界についてもあてはまるのではないだろうか。日本が手本を見せる必要があり、その気概を持って取り組む価値がある。
「生産性三原則の徹底が世界を救う、日本を救う」と本気で思っている。昨年のダボス会議において「これまでの株主重視から全てのステークホルダー重視の資本主義の必要性」が論議されたと聞く。まさに成果の公正分配の思想であり、「我が意を得たり」の心境である。
世界の動向が、自国最優先の考え方の浸透、分断した社会の深化に進む中で、地球人としての持続可能な世界の構築に向けた協議・協力が必要なのは明確である。持続可能な世界の実現には、共存共栄の道しかない。
日本は、生産性三原則を生み出した国である。その日本が、大変な状況に陥っており、この困難を発展の基礎にしなければならない。生産性本部結成65周年、全労生結成60周年の節目を契機に、生産性運動の原点に立ち返ることの意義は大きい。持続可能な日本を再構築するために、今こそ生産性三原則の徹底が有効であり、衆知を集め策定した「生産性白書」の意義は大きい
白書の議論について
福川氏 「生産性」という概念が高度化・多様化していること、加えて情報化が進展していることによって、生産性の上昇の実現方法が多種多様になっている。どういう視点で生産性を捉えたらいいのかが議論の中で大きな焦点になった。
生産性常任委員会や生産性白書小委員会の委員の構成は非常に多様で、さまざまな視点が反映できるように工夫されていた。労使を含む産業界からはモノづくりの企業からサービス産業まで多種多様で、研究者も経済学的な研究から法律的な視点・専門的な能力が高い人、サービス産業の分析に秀でた人、産業政策史・産業史など歴史的な分析に長けた人もいた。
さまざまな視点から議論が展開されたことは有意義であった。多様な角度で議論でき、委員会は極めて活発で建設的だった。
特に印象的だったのが、労働組合の委員が非常に前向きに生産性を捉えていたことだ。一昔前の労働組合の運動は、やや賃金に焦点が当たりがちであった。参加した労働組合の代表者は技術的な視点、経営的な視点に関しても積極的に発言し、議論に深みを持たせた。
労使対決の構図を脱皮して、新しい労使協調の姿を示した。生産性の「解」を見つけ出すために労使がどうブラッシュアップをしなければならないか、労働者という立場から何をすべきかを前向きに発言した。労働組合でも「生産性」が重要な課題となっていると感じた。
1960~70年代の高度成長期は、成果の分配が賃金だけに焦点が偏っていたが、今は、より高度で複雑化した社会で、労使関係も有機的に生産性を考えなければならない。白書には、そのような労使の意思が反映されている。
白書の分析については、今後、さらに検討し、反省すべき点は多々あると思う。情報化の進展が加速化したときに、生産性を労働投入と産出の関係だけで見るのではなく、多様化し、複雑化している経済構造をどう反映するのか、また、情報に関する判断能力や評価、データ処理、データの読み方などの観点で、生産性を計測することを考える必要がある。
生産性の向上に対して、どういう視点で取り組まなければならないのかという問題意識や方向性を打ち出すことはできた。これをひとつの足掛かりにして、今後は、多様化、複雑化、高度化した社会経済をどう評価し、反映するのかの議論を十分に掘り下げる必要がある。
大八木氏 生産性の概念について深める議論ができたことは意義深く、印象的だった。経済人は生産性と言えば単純に分子・分母の関係と結び付けがちだが、白書の議論では、これは「社会の改善運動である」という捉え方をしている。新しいテクノロジーで人類の進歩を追求していくことが生産性運動の基本精神であることを皆さんに知ってほしい。
いくつかの論点をご紹介する。一つは、テクノロジーの進歩と労働の疎外や格差への懸念である。産業の歴史を通じて、技術革新は社会変革を推し進める反面で、省力化を通じて労働疎外や格差社会を生み出す懸念がある。
一方、経済社会の生産性革新の面からは革新的テクノロジーの活用は必須であり、論点はすべての人が技術革新の恩恵を被ることができる仕組みをどのように社会装備できるかになる。高度情報技術社会に向かって、改めて生産性三原則を確認し、労使の協調・協議と公正な分配原則を確認することで新産業革命を積極的に進めることが共通の善であるとの価値認識を持つことができた。
二つ目は、「デジタル化」の経済学的価値評価についてである。モノがあふれる成熟期の先進経済社会が長期的経済停滞に陥っている。期待された中央銀行の量的金融緩和策でも低成長・低インフレ・低金利の「3低」から抜け出せない。デジタル技術はバーチャル世界を活用してリアルな世界の効率性をエンハンス(強化・向上)する。使用効率の悪かった人、モノ、金、情報を活性化する装置になるので「デジタル革命」には大いに期待したいものだ。だが、経済学的には「デジタルがGDPに貢献しているとのデータがない」という指摘も受けた。日本は30年間GDP統計上は伸びがないが、デジタル化のおかげで便利で豊かになったという感覚があり、もどかしい。
5Gの時代、AIやIoT、ロボティクスが至るところで活躍し、社会の無駄を省き、省人化も進み、生産性は上昇する。GDPが人々の豊かさをつかめなくなったと理解した方がいい。今後の検討課題だろう。
野中氏 誰のため、何のための生産性運動なのかを常に考えることが重要だ。日本は今、大きな変化の時代を迎えており、どの方向に進んでいくのか進路を決めなければならない極めて重要な時期にある。まずは、目指すべき社会像を共有することが大事だ。私たち現役には、新しい時代の日本を切り拓く使命があると考えている。変化の波に押し流されるのではなく、主体性を持って変化に挑戦する必要がある。そのためには、「変化の先に何を見据えるのか」というイメージを持つこと、また共有することが大事だと思う。
目指すべき社会像を表すキーワードとして、「持続可能な社会の再構築」を挙げたい。日本は人口減少・超少子高齢社会、そして生産年齢人口が毎年減少する社会であり、世界では類を見ない人口動態の国である。そのことに加えて、日本社会を本来支えなければならないはずの雇用労働者のうち、その4割近くが非正規となっており、社会の持続性という点で大変危惧している。
これまで右肩上がりの中で築き上げられてきた制度や仕組みが成り立たなくなっている。例えば、社会保障の給付と負担の問題、生産性の問題、財政の健全化の問題など課題は山積みである。従って、人口減少下における日本社会の最大課題は「持続可能な社会の再構築」であり、未来への責任と言っても過言ではない。
二つ目のキーワードは「人間大事の日本型デジタル社会」である。私たちがこれから向かおうとする社会は、「人が活きる、人を活かす」社会であり、企業であり、職場であってほしいと願っている。日本は、一人一人の懸命な働きによって成り立っている国である。だからこそ、働くことを通じてのみ得られる「働きがい」ということをもっと大事にする必要がある。
そのことは、必ずや日本の競争力の向上につながる。一方、デジタル技術の進化は加速して訪れている。人と機械の共存のあり方を深く考える必要がある。人間がより人間らしく生きる社会の創造を目指したい。働く人がその気になり「挑戦してみよう!」と前向きに思えることが必要だ。人を中心に据えたデジタル社会を日本型として目指したい。
新型コロナの感染拡大
福川氏 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、白書発表の時期が半年ずれ込んだが、第1部の第1章に「新型コロナ危機の克服と生産性向上の道を探る」を設けた。コロナの影響に関する分析やポストコロナに向けた生産性改革の方向性を示すなど、新たな視点が加わり、白書に厚みを持たせることができた。
いつまでコロナが続くかわからないが、感染症が社会全体、または企業経営に及ぼすインパクトを目の当たりにし、国連開発計画(UNDP)が1994年に取り上げた「人間安全保障」という概念を強く意識せざるを得ない。
2015年9月の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に関しても、まだ標語を唱えている段階だが、環境保全や持続可能性という意識を持つようになってきたことは非常に大事だ。生産性を考える場合にも、人間安全保障、または健康保障の要素を取り入れた経営改革や政策展開という視点ができた。
政策展開でいう視点では、世界各国が経済を閉鎖するロックダウンの仕組みと経済活動を刺激するという二つの政策をどう組み合わせるかという課題に直面し、苦悩している。経済不況を恐れて、早く経済刺激にアクセルを踏んだ国が、感染拡大の再発で、またロックダウンに追い込まれている。政策当局者や企業経営者は、この政策の組み合わせの最適解を求めて、手探りを続けている。
感染症は人類全体の問題として、投げかけられているわけで、各国政府は決して国際紛争の種にしてはいけないと思う。米中が、批判し合う状況は、国際社会としてはいいことではない。もっと、協力・協調していくべきだ。
大八木氏 コロナ禍で非対面・非接触という難題を突き付けられた。もし、デジタルの力がなかったら、この社会は全く機能しなかったかもしれない。多くのサービス産業が苦境に陥ったが、その中でも、集客力を維持し、稼働率を高めて健闘しているのは、デジタル技術の実装化を進めてきた企業だ。
生産性改革で大事なことは、現実に起こっている変化をしっかり正しく見ることにある。コロナは、経営者にとっての「気付き」をもたらす。また、サービス産業において、デジタルイノベーションの重要性が極めて高まっている。日本サービス大賞の受賞企業もデジタル技術で新しい需要を作り出した企業が軒並み受賞している。
感染症のリスクが顕在化する事態は誰も想定していなかった。しかし、ダボス会議では毎年、疫病をリスク10項目に入れて、警鐘を鳴らしていたのだ。コロナ禍が一気に世界中に広がった現実を見て、グローバリゼーションの広がりとともに、地球環境に関する危機意識をあたらめて自覚させられた。
高度情報技術社会における環境問題は更に高度化する。カーボンニュートラルへの意識の高まりは、世界中の企業経営者が二酸化炭素(CO2)の大幅削減に動いている事実からも明らかだ。石炭火力発電所の新設への融資は敬遠され、クリーンエネルギー供給の観点から再生エネルギーを含めた総合エネルギー政策が見直されている。
さらに、コロナ禍で生命科学の重要性と進歩に世界中が注目している。最先端のバイオテクノロジーを活用したワクチンの開発が世界中で目白押しだ。この動きは人類にとって難病とされてきた疾病治療へのチャレンジを加速させると予想する。
環境問題への意識の高まりや生命科学の進歩への気付きが人類を進歩させる大きな起爆剤になる可能性がある。
野中氏 コロナの感染拡大により、私たちの生活や仕事は一変した。緊急事態宣言が発出され、人とモノが止まった社会の体験を通じ、普段何気なく生活を営んでいる「社会のあり方」についても考える機会にもなった。私達一人一人が「社会」とつながっていること、そして「社会」の構成員としての役割を果たし、また責任があることなどについても考えた。多くの人が外出を自粛し、在宅勤務をしたが、その最中も医療従事者のように他人の命を救うために闘っている人たちがいる。人々の生活を守るため懸命に働いている人たちがいることも実感した。
また、デジタル社会の到来がより加速した。デジタル化が私たちに投げかけているのは「従来の産業・企業の枠を超えた発想力」と「グランドデザインの構築力」である。問題対処型ではなく、課題解決型の発想が大事であり、産業構造の変化や雇用構造の変化などに対して、受け身でなく、むしろ先行した論議が必要になっている。その場の創設を急がねばならないこと。また、人材育成や専門人材の確保も急がねばならないこと。白書の提言は、より危機感を訴える形になった。コロナ後の社会創造に向けた考え方としても意義があると思う。
生産性改革に向けて
福川氏 「生産性」という指標は分母の投入量と分子の産出量・付加価値で計算しているが、それぞれの中身については、さらに詳しく分析していかなければならない。経営能力の問題、労働者の質の問題、教育の問題、政策の問題なども検討していく必要がある。
生産性の評価に至る全段階で、いくつかの諸要素を細かく分析する手法を作る必要がある。「生産性が低いから改善しよう」と労働組合や経営者に呼び掛けてみても、「ああそうですか」ということで終わってしまう。
改善を要する場合は、どういう要因がありうるのかを掘り下げることが重要。技術的な要素もあるし、労働者の質の問題もある、社会意識の問題もあるかもしれない。例えば、市場調査の評価や手法にはAI(人工知能)やビッグデータを活用する動きが出ている。テクノロジーを活用することで、生産性の議論を掘り下げていくことが可能になっている。
生産性向上を可能にする経営改善のために何をすべきなのか、従業員はどういう形で能力を高めるべきなのか、オフィスの設計はどうすればいいのか、働き方をどう変えたらいいのか、などの課題について日本生産性本部が研究し、解き明かすことが大事。生産性に関するシンクタンクの機能を強化していくことが求められている。
振り返ってみると、高度成長期の産業政策は単論理で展開できた。ここまで社会経済が複雑化してくると、人間はもっと賢くならなければならない。それには、知的活動を先導する役割が求められる。日本生産性本部が自らの知的充実を図り、その先導的役割を担っていくことが求められていると思う。
大八木氏 現代の変化の潮流は、グローバル化、デジタル化、多様化にある。この潮流はコロナ以前から変わらないし、その流れが加速している。日本の生産性改革を考えるとき、国も企業もデジタルトランスフォーメーションを第一義として臨むべきだ。例示するまでもなく、日本社会全体の経済的停滞の多くの原因がデジタル化の遅れにあるのではないか。製造業、サービス業を問わず産業における生産性改善の余地が大きなことは誰の目にも見える。人口減少・高齢化が進む日本の未来を考えるときに、人口減少・高齢化に付随する多くの社会経済的な課題を、デジタル革新による生産性改善で対応していけるかが勝負となる。企業も同じことで、すべてのステークホルダーとの間で常にエンゲージメントをしながらデジタル革新を断行していかない限り生き残ることはできないだろう。
生産性改革には、新しい技術やビジネスモデルによる継続的な事業創造が必須であるが、企業や社会において意識改革が求められる。
第一は、技術革新の主役は、AIやロボットでなく「生活者」たる人間であり、技術革新の目的が人の心を豊かにする「ヒューマンセントリック(人間中心)」の世界の実現にあること。製造業、サービス業のいずれの事業領域においても、生産性革新を通じて、「生活者」が満足できるソリューションが提供されているかどうか、生活者はより豊かな果実を手にしているかの視点で見たい。第二は、市場の変化に適応して自ら変化し生き抜いていく勇気を持つこと。第三は、このような意識改革をサポートする社会全体の仕組みを見直し続けることが必要である。
野中氏 生産性白書を、よくまとまった白書ということで終わらせてはならない。生産性運動が、国内で正しく理解され、また考え方が広く浸透しているとは思えない。現状をブレイクスルーするためには、生産性運動を本気で再起動させなくてはならない。そのためには、当事者が、熱意と使命感を持って取り組むことが大事であるとともに、このうねりをもっともっと大きくしていかねばならない。まずは、生産性運動・生産性三原則の浸透(拡大)に向けた取り組み強化が必要である。
提言内容を具体的な行動に結びつけるため、また鮮度を落とさないために中期計画に落とし込み、PDCAを回す仕組みを入れたらどうか。進捗を確認し合い、共感し共鳴する仲間を増やし、持続可能な日本社会の再構築に向け、緊張感とスピードを持って着実に取り組む環境づくりも必要だ。
一方で、政労使による協力・協議体制の実現に向けた取り組みを急がねばならない。この一大事業を成し遂げるには、繰り返しになって恐縮だが、「日本が目指す社会像を示すこと」「社会づくりの基本となる考え方に生産性三原則を据えること」そして「国民一人一人が挑戦する気概を持ち努力すること、またその環境を整備すること」が必要だ。そのためには、学識者も入れた政労使の枠組みを早期に構築し、危機意識を共有し、提言内容の具現化に向けた取り組みを加速する必要があると考える。
そして、政労使の枠組みでの協力・協議を踏まえて、生産性三原則を踏まえた日本の将来像とその実現に向けて、国民に対して強いメッセージを発信することが必要だ。今の日本や世界を見た時に、真の生産性運動には、その価値があると思う。
*2020年12月10日取材。所属・役職は取材当時。