徒然なれど薑桂之性は止まず① 連合会長退任して14年―年寄りの冷水との批判も甘受

2009年秋、連合会長を退任して以来、14年余り、80歳を超えた。山岸、芦田、鷲尾、笹森の各氏を継いで第5代目の会長として4年間、連合の運動をリードし、最後の年の秋に民主党政権の誕生を見て退任。労働運動の一線から退いた。

以来14年余り、民主党政権は3年で崩壊。以降自公政権、とりわけ長期に及んだ安倍政権そして現在の岸田政権へと続いている。

この間、労働者の賃金は停滞を続け、今では欧米諸国は言うに及ばず隣国の韓国の後塵を拝する状況であり、今日に至っても実質賃金は低下を続けている。この賃金の状況に象徴されるように経済も全般的に相対的な国力を下げ、少子化と相俟って各種経済・社会指標も国際的なポジションを下げている。

労働運動の力量低下


このような状況を招きつつある日本で労働運動、そして労使は何をしてきたのか。特に労働運動は活力の低下が指摘され、その存在意義を問う声も多い。

日本の労働運動の存在感の低下の要因は多岐にわたるが、その原因については次号以降、順次私見を述べていきたい。14年前、労働運動の一線から退き、一歩下がって遠目で日本の労働運動、政治、経済、社会の姿を眺めてきたが、総じて苛々することが多かったような気がする。高度成長期の労働運動のセンチメンタル・ジャーニー的な色眼鏡を掛けて見るから、時代の変化に鈍感なのではないかという声も聞こえてきそうだが、そうは言っても、と反論したくなる事象が多い。糖尿病や腎臓を病み、両足不全で歩行も困難、医者の世話になり、家族や友人に迷惑をかけることの多い毎日を過ごしているが、少々のボケにとどまり、口だけは達者である。

止まない「薑桂之性」の発揮を意識して


先般、日本生産性本部の前田和敬理事長と久し振りに放談の場を持ち、いろいろ勝手気ままな話を言上申し上げたところ、理事長から放談し合った内容を「生産性新聞」にコラムの形で書いてみないかとお勧めいただいた。

はて、どうしたものか、瞬時考えたが、判りましたと返事してしまった。

さて、何をどんな調子で書いたら良いのか、と考えあぐねたが、80年生きてきた地金は簡単には変えられない。暇は沢山ある。そこで思い出したのが、「薑桂之性(きょうけいのせい)」という「宋史」由来の四字熟語である。その意味は「年老いて気性がますます強直であること、持って生まれた性質はなかなか変わらないということ」である。現役時代から思いついたことを吟味することなく発言してお叱りを受けたことも多いが、年寄りの冷水とのご批判は覚悟の上、と観念して書き始めてみることとした。

(2024年4月25日号掲載、全30回連載予定)

執筆:髙木剛氏(連合顧問) 髙木氏のプロフィールとその他のコラムの内容はこちらをご覧ください。

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