調査・研究その他の調査研究・提言

第7回 働く人の意識調査

テレワーク実施率、宣言・措置解除後も約2割で推移

2021年10月21日
公益財団法人 日本生産性本部


調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人 日本生産性本部(東京都千代田区、会長:茂木友三郎)は10月21日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第7回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。 コロナ禍の長期化に伴い、日々の暮らしや働き方、組織の業務内容や運営形態などが見直され、その影響は社会・経済の仕組みや人々の意識・価値観の変遷にまで及んでいます。経営者・労働者・学識者の三者構成による日本生産性本部は、組織で働く雇用者を対象に、勤め先への信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、四半期毎にアンケートによる意識調査を実施しています。 7回目となる今回の調査は、国による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除後、約10日が経った10月11日(月)~12日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行いました。


【第7回「働く人の意識調査」概要】

調査結果から、今後の景気見通しについて楽観的な見方がコロナ禍以降最多、悲観的な見方が最少となり、雇用者は7月調査に引き続き明るい兆しを感じていることが確認されました。テレワーク実施率は変わらず2割前後で推移しており、一定程度の定着が見られるとともに、国の宣言・措置の全面解除後も「リバウンド防止措置」など事業者向けの制限継続要請や中堅・大企業の慎重姿勢が寄与しているものとみられます。また、今回の調査では、ワクチン接種状況や感染不安・外出自粛への影響のほか、キャリアプランや仕事能力向上に責任を持つ主体についての設問を新たに追加しました。ワクチン接種状況や接種への意識について年代による差が明らかになり、併せて感染不安や外出自粛の減少は、必ずしもワクチン接種によるものとは言い切れないことが分かりました。 主な特徴は以下の通りです。


【第7回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は「資料1:調査結果レポート」参照)

1. わが国の景況感:引き続き景況感に明るい兆し、楽観的な見通しは過去最多(図2,3)

  • ・現在の景気について、依然良好とはいえないものの、前回の7月調査で「やや悪い」「悪い」の合計が初めて70%を下回り、今回の調査で68.6%とさらに微減(図2)。
  • ・今後の見通しについて、楽観的な見通し(「良くなる」「やや良くなる」の合計)は21.8%とコロナ禍以降最多、悲観的な見通し(「やや悪くなる」「悪くなる」の合計)は37.0%と最少(図3)。

2. ワクチン接種状況と感染不安:ワクチン接種も感染不安・外出自粛は一定程度継続(図5~10)

  • ・ワクチン接種状況は、「1回目接種済み」9.5%、「2回目接種済み」72.4%、「まだ1回目の接種を受けていない」5.8%。また「接種を受ける気はない」7.6%、「検討中」4.7%(図5)。
  • ・年代別の接種状況は、年代が高まるほど「2回目接種済み」の割合が多い。また、「受ける気はない」「検討中」の割合は概ね若い年代ほど多く、20代の「受ける気はない」は18.1%(図6)。
  • ・自分自身の感染不安について、不安を感じている割合(「かなり不安」「やや不安」の合計)は67.4%と、前回の7月調査の73.8%より減少(図7)。
  • ・ワクチン接種状況別に見ると、不安を感じている割合(「かなり不安」「やや不安」の合計)は、「1回目接種済み」「2回目接種済み」「まだ1回目を受けていない」いずれも7割を超え、2回目を接種済みでも感染不安は軽減されておらず、感染不安の減少は必ずしもワクチン接種によるものとは言い切れない。一方、「受ける気はない」「検討中」の者は、「不安は感じていない」(「あまり感じていない」「まったく感じていない」の合計)が5割を超えている(図8)。
  • ・不要・不急の外出を「できるだけ避けるようにしている」は38.3%と、7月調査より減少。ワクチン接種と外出自粛の関係を見ると、2回目の接種を受けても、一定程度の外出自粛は継続されている(図10)。

3. 希望する働き方とキャリアプラン:キャリアプラン、7割弱が「特に考えていない」(図22~29)

    • ・メンバーシップ型雇用を「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」、ジョブ型雇用を「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」として、希望する働き方を聞いたところ、ジョブ型が64.9%、メンバーシップ型が35.1%(図22)。
    • ・従業員規模別では、1,001名以上ではメンバーシップ型を希望する者が52.7%と多数(図23)。
    • ・自分自身のキャリアプランを持っているかを聞いたところ、「特に考えていない」が68.2%と最多。次いで「大まかなキャリアプランを思い描いている」が26.4%となり、「明確なキャリプランを思い描いている」は5.5%にとどまった(図25)。
    • ・キャリアプランの有無別に希望する働き方を見ると、「明確なキャリアプランを思い描いている」者の53.3%がメンバーシップ型を希望する一方、「大まかに思い描いている」者の61.4%、「特に考えていない」者の67.7%がジョブ型を希望(図29)。

4. 仕事能力の向上に責任を持つ主体:「働く人自身」が最多だが、割合は年代別で差(図42~44)

          • ・仕事能力の向上に誰が最も責任を持つべきかについて、「働く人自身」が48.1%と最も多く、次いで「勤め先」22.3%、「政府(国)」4.4%、「学校・大学等の教育機関」2.4%となった。ただし、「特に仕事能力を高める必要があるとは思わない」が22.7%を占めている(図42)。
          • ・年代別では、いずれの年代も「働く人自身」が最も多いが、その割合は、年代によって大きく異なる。20代では35.2%に対し、30代42.8%、40代52.0%、50代48.7%、60代55.9%、70代以上67.9%と、高い年代で自己責任と考える割合が多くなる。「特に仕事能力を高める必要があるとは思わない」は20代が最多で31.9%を占めている(図43)。
          • ・能力向上に責任を持つべき主体については、具体的な仕事能力別に異なる。「働く人自身」が最も多いのは、「コミュニケーション能力・説得力」57.3%で、「読み書き・計算等の基礎的素養」「課題解決スキル(分析・思考・創造力等)」「語学(外国語)力」「チームワーク、協調性・周囲との協働力」「営業力・接客スキル」「ITを使いこなす一般的な知識・能力」と続いた。一方、「勤め先」が最も多いのは、「マネジメント能力・リーダーシップ」45.2%、次いで「職種に特有の実践的スキル」「高度な専門的知識・スキル」「専門的なITの知識・能力」。「政府(国)」「学校・大学等の教育機関」が最も多くを占めた能力・スキルは無かった(図44)。

5. 働き方の変化:宣言・措置の全面解除後もテレワーク実施率は約2割で定着(図47~49)

        • ・テレワークの実施率は22.7%で、2020年7月調査以降、2割前後で定着(図47)。
        • ・従業員規模別のテレワーク実施率は、前回の7月調査と比較して101~1,000名および1,001名以上の勤め先で、実施率は高まっている(図48)。今回の調査は、国の緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が全て解除された9月30日から約10日経っているが、全体のテレワーク実施率が低下しなかった背景には、一定程度の定着が見られるとともに、「リバウンド防止措置」等の事業者向け制限継続や中堅・大企業の慎重姿勢が寄与しているものと思われる。
        • ・テレワーカーの直近1週間における出勤日数が週当たり3日以上のテレワーカーは、7月調査の57.6%を僅かに上回り、58.8%となった(図49)。

【「働く人の意識調査」概要】
公表日 調査期間 タイトル 調査期間の特徴
第1回
2020年5月22日
2020年
5月11日~13日
労使の堅固な信頼関係の再構築と「新しい生活様式」に向けた意識改革を 初の緊急事態宣言発出(4月7日)から1か月半
第2回
2020年7月21日
2020年
7月6日~7日
組織の生産性向上につながる労使の信頼関係の再構築を 緊急事態解除(5月25日)から1か月半
第3回
2020年10月16日
2020年
10月5日~7日
人的資本への積極投資を。テレワークは一定程度定着の兆し 「GoToトラベル」等積極的経済活動再開から3か月
第4回
2021年1月22日
2021年
1月12日~13日
組織の健康配慮が行動変容を後押し、社会経済システムや組織への信頼強化を 二度目の緊急事態宣言発出(1月7日)直後
第5回
2021年4月22日
2021年
4月12日~13日
行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を 一部地域に「まん延防止等重点措置」適用(4月5日)直後
第6回
2021年7月16日
2021年
7月5~6日
ポストコロナの社会・経済変化に懐疑的、コロナ以前に回帰か。「テレワーク疲れ」に注視を 東京オリンピック・パラリンピック開催まで約3週間
第7回
2021年10月21日
2021年
10月11日~12日
テレワーク実施率、宣言・措置解除後も約2割で推移 国による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除後、約10日が経過
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公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター(担当:柿岡)

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