分科会C「企業価値を高めるデジタル革新」要旨

軽井沢トップ・マネジメント・セミナー 分科会C 要旨

逆算思考とやってみなはれ精神で

登壇者

友岡賢二 フジテック 専務執行役員 デジタルイノベーション本部長

磯村康典 トリドールホールディングス 執行役員 兼CIO兼CTO 最高情報責任者兼最高技術責任者

<モデレーター>入山章栄 早稲田大学大学院経営管理研究科 早稲田大学ビジネススクール 教授

分科会Cは、「企業価値を高めるデジタル革新」をテーマに行われた。ゲストスピーカーとしてフジテック専務執行役員の友岡賢二氏とトリドールホールディングス執行役員兼CIO兼CTOの磯村康典氏が登壇し、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏がモデレーターを務めた。

待つことと耐えることも重要

入山氏はスマイルカーブの図を示して、「価値ある仕事は経営層である上流と、現場層である下流に集中し、中流の仕事はAIが代替する。大変革の時代に向けて中流の人財を上流と下流にどうシフトさせるかが問われている」と問題提起した。

友岡氏は、シンガポールの遠隔監視のメンテナンス規格認証を日系企業で初取得したケースを紹介。昇降機の通信機器(SORACOM) からAWSにデータを蓄積しリアルタイムで遠隔から監視する仕組みだ。友岡氏は「低コストを実現するSORACOMの登場で、日本からフルリモートで構築・運営が可能になった」と振り返る。
接続の実証実験はわずか2週間で終了、検証にかけたIT費用も数千円で済んだという。スケーリングは大変で、海外現場に人を派遣して、スタッフと連携して作業を担った。

スマートグラスを活用した保守・教育の事例も紹介した。現場作業者はハンズフリーで中継することで熟練技術者は移動負担なく遠隔から現場指導が可能になる。熟練作業者が着用してコツを伝えるなど、技術伝承に活用できるのが特徴だ。
友岡氏は「二つのケースで共通して言えることは、PoC(概念実証)はコンセプトの有用性を確認することで成功だということ。スケーリングのタイミングに向けて、待つことや耐え忍ぶことも重要だ」と話した。

経営理念・戦略に沿ったDX

磯村氏は「感動体験を支えるトリドールのDX」について語った。「食の感動で、この星を満たせ」を経営理念に掲げるトリドールグループのDXは、対象範囲を決めている。
お客様への感動体験の創出は安易にデジタル化しない。キャッシュレス決済やスマホアプリ、店舗マネジメント業務、本社業務などはDXによる合理化・省力化を進める。
DXビジョン2022では、業務システムのモダナイズ、ノンコア業務、IT基盤のオフバランス化を推進。DXビジョン2028では、従業員のハピネス、顧客の感動体験を支えるビジネス基盤とデジタル活用基盤の深化とグローバル展開を進める。

磯村氏は「6年間で1年間あたり13、14個のSaaSやBPOを導入・稼働させている。対応するにはエンジニアリング技術というよりも、コミュニケーション能力が必要になる。それぞれのツールにコミュニティがあり、外部のプロに任せている」と話した。
友岡氏も磯村氏も、社外から来た人財だ。DXを進めるには、2人とも社内の抵抗などの苦労があったという。磯村氏はCIOに必要なことは「逆算思考と覚悟」と述べた。また友岡氏は「戦後の復興を支えた〝やってみなはれ精神〟でDXにも取り組んでもらいたい」と話した。

(生産性新聞2025年8月5日号掲載)


ご登壇者略歴

友岡賢二 フジテック 専務執行役員 デジタルイノベーション本部長

1989年早稲田大学商学部卒業、松下電器産業入社。ドイツ・イギリス・アメリカにおいて通算12年間にわたり海外駐在を経験。ファーストリテイリングにて業務情報システム部長を務めた後、2014年よりフジテックに入社。現在はCIOおよびCDOとして製造業DXを牽引中。一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会フェロー。

磯村康典 トリドールホールディングス 執行役員 兼CIO兼CTO 最高情報責任者兼最高技術責任者

富士通へ入社し、システムエンジニアとしてのキャリアを開始。2000年、ソフトバンクへ入社し、ネット通販事業のECシステム開発・運用責任者を務める。2008年にガルフネット執行役員へ就任、2012年にはOakキャピタル執行役員へ就任し、ハンズオンによる経営再建に従事。2019年にトリドールホールディングス執行役員CIOへ着任。シェアードサービス子会社社長を兼務し、現職に至る。

入山章栄 早稲田大学大学院経営管理研究科 早稲田大学ビジネススクール 教授

慶應義塾大学卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所でコンサルティング業務に従事後、2008年 米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.(博士号)取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年より早稲田大学大学院早稲田大学ビジネススクール准教授。2019年より教授。専門は経営学。国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。メディアでも活発な情報発信を行っている。

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