分科会A「次代を創る経営者の育成と人的資本投資」要旨

第69回軽井沢トップ・マネジメント・セミナー 分科会A 要旨

経営者、人を巻き込む力必要

登壇者

漆間 啓 三菱電機代表執行役 執行役社長CEO

諏訪 貴子 ダイヤ精機代表取締役社長

<モデレーター>佃 秀昭 ボードアドバイザーズ代表取締役社長

分科会Aは、「次代を創る経営者の育成と人的資本投資」をテーマに行われた。ゲストスピーカーとして三菱電機代表執行役 執行役社長CEOの漆間啓氏、ダイヤ精機代表取締役社長の諏訪貴子氏が登壇、ボードアドバイザーズ代表取締役社長の佃秀昭氏がモデレーターを務めた。

経営者の経験が競争力左右

モデレーターを務める佃氏

佃氏は冒頭、「AIが情報を分析し、経営の選択肢まで示す時代に、経営者には何が求められるのか」と問題提起。「次代リーダーをどう見出し、どんな経験を積ませるかが企業の競争力を左右する」と語った。

講演する漆間氏

漆間氏は2021年7月、鉄道車両向け機器などの品質不適切事案が明らかになる中で三菱電機の社長に就任した。「会社は創立以来、危急存亡のときにあると考えた。自分の使命は変革だと位置付けた」と振り返る。
失われた信頼を取り戻すため、品質風土、組織風土、ガバナンスの三つの改革に着手した。「社長が『変革する』と言うだけでは会社は変わらない。従業員一人ひとりの心に変革の意識が生まれる必要がある」。制度だけでなく組織の内側から変える重要性を強調した。
一方、諏訪氏は創業者だった父の急逝を受け、2004年に32歳で社長に就いた。当時は子育て中で、自らが会社を継ぐとは考えていなかった。「社員も会社がどうなるのか不安だったと思う。私自身も迷ったが、『まず3年』と覚悟を決めた」と語った。
改革はスピードを重視した。「やるなら短期間で変える。改革が間延びすると改善になってしまう」。トップが期限を定め、覚悟を示すことが組織を動かす出発点になるとの考えだ。

その人の強みを生かす

講演する諏訪氏

議論は社員をどう巻き込むかに移った。諏訪氏は「まず一人ひとりを知ることだ」と話す。1対1で対話すると、同じ言葉でも受け止め方は異なる。「その人が何を考え、何を大切にしているのかを理解した上で目標を決める」という。「人を変えようとしてはいけない。その人の強みをどう生かすかを考える」。社員を個人として見ることが、人を動かす第一歩になるとした。
漆間氏は「大企業でも本質は同じだ」と応じた。組織が大きくなると人材を「人数」で捉えがちだが、「重要なのは誰にどの経験をさせるかだ」と語る。人材の流動化にも踏み込んだ。22工場のうち7工場で工場長を交代した。「同じ場所に長くいると、その組織の常識が自分の常識になる」。人を動かすことが本人と組織の双方に刺激を与えると説明した。風土改革チームは、社内公募した。「会社を変えたいと思っている人の力を引き出すのが経営の仕事だ」。

また、諏訪氏は環境を変えた後の支援にも目を向ける。「改革中は現場に張り付いた。社員が困った時にトップが支えなければ、『また社長が何か始めた』で終わる」。任せることと放置することは違うと指摘した。
AI時代の経営者像について、漆間氏は「何を目的にするのか、なぜやるのかを決めるのが役割だ」と強調。構想に意味を与え、人を巻き込む力は「重要になる」とみる。諏訪氏も「AIを使う時代だからこそ、一人ひとりと向き合う姿勢が必要だ」と訴えた。

(生産性新聞2026年8月5日号掲載)


登壇者略歴

漆間 啓 三菱電機代表執行役 執行役社長CEO

1982年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、名古屋製作所に配属。2004年Mitsubishi Electric Europe B.V.取締役 ドイツ支店長 兼 FA PMD (プロダクトマーケティングダイレクター)、2012年Mitsubishi Electric EuropeB.V.取締役社長 兼 国際本部 欧州代表、2015年常務執行役FAシステム事業本部長、2018年社会システム事業本部長 兼 ITS推進本部長、2020年取締役 代表取締役 専務執行役 経営企画・関係会社担当(経営企画室長)などの要職を経て2021年に取締役 代表執行役 社長執行役員 CEOに就任。2025年電子情報技術産業協(JEITA)会長および日本電機工業会(JEMA)会長に就任し産業界の発展にも注力。

諏訪 貴子 ダイヤ精機代表取締役社長

成蹊大学工学部卒業後、ユニシアジェックス(現・Astemo)でエンジニアとして働く。32歳(2004年)で父の逝去に伴いダイヤ精機社長に就任。自社の40年分の経営データを読み解き、さまざまな改革を実施。バーコードを活用した生産管理システムを導入して取引先への対応力やコスト管理力を高めるほか、熟練技術の若手社員への継承などにも意欲的に取り組み、中小製造業が直面する課題を解決する。2021年に岸田内閣下で「新しい資本主義実現会議」有識者構成員に就任。2022年より日本郵政の社外取締役、2024年より日本テレビホールディングスの社外取締役。日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013」大賞受賞。著書に『町工場の娘』(日経BP社)等がある。

佃 秀昭 ボードアドバイザーズ代表取締役社長

1986年東京大学法学部卒業、MITスローン経営大学院修了。三和銀行、マクラガン·パートナーズを経て、2000年スイス本社のエゴンゼンダーに入社。日本法人社長、スイス本社経営会議メンバーを歴任。2019年3月現株式会社ボードアドバイザーズの事業開始。取締役会実効性評価、社長後継者計画、経営幹部コーチング等に従事。金融庁、経済産業省の有識者会議メンバーを歴任。

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