パネルセッション「次代を担う経営者の挑戦」要旨

第69回軽井沢トップ・マネジメント・セミナー パネルセッション 要旨

社会課題を成長の力に

登壇者

赤木 円香 Age-WellJapan代表取締役

栗岡 大介 fermata(フェルマータ)取締役COO

<モデレーター>冨山 和彦 日本共創プラットフォーム代表取締役会長(総合コーディネーター)

社会課題を事業機会に変える取り組みについて議論する(左から)fermataの栗岡大介COO、Age-WellJapanの赤木円香代表取締役、日本共創プラットフォームの冨山和彦会長

超高齢化や女性の健康課題を、社会の負担ではなく新たな事業機会として捉える――。

Age-WellJapan代表取締役赤木円香氏と、fermata(フェルマータ)取締役COO栗岡大介氏が、それぞれの事業と社会変革への挑戦を紹介した。

後半は日本共創プラットフォーム代表取締役会長冨山和彦氏を交え、人口減少が進む日本で企業が果たす役割を議論した。

高齢者の挑戦を後押しする

Age-WellJapanは「超高齢社会の課題を可能性に変える」を掲げるインパクトスタートアップだ。年齢を重ねるほど人生が豊かになる「Age Well」の実現を目指す。創業のきっかけは、赤木氏の祖母が口にした「長く生きすぎちゃったかしら」という言葉だった。高齢者が家族や社会に遠慮しながら暮らす現状に疑問を抱き、事業を立ち上げた。
自宅訪問型サービス「もっとメイト」や交流拠点「もっと場」を運営し、高齢者の挑戦を後押しする「エイジウェルデザイナー」を育成している。活動する人材は北海道から愛媛まで累計約300人に広がった。利用者の94.6%が「100歳まで生きたい」と回答するなど、意識の変化も生まれている。会話を録音、解析し、個人に合った前向きな働き掛けを探る研究開発にも取り組む。
企業向け事業は売上高の約9割を占め、シニア向けの商品開発やマーケティング、人材研修などを支援する。JRとの旅行企画や、ソフトバンクのスマートフォン販売支援など、異業種との連携も進めている。

フェムテックを経営課題と結び付ける

一方、fermataは「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンに掲げ、国内外のフェムテックを中心とするヘルスケア製品やサービスの導入、社会実装に取り組んでいる。栗岡氏は、女性特有の健康課題による経済損失が国内で年間約3.4兆円に上る一方、法規制や文化、地域による価値観の違いが普及の壁になっていると説明した。
同社は、ウチヤマホールディングス傘下で介護施設を運営するさわやか倶楽部と、健康支援・ウェルビーイング分野で基本合意書を締結した。入居者の健康支援や介護予防、職員の健康と働きやすさの向上につながる新たなヘルスケアモデルの構築に向け、協業の可能性を検討している。
栗岡氏は、フェムテックという言葉だけを前面に出すのではなく、企業の経営課題や収益性の改善に結び付けて提案することが重要だと強調した。地方では価値観や職場環境に根強い課題が残る一方、社会課題が深刻だからこそ、新たな事業を生み出す余地も大きいとした。

価値観の違いをつなぐ人材と企業の役割

3氏は、人口減少や高齢化が避けられない中、女性の活躍や健康な高齢者の社会参加は選択肢ではなく必須だとの認識で一致した。冨山氏は、社会課題を成長の原動力に変えるには、テクノロジーだけでなく、世代や地域による価値観の違いをつなぐ人材と企業の役割が重要になると指摘した。

(生産性新聞2026年8月5日号掲載)


登壇者略歴

赤木 円香 AgeWellJapan 代表取締役CEO

中学時代に祖母がうつ病と診断され、介護家族となった経験を元に、介護者を支えるロボット開発の道に進む。2011年千葉工業大学在学中に株式会社abaを設立。学生時代、実習先の特別養護老人ホームにて「おむつを開けずに中が見たい」という介護現場の願いを聞き、においで検知する排泄センサー「Helppad (ヘルプパッド)」を開発・製品化。おむつ交換タイミングの最適化や排泄情報の活用により介護する人・される人双方の負担軽減を目指す。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2024」(日経BP主催、内閣府後援)に選出。


栗岡 大介 fermata(フェルマータ)取締役COO

証券・運用会社を経て、スタートアップ企業支援で培った経営戦略と事業開発の経験を生かし、フェムテックを起点とした企業・自治体との共創を推進。プロダクトや知見を、女性の健康支援、地域課題の解決、新規事業へと繋ぐことで、社会課題の解決と企業成長を両立させる仕組みづくりを重視する。事業構想策定からパートナー開拓、事業化、実装までを一貫して担う。


冨山 和彦 日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役会長

ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。解散後、2007年経営共創基盤(IGPI)を設立し代表取締役CEO就任。2020年日本共創プラットフォーム(JPiX)を設立。メルカリ社外取締役、日本取締役協会会長。内閣府規制改革推進会議議長代理、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、他政府関連委員多数。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。

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