「スピードと共創で日本の半導体再興へ」
小池淳義 Rapidus(ラピダス)代表取締役社長兼CEO 基調講演要旨
スピードと共創で日本の半導体再興へ
小池淳義 Rapidus(ラピダス)代表取締役社長兼CEO
二輪ロードレースに重なる日本産業の危機
講演の冒頭で小池氏は、世界最高峰の二輪ロードレース「MotoGP」を引き合いに出した。かつて日本メーカーが上位を占めたものの、近年は欧州勢が存在感を高めているとし、「半導体産業にも重なる」と指摘した。
1990年には日本企業が世界の半導体メーカー上位を占めた。しかし現在はトップ10から姿を消している。日本の先端半導体技術は世界から大きく後れているとの危機感から、「研究開発と製造拠点を日本に築くしかない」と考えたことがラピダス設立の原点だったという。
特に懸念を示したのがAIの普及に伴う電力消費の増大だ。解決策として、回路の微細化、用途ごとに最適化した専用半導体、複数の半導体を立体的に組み合わせる3次元実装の三つを挙げた。回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)世代では消費電力を抑えられるほか、専用設計によって不要な演算を減らし、演算装置と記憶装置の距離を縮めることでデータ転送に伴う電力も削減できるという。
日立時代の研究生かす
小池氏は日立製作所時代、半導体の材料となるウエハーを1枚ずつ処理する加工技術の研究に携わった。ウエハー1枚ごとに条件を変えながら試せるため、短時間で多くの実験が可能となる。この技術を活用し、「データ量が100倍、200倍になればイノベーションのスピードも速くなる」と語った。
小池氏は、若手研究者らと日本の半導体復活策を議論する「マウントフジ」プロジェクトを立ち上げた。夜間に議論を重ね、研究会は138回に及んだ。「これをやらなければ日本はだめになるという情熱があった。結論はラピダスをつくろうということだった」と振り返った。
2ナノ半導体量産化へ
2022年8月にラピダスを設立し、米IBMと提携。2ナノ世代の超微細なロジック半導体の技術開発を進めている。北海道千歳市の工場では、建設開始から1年10カ月で2ナノ世代半導体の中核部品「トランジスタ」の動作確認に成功。「世界では最低でも4年かかる。それを1年10カ月で実現した」と語り、2027年の量産開始に自信を示した。
試作では、シリコンウエハー投入から工程完了まで12日18時間44分余りで製造を終えた。「全員が力を合わせれば、こんな記録も達成できる」と話した。同社はシリコンウエハーの回路形成から小型チップの実装、設計支援までを一体で手掛ける製造サービスの構築を進めている。
自前主義から脱却
日本産業が競争力を失った背景について、小池氏は「自分たちは何でもできる、世界一だと思ったことが決定的だった」と分析した。「得意分野は自分たちで担う。それ以外は世界中の一流パートナーと組まなければ、新しい付加価値は生まれない」と述べ、自前主義から脱却した「共創」の重要性を訴えた。
顧客についても「神様ではなく、共に作る仲間」と位置付ける。顧客のアイデアと製造側の技術や経験を持ち寄り、開発スピードを3~4倍に高めることで、新たな半導体を生み出したい考えを示した。
講演終盤には、AIが人間の知能を超えるとされる「シンギュラリティ(技術的特異点)」にも言及。二輪8時間耐久レースのピット作業を例に挙げ、「人間の英知を合わせ、熟練とチームワークで成し遂げる。これはロボットには簡単にできない」と強調。人間が経験や知恵を持ち寄り、共通の目的に向かって協働する力が価値になると語った。
(生産性新聞2026年8月5日号掲載)
登壇者略歴
小池淳義 Rapidus(ラピダス)代表取締役社長兼CEO
1978年、株式会社日立製作所に入社し、半導体事業部に配属される。生産技術センター第一生産技術部長、半導体グループ生産統括本部生産技術本部本部長を経て、2000年に日立―UMCの合弁会社トレセンティテクノロジーズ株式会社を設立し、2002年3月に同社の取締役社長に就任する。2006年8月、サンディスク株式会社代表取締役社長に就任。2018年4月より、株式会社HGSTジャパン代表取締役並びにウエスタンデジタルジャパン株式会社代表取締役を兼任し、日本のウエスタンデジタルを代表するウエスタンデジタルジャパンプレジデントに就任する。 2022年8月、Rapidus株式会社を設立し、代表取締役社長兼CEOとして現在に至る。
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