第15回 渋谷再開発、新たな人の交流と文化を呼び込む 東急グループ
連載「ミライを変える革新力」⑮ 渋谷再開発、新たな人の交流と文化を呼び込む 東急グループ
渋谷起点に東急線沿線で事業開発出
東京・渋谷駅前。空に向かって、ガラス張りの高層ビルがそびえる。地上47階建ての複合施設「渋谷スクランブルスクエア」。展望施設「SHIBUYA SKY」は、多くの人が訪れる新名所だ。この夏、ビルの屋上では、「天空の盆踊り」が開催された。音楽、カルチャーと伝統的な盆踊りを融合した新感覚の夏祭りが夜空を彩った。
かつて「谷底」の町といわれた渋谷。1885年(明治18年)、日本鉄道品川線(現山手線)の開通に伴い渋谷駅が誕生、当時は、のどかな風景が広がっていた。大きな転機となったのは、渋沢栄一氏を発起人として誕生した「田園都市株式会社」を源流に持つ、五島慶太氏率いる「目黒蒲田電鉄株式会社(のちの東急)」の沿線開発だった。
五島氏は、長野県青木村に生まれ、学費を稼ぎながら苦学。29歳で東京帝国大学を卒業後、官僚に。その後、実業界に転身。鉄道事業に乗り出す。大正末期から、渋谷を起点に都心と郊外住宅を結ぶ路線網を整備。1934年には駅直結の東横百貨店が開業し、渋谷はターミナル駅に発展した。戦後は、ファッション、音楽、文化の発信地になった。
2010年代から始まった再開発。その象徴が2012年に誕生した高層複合施設「渋谷ヒカリエ」だった。旧東横線渋谷駅のホーム、線路跡に生まれた「渋谷ストリーム」には、Google Japanの本社機能が移転。ITの拠点としての渋谷を印象付けた。西口の旧東急プラザ渋谷跡地の商業施設「渋谷フクラス」と新たなランドマークが次々と誕生した。
街と駅の一体化
東急は今年6月3日、「渋谷まちづくり最新情報発表会」を開催。東急執行役員都市開発本部渋谷開発事業部長の坂井洋一郎氏らが、最終段階に入った開発プロジェクトの概要について説明した。「渋谷駅街区計画」、「東急百貨店本店の跡地開発事業」、「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」の3つの計画に取り組む。2031年度までに3つのプロジェクトが順次竣工・開業を迎える予定だ。
渋谷駅は、鉄道が複雑に交錯する。2030年度には、駅ならびに東西南北を地上およびデッキ階で結ぶ多層な歩行者ネットワークが誕生。利便性や回遊性は飛躍的に向上する。31年度には、渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期d(中央棟・西棟)が完成。商業フロアは、完成済みの第Ⅰ期(東棟)と併せて1フロアあたりの売場面積が首都圏最大級の商業施設となる。
美術館など文化の集積地である東急百貨店跡地周辺には、「Tokyo‘s Urban Retreat」をテーマに、文化施設と融合した複合拠点が誕生する。宮益坂と明治通りに面する渋谷駅東口では、高層ビル計画が進む。
再開発後のイメージ。左はスクランブル交差点から、右は宮益坂方面から。画像は東急グループ提供
渋谷型都市ライフの実現
再開発には2つの大きなビジョンがある。日々新たなビジネスが生まれ、誰もが楽しむことができる「エンタテイメントシティSHIBUYA」の進化。もう1つが、渋谷駅ら半径2.5キロ圏内を「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」と定義し、「面」としてのまちづくりの推進だ。原宿、表参道、恵比寿、代官山など魅力ある周辺エリアが存在することも渋谷の強みの一つ。人や文化がスムーズに流動するエリアを目指す。
東急は次のように説明する。「2つのビジョンを継続しつつ、さらに進化・深化させていくことで、『渋谷型都市ライフ』を提案すべく、『働く』『遊ぶ』『暮らす』の3要素の融合と、その基盤となるデジタル、サステナブル(持続可能性)に取り組んでいく」。
渋谷は人と文化が混ざる街。「日本の今」がここにある。その中で働くことができる。どんなスタイルでいても街になじむ。「企業・プレーヤーの方々が、活躍できるフィールドを我々が創ることによって、更なる文化・産業の発展を後押しし、ビジネス拠点としての強化につなげていきたい」(東急)。
「100年に一度の再開発」。それぞれのプロジェクトが新たな人の交流と文化を育んでいく。
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